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この記事では、国民経済計算(SNA)から計算される平均時給について国際比較した結果をご紹介します。
1. 日本人の平均時給
日本の給与水準は低いとされますが、確かに国際比較してみると平均給与はかなり低く、なおかつ国際的な立ち位置が低下し続けてきたことがわかります。
しかし、日本ではパートタイム労働者が増えてきたことから、年収ベースで比較するよりも時給ベースで比較した方がより公正だという意見もあるようです。
今回は、平均時給の国際比較をしてみたいと思います。
SNAで集計されている賃金・俸給(Wages and salaries)を雇用者数と平均労働時間で割る事で平均時給が計算できます。
平均時給 = 賃金・俸給 ÷ 雇用者数 ÷ 雇用者の平均労働時間

図1 平均時給 日本
国民経済計算等 より
内閣府の国民経済計算から平均時給を計算してみると、OECDのデータとほぼ一致している事が確認できます。
毎月勤労統計調査から計算できる平均時給ともほぼ一致していますね。
日本の平均時給は、1997年の2,379円をピークにして減少傾向となり、2012年の2,154円を底にして上昇傾向に転じています。
2024年には2,515円と、当時のピークを越え、過去最高を更新しています。
平均時給で見ても、日本の給与水準は一時期よりも低下していた事が確認できます。
ただし、年収ベースの平均給与では2024年になっても当時のピークを越えていない事からすると、時給ベースではやや上昇傾向が強いようです。
2. 為替レート換算値の推移
この平均時給について、各国の水準をドル換算値で比較していきましょう。
ドル換算値には、各国の時々の市場為替レートの変動を反映した国際的な金額水準を表す為替レート換算値(MER)と、物価水準を揃えた空間的な実質値ととなる購買力平価換算値(PPP)があります。
まずは為替レート換算値の推移から見ていきましょう。

図2 平均時給 名目 為替レート換算値
OECD Data Explorerより
図2が主要先進国の平均時給の推移です。
日本は1990年代にドイツと同程度で非常に高い水準でしたが、横ばい傾向が続き、2022年以降は円安を受けて大きく下落しています。
イタリアや韓国を下回り、他の主要先進国とは大きな差が開いています。
時給ベースだと、ドイツやフランス、イギリスがかなり高く、アメリカと遜色のない水準なのが特徴的です。
年収換算だとアメリカが圧倒的です。同じような時給水準でも、アメリカでは働く時間が相対的に長く、年収水準だと高いということになります。
3. 為替レート換算値の国際比較
続いて、平均時給の為替レート換算値について先進国の中での国際比較をしてみましょう。

図3 平均時給 名目 為替レート換算値 2024年
OECD Data Explorerより
図3が2024年の平均時給(為替レート換算値)の国際比較です。
日本は17.2ドルでOECD34か国中24位です。
年収ベースの平均時給と国際順位は変わりません。
アメリカは2021年のデータなので2024年ではもっと高いと思いますが、38.8ドルと日本の倍以上です。
日本はスイスと比べると4分の1程度です。
為替レート換算値は為替変動の影響を受け、大きく変動します。
特に日本では2022年以降円安が進んでいることも影響が大きそうですね。
為替レート換算値はこのような事から、あまり国際比較に向かないとも言われます。
しかし、例えば稼いだ給与を全てドルに換算して、他国で生活しようと考えれば、この為替レートで換算したドルを手にすることになります。
確かに為替レート換算値は時々の為替に影響される時価のような側面がありますが、国際的な金額水準という意味では非常に重要な指標と言えます。
「数量」を重視するか「金額」を重視するかで見方は変わると思いますが、その双方を見て総合的に判断する視点が重要と思います。
4. 購買力平価換算値の推移
国際的な数量の比較をするのが購買力平価換算値です。
給与など家計の所得面では、家計最終消費支出の購買力平価でドル換算するのが一般的です。
これにより、その給与水準で買えるモノやサービスの量を比較する事になります。
単位は「ドル」で金額を表した数値ですが、その意味は各国の物価を揃えた上で通貨単位を揃え、国際的な数量的比較を試みたものです。
このため、購買力平価換算値は、空間的な実質値と呼ばれます。
経済学では実質が重視されるとされますが、購買力平価換算値はまさにその実質値を推定した指標です。
既にOECD、IMF、ILO、世界銀行、国連などの国際機関では、購買力平価換算値での統計値が主流となっているようです。
早速、平均時給の購買力平価換算値について、その推移から眺めてみましょう。

図5 平均時給 名目 購買力平価換算値
OECD Data Explrorerより
図5が主要先進国の平均時給(購買力平価換算値)の推移です。
日本(青)は1980年代から主要先進国の中では相対的に低い水準だったようです。
為替レート換算値では1990年代は非常に高い水準でしたが、購買力平価換算値では低くなります。
プラザ合意以降進んだ急激な円高による影響もあり、当時は物価水準(価格水準指数:PLI)が非常に高まっていたためです。
国際的な金額水準(為替レート換算値)では非常に高かったわけですが、国内での生活実感(購買力平価換算値)ではむしろ他国よりも下回っていた事になります。
購買力平価は、原理的には国内物価の上昇率とアメリカの物価上昇の比に連動します。
このため、デフレが続いた日本では、購買力平価は円高方向に推移し、購買力平価換算値も緩やかに上昇が続いてきました。
日本の購買力平価換算値は1990年代以降も緩やかな上昇傾向が続いていますが、2010年代に横ばい傾向の期間が長く続き、近年ではかなり低い水準となっています。
時給ベースで見ると、ドイツ、フランス、イギリスがかなり高く、特にドイツはアメリカを上回っているのが印象的です。
5. 購買力平価換算値の国際比較
最後に、平均時給(購買力平価換算値)の国際比較です。

図5 平均時給 名目 購買力平価換算値 2024年
OECD Data Explorerより
図5が2024年の国際比較です。
ドイツが50.6ドルで、先進国の中でも非常に高い水準に達しているのが印象的です。
日本は26.2ドルで、OECD34か国中24位、G7最下位です。
為替レート換算値と国際順位は変わりません。
一方で、年収ベースの平均給与(購買力平価換算値)は26位でしたので、時給ベースの方がやや国際順位は向上するようです。
6. 平均時給の特徴
この記事では、国民経済計算(SNA)から計算される各国の平均時給についてご紹介しました。
日本では時給ベースで見ても1997年をピークにして低下傾向が進み、2010年代から上昇に転じています。
日本の平均時給は長期的に見れば停滞が続いてきたわけですが、その間も各国は上昇傾向が続いてきました。
時給で見てもジリジリ国際順位が低下している状況で、OECDの中で日本よりも下位なのは既に経済成長率の高い東欧諸国や中南米国ばかりです。
今後の推移が気になるところですね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2026年1月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。






