2026衆院選は、政党は結局「いくつ要るのか選ぼう解散」になる。

1/27に公示されて衆院選が正式に始まるが、ここまでめちゃくちゃな解散は史上初だ。長く指摘されてきたとおり、憲法7条 “のみ” で解散できるとするのは「解釈改憲」で、十分な根拠がない。

石破政権は「戦後改憲の総決算」になるのだろうか|與那覇潤の論説Bistro
「不器用だが筋を通す政治家」として支持されてきた石破茂氏の足元が、ついに総理の座を射止めるや揺らいでいる。むろん、総裁選中の発言とのブレを指摘されてのことである。 約束の手のひら返しは政治家の常ではあれど、今回は争点が憲法と絡むだけに深刻だ。そして歴史を振り返るとき、ブレているのは党内基盤の弱い目下の首相ひとりではな...

なので従来は、7条で解散する際、「もっともらしい理屈」をつけてきた。しかしいまの首相は、

高市早苗が、内閣総理大臣で良いのかどうか、今、主権者たる国民の皆様に決めていただく、……高市早苗に、国家経営を託していただけるのか。国民の皆様に直接、御判断を頂きたい。

高市早苗首相会見、2026.1.19
(強調は引用者)

しか、言わない。もはやコンサートで名前のコールを求めるアイドルと同じだけど、にしては、

自民党と日本維新の会で過半数の議席を賜(たまわ)れましたら、高市総理。そうでなければ、野田総理か、斉藤総理か、別の方か。

って、負けを意識してるジャン!? まったくイミフな上に、記者との質疑の末尾になって、

その後政府が提出しようとしている法律案、これもかなり賛否の分かれる大きなものでございます。だからこそ、国会が始まる前に国民の皆様の信を問いたい。……信任を頂けたら、これは力強く進めてまいります。信任を頂けなかったら、私は責任を取ります。

と言い出し、もはや比喩でなくガチの「推し選挙」である。中身は言わないけど、SANAEがみんなの “推し” だって証明されたら、こっからヤバイことやっちゃっていいよね! なノリだ。

令和8年1月19日 高市内閣総理大臣記者会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ
総理の演説や記者会見などを、ノーカットの動画やテキストでご覧になれます。

ちぐはぐな首相会見の理由はもちろん、高い支持率での圧勝を見込んで解散を決めたら、藪蛇でまさかの「中道改革連合」が結成され、強力な野党第一党ができてしまったからだ。

しかしそんな合従連衡が、大義ゼロの総選挙にも意外に “歴史的” な意義を生んでいる。今回国民が示すのは、令和に入って衰退著しかった①二大政党制を立て直すのか、よりいっそう②多党化を加速するのか、の選択だ。

令和に「二大政党制」はなぜ終焉したのか|與那覇潤の論説Bistro
参院選後の「日本はどうなる?」でも蚊帳の外で、もう誰も相手にしない立憲民主党だが、『平成史』の著者として、小沢一郎氏の発言は心にしみた。将来、令和史を描く歴史家は、時代の象徴として必ず引用するだろう。 立憲・小沢氏「次の衆院選で全滅しかねない。執行部に大いなる責任」:朝日新聞 ■立憲民主党・小沢一郎衆院議員...

幸いにも先日、①と②それぞれの立場の代表と議論する機会があり、動画が公開されている。

二大政党寄りの識者としては、「アゴラ」の池田信夫さんと1/23に行った対談が、こちら。

議論のポイントは、健全な二大政党制のツボは野党第一党の穏健化だという点にある。政権を批判し次の選挙で交代を狙う側が、右ないし左に振り切れて “ヤバすぎる” 叩き方を始めると、その国は壊れてしまう。

かつては日本の民主主義の未熟さのように言われたが、いまや二大政党制のお手本だった国でも、「国際法は要らねぇ!」な右と「性別なんて存在しない!」な左が殴りあい、もう収拾できないことをみんな知っている。

トランスジェンダー "ブーム" の終焉: 「言い逃げ学者」の責任を問う|與那覇潤の論説Bistro
昨年の米大統領選でトランプに敗れた、カマラ・ハリスが回顧録を刊行して話題だ。もっとも大手のメディアでは、「バイデンを老害としてdisった」みたいなゴシップばかりが採り上げられる。 ハリス前副大統領、新著で「身内」酷評 米民主党に困惑広がる | 毎日新聞  昨年の米大統領選で敗れたハリス前副大統領(60)の回...

そんな隘路を避ける上で、公明党に合流し立憲民主党が(文字どおり)中道化したのは、朗報だ。

左右の原理主義がともに現実離れした結果、「中道化と多党化」の趨勢が同時に生まれたのは、1970年代のこと。往時まで遡りつつ、平成期に「真ん中寄りの二大政党」はどこで躓いたのか、考えているのでぜひ見てほしい。

戦後政治の "見果てぬ夢" : 令和に「中道結集」は実現するか|與那覇潤の論説Bistro
高市政権が発足した直後の昨年10/21に、政治学者の牧原出氏がインタビューでこう言っていた。 インタビュー:高市新政権、「なんちゃって連立」で変わる政策決定プロセス=東大・牧原教授 東京大学先端科学技術研究センターの牧原出教授はロイターとのインタビューで、日本維新の会をパートナーに選んだ自民党はより右寄 ...

