佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う⑦:市民参加と合意形成は「手続き」で終わっている

(前回:佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う⑥:交通と安全が欠落した計画

観光事業は、都市の姿を変える公共政策である。

とりわけ20億円を超える規模の事業であれば、市民の理解と合意は不可欠な前提条件となる。

合意形成とは、単に意見を聞くことではない。

意思決定の過程に、市民の意思がどのように組み込まれたかが問われる。しかし、佐倉ふるさと広場拡張整備事業における市民参加の実態は、残念ながらこの基準を満たしていない。

市民意見は集められているが、反映の仕組みが不明確

令和7年9月4日、木崎俊行議員の質問に対し、市は次のように答弁した。

  • 令和4年度:基本計画を公表
  • 令和5年1月:市民アンケート実施
  • 令和5年3月:結果公表
  • 令和7年8月:イメージ図を公表
  • 今後:設計段階で意見収集、パブリックコメント予定

形式上は、市民参加の機会が一定程度用意されているように見える。

しかし、問題はそこではない。

集めた意見が、どの意思決定に、どのように反映されたのかが一切示されていないのである。

アンケートを取った、パブコメを実施した――それだけでは合意形成とは言えない。

市民の声が政策のどの部分を動かしたのか、その因果関係が示されなければ、市民参加は「手続き」で終わってしまう。

事業の核心部分は市民の手を離れている

拡張整備後の飲食施設などの中核施設は、Park-PFI事業者が担う。 選定委員会に市民委員2名が含まれるとはいえ、それで市民全体の意向が反映される制度設計とは言い難い。

さらに重要なのは、地域経済との接続ルールが制度化されていない点である。

  • 市内事業者の参画ルール
  • 地元農産物の優先利用
  • 雇用の地域還元

これらは、観光事業を地域経済と結びつけるための最低限の仕組みだが、現時点で制度として整備されていない。

つまり、事業の核心部分はすでに市民の手を離れており、意見を述べる機会があっても、意思決定に影響を与える構造が存在しない。

本来、どうあるべきだったか:観光開発における市民合意形成の標準プロセス

観光開発は、都市の将来像を左右する公共政策である。

したがって、市民参加は「形式」ではなく、設計プロセスそのものの一部でなければならない。

多くの自治体では、次のような段階的プロセスが取られている。

標準的な合意形成モデル(他市事例に共通する型)

 ① 基本構想策定前

(問題の共有フェーズ)

  • 課題整理の公開
  • 市民ワークショップ
  • テーマ別意見交換会
  • 議会への事前説明(課題・論点・方向性の共有)
② 基本構想策定後

(合意形成フェーズ)

  • 市内複数箇所での説明会開催
  • 意見募集(アンケート+パブコメ)
  • 意見への対応表の公表
  • 資料をもとにした議会説明会(計画案・市民意見の整理報告)
③ 設計段階

(具体化・調整フェーズ)

  • イメージ図・模型・CGの公開
  • 地域別意見交換会
  • 利害関係者(商工会・観光事業者・住民)協議会設置
  • 設計内容に関する議会説明(修正点・リスク・影響の報告) 
④ 実施段階

(検証・是正フェーズ)

  • 定期説明会
  • 評価指標の公開
  • 計画修正のルール明示
  • 進捗・評価に関する定期的な議会報告

佐倉ふるさと広場と「標準モデル」の決定的な違い

以下は、現状と標準モデルを比較したものである。

市民参加・合意形成プロセスの比較表(修正版)

項目 佐倉市の現状 標準モデル
市民説明会 未実施 市内数か所で継続開催
意見の反映過程 不明確 意見・実施対応表を公表
設計段階の参加 限定的 イメージ公開後に再協議
利害調整 制度なし 商工・住民協議会を設置
進捗説明 市民向け・議会向けとも体系的な実施なし(議案審査時の断片的説明のみ) 定期的な進捗レビューを市民・議会双方に公開
議会への説明 議案提出時中心・断片的 各段階で資料に基づく体系的説明と質疑の場を制度化

問題は、市民参加が「足りない」ことではない。 最初から、市民参加が設計されていないである。

これは予算の問題でも、時間の問題でもない。 行政の姿勢の問題である。