高市首相は安倍後継路線でない:小川榮太郎氏への反論

我が畏友である小川榮太郎氏は、もともと高市さんとそんなに同じ意見だったはずないのだが、このところ、熱心な支持者になって不思議なのだが、私の投稿に対する「さらば八幡和郎」という投稿をしているので紹介する。

私は音楽美学を専門とする小川氏の知性を愛しているし、政治の問題よりそちらの話題を議論するのを好む。歴史観については、なにしろフランス革命が諸悪の根源という歴史修正主義者だから、フランス革命をすべての出発点という私と相容れるわけないが、思考経路はともかく、知的な会話を楽しむ相手として評価してきた。

色々お立場もあっての発言と思うが、ひとつ、それは困ると思うのは、安倍さんについて、首相退任後、清和会会長となって、保守系派閥を固める必要から首相在任中から保守的な主張に傾いたり、旧統一教会に接近したりしたことをもって、それが、もし再々登板した場合の政治姿勢になったとか、歴史修正主義が安倍氏の本音であるがごとき推定をするのは、安倍さんの世界的な、また、政治家としての評価にいい影響を与えないように思い、心配だ。

政治家としての安倍さんや岸信介についてその本音と建て前は私はあまり重要でないし、詮索しても分かるものでもない。安倍さんも会う人によって違うことを言っているからである。

私は政治家として何をしたかでもって安倍氏を偉大な宰相として評価しているし、政治家の評価はそうあるべきだと思うから。

 

安倍さんが高市さんを21年の総裁選で応援したのは事実だが、それは安倍さんの後見がある前提だったはずだ。それなら高市さんの足りないところが補え、また、総理としての成長を期待することもできただろう。しかし、確たる後見人がない高市さんを安倍さんがあの世で首相として優れていると評価しているとは思えない。安倍さんがやったこと、また、こうしただろうというのと余りにも違う。

安倍さんが公明との連立をいかに評価し維持に腐心したか、中国を警戒しつつも彼らのメンタリティに配慮し第一次内閣では最初の訪問先にし、二度目の時は、習近平を国賓として招待する決断をしたことと、あまりにも違うことを高市さんがしているのは明らかだろう。

安倍氏が総理を辞めてしばらくして再始動したとき、まず、保守層を固めることから始めたことから、発言が保守寄りになったのは事実だが、清和会会長としての安倍氏の言動であって、首相としての三度目の登板後の政策になったとは思わない。

それなら、それまで旧統一教会と距離をとってきたのが清和会会長になってから、派閥の支持団体としての旧統一教会に一定の配慮をせざるを得なくなり、問題の会合へのビデオ・メッセージを出されたわけだが、清和会会長としての晩年の言動をもって安倍さんの最終意思だとすれば旧統一教会に積極的に協力するのが安倍さん最後の政治姿勢だったことになってしまう。私は信じたくない。

また、安倍家の人々や地元組織がどうして二度の総裁選挙において高市さんを支援しなかったのだろうか。トランプ大統領と昭恵夫人のフロリダの会合のときも高市さんの影の形もない。

戦争へ至る道についての評価は、これは思想家として小川さんと意見が相違するのは当然だが、安倍さんが小川さんと同様に、あたかも歴史修正主義者と世界の常識のなかで分類されるべき歴史観の持ち主だったかのように断定するのは賛成できない。

岸信介も安倍晋三も国際的な視野を持ち、そのなかで日本が過度に批判されていることについて名誉挽回を願っていたと理解している。あたかも、本当は歴史修正主義者だが、便宜上、そうでないような振りをされていたのだと仰りたいのかもしれないが、それはそのような見方を受け入れるのは適切でないと思う。

最初の選挙で公明推薦で当選しておきながら二度目は公明推薦を断った(蓮舫と同様に法律に適合しない元二重国籍だったことのある)小野田紀美さんの応援も、清和会会長としてのもので首相としてのものでない。

私は小川さんの歴史修正主義とは相容れないが、知性を心から敬愛しているので、別に蕎麦であろうが北京ダックであろうが、喜んでご一緒する。政治問題での意見の相違を人間関係に持ち込むのは趣味でない。

高市さんが何をしようが軍国主義への道というのは酷いという人がいる。しかし、戦前の日本でも大正末期は軍縮歓迎が世論だった。ところが、張作霖爆殺事件(1928)、世界大恐慌(1929)、ロンドン軍縮条約(1930)などを経て急速に軟弱外交批判と、ルール逸脱の大胆な行動が称賛されるようになった。空気が変わると坂道をあっという間に転がり落ちるのが日本人。そういう熱狂を制御するのこそ政治家の仕事だが、あのころも、鳩山一郎が統帥権干犯問題などと煽動したりして軍部の片棒を担ぐどころか煽った。そして、高市さんは軍国主義へ向かう心に火を付けた。その罪状は重い。

高市首相Xより

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