AI君にメディアの役割は何か、と聞くと「情報伝達(ニュース、知識、娯楽の提供)、世論形成(討論を通じて社会の意見をまとめる)、そして監視・教育(権力のチェック、文化的価値観の継承)の3つが基本」と出てきました。最近ではオールドメディアに対してニューメディアという括りでSNSなどより広範な人々がフィルターのかかりにくい情報発信をすることで一部では大きな影響力を持つまでに育っています。
情報のフィルターを完全除去するのは難しいと思います。単なる保守、革新という発信者の思想や主義主張のみならず、広告主、発信者の知人、関係者への配慮もあるでしょう。またある事象について語る場合にそれが全体に対してどれぐらい影響ある事柄なのかバランス感覚を無視した情報もあります。ほとんど無意味に近い小さいネタをいかにも最も重大な事象だと称して報じてしまえば誇大報道となり誤った情報誘導となるでしょう。
ではそれを全部取り除いた純粋で無思想なメディアは存在しうるでしょうか?私はあり得ないと思っています。わかりやすい例えで言うと味のない料理を作るようなものだから、と申し上げます。メディアの受け手、つまり視聴者なり購読者は自分の期待する味(報道トーン)が常にあるのです。一般社会ではそれを右とか左と言った表現をしがちですが、そんな簡単な仕分けだけではなく、質感や重要性、視聴率狙いなのか、内容の濃さ、好みなど切り口はいくらでもあるでしょう。
かつては情報ソースはかなり限定されていました。テレビ放送局と新聞雑誌、ラジオなどが主体でしたが、インターネット時代と共にニューメディアは新たな切り口を提供したと言ってよいでしょう。私は運動をしながらポッドキャストを聞いており、ある特定の番組を放送開始時点に遡り少しずつ聞き進めています。ハマってしまったというのが正解であります。
このようにメディアにバラエティ感が生まれた中でNHKという存在をどうしていきたいのか、私にはよくわからないのであります。NHKの会長が1月から井上樹彦氏に代わります。18年ぶりの生え抜きと話題になっています。その井上氏がインタビューで大ヒット映画「国宝」を見て感動したとし、「NHKも上質なドラマを制作している。力のあるコンテンツは国際的にも評価される」と強調、「どうすれば見てもらえるかを考えなければならない」としてコンテンツのネット連動や新規の知的財産(IP)開発に注力すると述べています。(日経)
NHKが「国宝」と競り合うような映画を作ることがNHKの存在価値なのかな、と私は思うのです。東宝とNHKが同列なのだろうかと。私はNHKの存在が時としてありがたい時はあります。それはブログを書く時、あるいは一定の情報を収集する際にNHKニュースサイトが良くまとまっていることが往々にしてあるからです。信用度があるか、いえば様々な意見はあろうかと思いますが、ニュース分野によっては私は信用できると思います。特に海外ニュースは安定していると思います。なぜ頼るのか、といえば私自身に取材能力がない中で公平な目線から報じようとする努力は見えるからです。そしてニュースの文字サイトですから無料でアクセスできます。

NHK放送センター Wikipediaより
同様にNHKが発する外国向けの放送もユニークです。日本人の方にはあまりご縁はないと思いますが、アジアのホテルに宿泊すると時折、NHK英語放送が部屋のテレビで見られたりします。視聴者数がどれぐらいかは知りませんが、英語放送は一種のプロパガンダであり、日本を世界に伝えるという意味で極めて重要な役割を果たしています。
私はNHKは営利を目的とするのではなく、その独特の立ち位置を維持し、広く国の内外に特徴あるスタンスを維持しながら発信力を維持すべきなのだろうと思います。そのNHKは赤字続きですが、2027年には黒字化達成を掲げています。放送料収入が減り続ける中で様々な組織改革を通じて黒字を達成するというのは美談であるよう聞こえますが、黒字にすることがNHKの本来の目的なのか、と思うのです。
私は以前からNHKとは日本を世界に発信できる極めて優良な媒体の1つだと考えています。だいぶ前ですが、「おしん」は世界68カ国で放送されたおばけドラマですが、その中でイランに於いては視聴率90%越えで、放送している時には街から人がいなくなると言われるほどの影響力があったとされます。この意味は日本人の生きざまや価値観がイランで共有され、イラン人が持つ日本へのイメージが作り出されたと言ってよいでしょう。このメリットは誰にあったかと言えば日本国家そのものなのです。
あるいは紅白歌合戦がブラジルやハワイで生放送されることで日系人と称される人が自分のブラッド(血統)を思い起こし、自分が日系人であることに再認識するのです。これは世界に散らばる日系人の共通の興味や文化、伝統とも言えるのです。ではこのメリットは何か、といえばジャパンブラッドを一つにするという国家戦略の一翼だとも言えるのです。
日本人にとって大河ドラマは一つの歴史なのでしょう。私はほとんど見ることはなかったのですが、多くの方が昔見たあのドラマ、このドラマで日本に対する理解度を深め、時として何年もたってから「あのときのあのシーン」が共通話題になったりします。それは日本人同士が共通認識を持つ結びつきが強い国家として育ってきた歴史とも言えるでしょう。
お前ならNHKの在り方をどうしたいのか、と言われればズバリ以下の案を提示します。
- NHK教育チャンネルは止める
- ネットを通じた英語放送や情報を強化し、海外に日本の情報を広く正しく伝える
- 放送時間のうちコアタイムに経営資源を集中し、ノンコアタイムはそれこそニュースのリピートなどにとどめ、メリハリある放送内容にする
- 運営費の50%を国税で賄う
- 基本的に公益社団法人に戻し、運営する。(もともとは社団法人だったが今は特殊法人になっている)
特に運営費の部分ですが、NHKは誰のため、という質問に対して有償の視聴者の為と捉えることでNHKのあり方を狭い枠組みに留めてしまっていると思います。NHKは有償の視聴者の為だけではなく、世界のあらゆる方面にその影響力を持っているのです。もしも完全に有償放送という位置づけにするならスクランブルをかけて払う人だけに見せればよいのですが、そんなことをする勇気がないのです。だから受信できる人は誰でも払えという奇妙なルールが設定されてしまうのでしょう。
私からみればどう考えても無理があり、長く継続できるポリシーではないと思います。これを変えるには10年の年月がかかると思いますが、政府レベルでスクラッチからもう一度見直しても良いのではないかと思います。NHKの会長は傀儡だと思いますが、ではNHKを牛耳るのは誰なのか、これがはっきりしないところがNHKの話題になると議論百出する理由であるとも言えないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月17日の記事より転載させていただきました。






