
首相官邸HPより
高市首相が独断に近い形で決めた解散、総選挙は、立民・公明による新党「中道改革連合」結成を誘発しました。高い支持率に依拠した解散決断に有権者がどう反応するか、先行きを見通せないというしか他はありません。
新聞の社説は「国会の冒頭解散/国民生活より党利党略」(朝日)、「国民置き去りの党利党略」(毎日)と、解散の大義に欠けた党利党略だと批判しています。党利党略の本来の意味は「政党が勢力拡張、選挙に勝利という党の利益だけのための戦略」です。
どうも違うようです。高市氏を支えてきた麻生・自民党副総裁、鈴木党幹事長という党幹部にも知らせず、少数の側近が極秘に決めたと報道されており、「党利党略」にも及ばない解散です。「発足したばかりの高市政権が成果を出すまで待て」、「予算案の年度内成立まで待て」、「物価高の動向を見極めるまで待て」などが求められていたのです。
トランプ主義の日本上陸か
読売新聞にリークして、一挙に解散の流れを作ってしまい、もう後戻りできないようにするというシナリオだったのでしょう。強引な決定、合意形成をすっ飛ばす政治手法、リスクの過少評価、自己中心主義、強い自己認知欲、市場の反応の無視などはトランプ流です。安倍氏にならって高市氏はトランプ氏に過剰依存しているようです。つまりトランプ主義の日本上陸です。
これで3年連続の国政選挙です。24年10月の衆院選、25年7月の参院選、今回26年2月の衆院選で、24年10月から計算すると、わずか1年4か月の間に3回の国政選挙です。狂気の沙汰といってもいい。
そんな短期間に何度も国政選挙を繰り返している国は他にないでしょう。「7条解散」だそうです。その憲法には首相に解散権を認めるとは、明白には書いていません。新聞社説は「衆院解散は首相の専管事項とされる。歴代首相も時の政治情勢を踏まえて解散を判断してきた。解散は伝家の宝刀だ。政策を前に進めなければいけないと考えた時、国民に真を問うのは分かる」(読売)と、あっさりしています。
短期間に選挙を繰り返していると、目先の勝利を第一に考えるため、①中長期の課題が先送りされる②官僚たちは様子見を繰り返すため、真剣に政策立案に取り組まない③約600億円の国政選挙の直接的費用よりも、選挙に勝ちたいポピュリズムに走り、国家予算が膨張することの方が恐ろしいなどの問題が起きます。
新政権誕生後、2年間は解散禁止を
米国の国政選挙は2年間隔です。大統領選の2年後に中間選挙があり、下院全員と上院の3分の1が大統領選の時と中間選挙の時に選挙に臨みます。日本でも首相の解散権の制限を唱える主張があり、「新首相が選ばれてから2年間は解散できない」ようにする案もあります。自民党は拒否するでしょうから、野党政権が誕生したら、政治資金の浄化と一緒に改革するチャンスかもしれません。
どうかと思う新聞社説もあります。「昨年の臨時国会では、物価対策を含む18兆円の25年度補正予算が成立した。高市政権は物価高対策を軽視しているといった批判は当たらない」(読売)と言い切っています。ごく少数のリフレ派学者(アベノミクス支持派)を除けば、まともな学者、専門家は「物価上昇を逆に煽る高市財政が懸念される」と、批判しています。
高市政権は3、4%程度のインフレの継続を期待しているようです。物価が上がれば、消費税率をあげなくても、消費税の名目税収が増える。売上高が増えれば法人の企業収益が増え、法人所得税も増える。これをインフレ税と呼び、目に見えにくい実質的な増税で予算拡大を図る。
驚いたのは読売1面の連載「決断/26・衆院選」(中)で「首相は矢継ぎ早に政策を打ち出してきた。17分野の重点投資戦略、それを裏づける過去最大の26年度予算案、ガソリン税の暫定税率の廃止、物価高対策などだ」とし、「首相の経済政策は市場から熱烈な歓迎を受けている。株価は5万4000円を超え、電撃解散を決断した首相の自信の源泉である」と、断定しています。
問題は株価でなく債券市場の動向
株価は日経平均225の場合、大企業225銘柄の株価であり、国民生活を苦しめる円安、インフレが好都合な銘柄が多い。「マネー市場の動きから経済を判断する場合、株価でなく、債券市場を重視すべきだ」が定説です。債券価格の下落、国債の利払い費の増大こそが懸念材料なのです。
高市首相はアベノミクスの継承者を自認しています。アベノミクスの弊害、副作用で国民生活は苦しんでおり、経済専門家の多くは「アベノミクスからの撤退こそ必要だ。いつまでも積極財政の名のもとに、財源を確保せず、財政膨張を続けていたらその路線はどこかで破綻する」が定説です。
16日昼に「立国公が赤字国債5年延長法案に慎重」とのニュースが流れてきました。延長期間の短縮、発行上限額の制限などが考えられます。そうだとしたら、高市政権の積極財政主義は制約を受けることになります。解散、投票後の政局、財政運営の前途は茨の道のようです。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年1月16日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。






