「お正月休み」は退職生活の予行演習

黒坂岳央です。

多くの人にとって待ちに待った年末年始の長期休暇がやってきた。

だが、この期間の過ごし方は、単なる日頃の休息以上の意味を持っている。この大型連休こそが「定年退職後やFIRE後の自分」を映し出す鏡なのである。

次々とやりたいことが湧いてきて楽しめている人、暇や余計な不安に押しつぶされそうになっている人、今の感覚を拡大した世界が退職後に待っている。

※こういう記事に「年末年始こそ一年で最も忙しい」と反発もあるだろう。主婦(主夫)やサービス業従事者などだ。本稿は「一人暮らしでお正月休みという大型連休」を迎える人を対象に書いている。

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お正月休みは退職後生活の「味見」

「いつかはFIREしたい」
「仕事から解放され、義務に追われずにのんびりしたい」

という人は多い。だが、それは経験したことがないからより輝いて見えるのであって、実体験すると「こんなはずではなかった」となる人もまた、多いのだ。

筆者自身、高卒後にニートになって1日中ゲーム生活という「退職後の味見」をしたことがあったが、耐えられずに働きに出た。また、脱サラして独立後に完全に仕事をやめてダラダラしてみたがやっぱり耐えられなかった。

人生の早い段階で「退職後の生活、自分に本当に合うか?」を確認しておくことは重要な意味を持つ。筆者は「何もしないより忙しく働いている方が楽しい」と分かったので、今はせっせと働いているし、一生忙しくなるように人生設計をしたいと思っている。

このお正月休みの大型連休は退職後の「味見」という感覚で過ごすのもいい。そして実際の退職はこれよりも遥かに過酷である。なぜなら帰省する親はすでに生きていなかったり、友達や同僚もいないからだ。

大型連休を楽しめる人、そうでない人

多くのビジネスパーソンにとって、会社という枠組みから外れる長期休暇は解放感に満ちたものである。しかし、数日経つと「やることがなくて持て余す」「結局、ベッドの上でスマホを見て一日が終わった」といった焦燥感に駆られる人も少なくない。

ここで、休暇の過ごし方を二つのタイプに分けてみる。

会社が決めたスケジュールや、世間の「正月はこう過ごすべき」という枠組みがないと、何をすればいいか分からなくなる「受動的に時間を消費」するタイプである。

もう1つは会社という枠が外れても、自分の興味関心の赴くままに、主体的に趣味、学習、創作で「主体的に時間を投資」できるタイプだ。

もし今、「暇すぎて将来不安、余計なことばかり考えてしまって狂いそう」と感じているなら、それは主体性が不足しているサインかもしれない。

自分の人生を生きているか?

お正月休みが退屈だからと、有り金を湯水のように使い込んで世界中を旅するとか、日替わりで色んな人に会いまくる、みたいな非日常で時間を埋め尽くすべきではない。それらは退職後の日常生活とはかけ離れており、予行演習にならないからだ。

そうではなく、地元の公園で運動をしたり、図書館で本を読んだり、家で食事を作ったりと一人でお金を使わず、お金をかけず、人に会わない地味な生活を送ってみることだ。

そうするとたちまち見えてくる。主体的に生きなければ、人生は早々に飽きることに。延々とショート動画をスワイプし続けたり、ソシャゲをしても必ず飽きる。大型連休には終わりがあるが、実際の退職後はそれが数十年続いていく。しかも老眼が進み、筋肉が衰えれば今のような受動的な暇つぶしすらできなくなる。

もしもこの味見に絶望したなら、生き方を見直すチャンスである。人生は主体的に自ら行動しなければ、何も始まらないし、受動的な娯楽だけで数十年楽しむことは非常に難しい。

その一方で、主体的に動けばお金を使わなくても人生は楽しい。筆者は記事や書籍を読み、仕事をする中での経験をこうして記事に書く生活を送っている。2026年で9年間になるが、全く飽きない。おそらく今後も書き続けるだろう。楽しい仕事を見つければ、人生は楽しくなる。

自らの意思と行動で自分の人生を生きているか?その答え合わせができ、生きがいを探すチャンスがこのお正月休みなのだ。

この連休で「将来、自分は危ないかも」と感じたなら、それは幸運だ。今のうちに会社の外に居場所を作り、消費ではない趣味を育て、自分自身を楽しませる運用を始めればいい。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。