多党化を進める側では、まさに “台風の目” である参政党代表の神谷宗幣氏を、1/22に取材した。

ふだんは浜崎洋介さんとの対談でお世話になる、文藝春秋PLUSの選挙特別企画で、実は投開票日の2/8にも、ライブの特別配信に出る予定だ(こっそり告知)。期待してくれたら嬉しい。

一般に「自民より右」とされる(ぼくもそう書くこともある)参政党だが、率いる神谷氏は同党をウヨクはおろか、保守政党とも規定していない。その前提を確認しつつ、では「何者なのか?」を60分、じっくり議論している。

月刊正論10月号 神谷宗幣ロング・インタビュー - 月刊正論オンライン
与党が大敗した参院選を受け、正論10月号ではトップ企画として、参政党の神谷宗幣代表ロング・インタビューを掲載しました。自民党から離れていった保守票の受け皿とな…

神谷宗幣:
左派メディアは参政党を「極右で天皇万歳で戦前の軍国主義に戻すつもりか」といった感じで報じますが、実際には全くそういう傾向はありませんし、むしろそういう極端な方々には辞めていただきたいと私は言っているくらいです。
(中 略)
もし昔に戻すとしたら江戸時代くらいに戻したいと、私はよく言っています。明治以降の戦前の日本を、私はあまりいいとは思っていませんので。明治から敗戦までは日本が戦争に明け暮れた時代であって、国民はそんなに幸せだったとは思えないのです。

『正論』2025年10月号、34・41頁
(平井文夫氏のインタビュー)

昨夏の参院選での躍進を受けた、こうした発言を見ると、アンチな人ほど(え、ファンでも?)意外の感を持つだろう。ぼくも意外だった。なので、この箇所も引用しつつ、本人に諸々の政策の真意を尋ねてみた。

番組では、もし党是の「反グローバリズム」で一致できるなら、将来は非自民での連立入りも排除しないとの発言もあった。そこで、参政党が “極右・排外主義” と見られる理由になっている、

① 帰化による国籍取得者の出馬拒否
② スパイ防止法制定
③(自国の)国旗損壊罪創設
④ 国会議員全員での靖国神社参拝
⑤ 選択的夫婦別姓に反対

につき、神谷氏の考えるロジックを順次聞いている。どの論点でも単純な “賛否” のぶつけあいではなく、「掘り下げるとなにが争点なのか?」を浮き彫りにできたと思うので、同党の支持者もアンチも投票前に見てほしい。

むろん神谷氏としては、既存の保守とリベラルが「どっちもダメだから」、これまで棄権してきた層をいま参政党が掘り起こして支持されているので、”自民 vs 中道” の二大政党の構図には「戻させない!」のが信条だ。

44:30前後

どうせ自民党が勝つ「一強多弱」よりは、拮抗する二大政党でという形で政治的な関心を惹いたのが平成なら、それを “空振り” としか感じ得ない層からの、「もっと選択肢を!」のドライブも猛烈にかかるのが令和だ。

池田さんは実現の可能性に懐疑的だったが、高市自民が維新に約束した「定数削減」と絡んで、選挙制度改革の議論も昨年末から盛んだ。もちろんその中身は、二党化と多党化と、どちらに向けて変えるかで違ってくる。

「中選挙区制」に与野党の支持広がる…衆院選挙制度の「抜本的見直し」目指す超党派議連で「連記制」などの案
【読売新聞】 衆院選挙制度改革を巡り、「中選挙区制」に与野党の支持が広がっている。選挙制度の抜本的な見直しを目指す超党派の議員連盟が5日に開いた会合では、自民党や日本維新の会を含む各党の参加者の多くが中選挙区連記制を軸とする案を示し

解散を決めたのが高市首相の “お手つき” だったにせよ、結果としてどんな「国のかたち」、いくつの政党が競いあう政治をめざすのかを、国民が選べる選挙になったのは “棚ぼた” だろう。

ぜひ有権者として、大切にしたいチャンスだ。今回の動画2つが、判断に役立つならとても嬉しい。

参考記事:

政治も学問も「推し活ビジネス」になった時代をどう生きるか|與那覇潤の論説Bistro
6月末に行った『江藤淳と加藤典洋』のイベントの、冒頭30分がYouTubeで公開されたほか、ダイジェストがデイリー新潮の記事になった。まずは聞き手と文章化を務めてくれた山内宏泰さん、ありがとうございます。 で、自分で言うのはなんだけど、「なんでふたり採り上げたんですか?」という問いに答えて、結構いいことを話してる...
まともな連立の大義は「選挙制度改革」しかない|與那覇潤の論説Bistro
下野危機まで囁かれた高市早苗総裁の自民党が10/15、こともあろうに「N国」と統一会派を組み、波紋を呼んでいる。N国は政党要件を満たさない政治団体なので、表現は微妙だが、実質的には閣外協力となろう。 自民党、NHK党と参院会派 多数派形成へ取り込み - 日本経済新聞 自民党は15日、政治団体「NHKから国民...

編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。