「アメリカ人はヨーロッパの子」:米国が西洋文明再生のため欧州への関与を鮮明に

ミュンヘン安全保障会議における演説で、マルコ・ルビオ国務長官は、米国と欧州が共有する文化的・歴史的紐帯を前面に押し出し、「アメリカ人はヨーロッパの子である」との認識を明確にした。この発言は単なる修辞ではない。そこには、西洋文明という共通の基盤を再生するため、米国が欧州への関与を強めるという、はっきりとした戦略的意思が示されている。

マルコ・ルビオ国務長官 国務省HPより

ルビオ演説の特徴は、安全保障や同盟関係を、単なる制度や軍事協力としてではなく、「文明的共同体」の存続という文脈で再定義している点にある。米欧は、地理的に分かれていても、歴史、文化、宗教、価値観において一体の文明を形成してきた存在であり、その命運は不可分であるという認識が、演説全体を貫いている。

この姿勢は、昨年公表された米国の国家安全保障戦略(NSS)とも強く呼応している。同戦略は、米国政府の目的を「米国市民の神から与えられた自然権を確保すること」と明確に位置づけ、言論の自由、信教・良心の自由、民主的自己統治の権利を、決して侵害されてはならない中核的権利としている。そして、これらの原則を共有するとされる国々に対しては、その精神と文言の双方において、厳格な遵守を求める姿勢を打ち出している。

とりわけ注目すべきは、NSSが、欧州を含む同盟圏における「エリート主導の反民主的な自由制限」に対し、米国が明確に反対する立場を示している点である。これは、同盟国であっても価値の形骸化や自由の侵食を看過しないという、従来より踏み込んだ姿勢を意味する。ルビオ演説における「率直で、時に切迫した助言」は、まさにこの戦略的文脈の中に位置づけられる。

興味深いのは、こうした文明論的アプローチが、論理構造の一部において、プーチン大統領が発表した論文と一定の類似性を持つ点である。プーチンは、ロシアとウクライナを同一文明圏として描き、その歴史的・文化的不可分性を強調した。ルビオとプーチンの立場や価値観は根本的に異なるが、「文明」「歴史」「文化的継承」を国際政治の正統性の根拠とする点では、共通するレトリックが見られる。

ただし、その決定的な違いは、目指す方向にある。プーチンの文明論が主権否定や勢力圏の正当化に結びつくのに対し、ルビオの文明論は、自由と権利を守る主体としての同盟の再生を志向している。すなわち、西洋文明を「支配の論理」ではなく、「自由を守る共同体」として再定義しようとする試みである。

ルビオ演説が示したのは、米国が欧州から距離を取るという物語の否定である。米国の地理的拠点は西半球にあっても、その文明的出自は欧州にあり、欧州の行方は常に米国自身の運命と結びついている。西洋文明の衰退を「管理」するのではなく、その再生に責任を負うという意志が、ここには明確に示されている。

この演説は、同盟の再活性化を求める呼びかけであると同時に、欧州に対する厳しい問いかけでもある。すなわち、自らの文明を防衛し、自由と民主主義を内側から支え続ける意志を、欧州自身が持ち続けているのかという問いである。米国は関与を強める用意がある。しかし、その前提として、欧州もまた、自らの文明的責任を引き受けなければならない――それが、ルビオ演説とNSSが同時に突きつけている核心である。