もう他人事じゃない! 闇バイト強盗と「狙われる家」

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正直、最初は「闇バイト」という言葉を聞いたとき、ピンとこなかった。バイトに闇も何もないだろう、と。でも中身を知って背筋が凍った。これ、強盗の実行犯を募集しているのだ。SNSで。しかも応募しているのが、ごく普通の若者だという。

あなたの家は狙われている!? 警備のプロが教える防犯の新常識」(倭文浩樹 著)きずな出版

手口はこうだ。Xや匿名掲示板に「即日払い」「高額報酬」「ノルマなし」と書き込む。生活に困っている若者、奨学金の返済に追われている若者が、「ちょっとだけなら」と連絡する。最初は荷物の受け取りとか、運転手とか、犯罪の匂いが薄い仕事をやらせる。で、少しずつハードルを上げていく。「もっと稼ぎたいなら、こっちもあるよ」と。

気づいたときには、他人の家に押し入る実行役になっている。ここまで来たら、もう抜けられない。個人情報を握られている。「逃げたら家族に危害を加える」と脅される。裏に暴力団がいる可能性も指摘されている。「短期間なら捕まらない」? 甘い。防犯カメラ、スマホの位置情報、今の捜査技術をなめすぎだ。

で、ここからが本題というか、自分たちの話になる。

こうした闇バイト強盗が狙うのは、決まっている。高齢者だけの家。一人暮らしの部屋。理由は単純で、「抵抗されない」「助けを呼ばれない」からだ。犯人の側に立って考えれば(嫌な話だが)、合理的ではある。足腰の弱いお年寄りだけの家なら、警報が鳴っても対応が遅れる。一人暮らしなら、そもそも誰にも気づかれない。

もっとたちが悪いのが「訪問型」だ。「水道の点検です」「電気の契約を見直しませんか」。こう言われてドアを開けてしまう。特に高齢者は、昔の感覚で「点検の人が来た」と素直に信じてしまうことがある。ドアを開けた瞬間、終わりだ。マンションだろうがアパートだろうが関係ない。

じゃあどうするか。まずインターホン越しに確認する。これは絶対だ。ドアスコープで顔を見る。チェーンをかけたまま対応する。身分証を見せてもらうまで、絶対にドアを全開にしない。「失礼じゃないかしら」なんて遠慮している場合ではない。命の話をしている。

見守り用のWEBカメラも、高齢者世帯には入れたほうがいい。近所づき合いがあるなら、「最近変な人が来た」という情報を共有するだけでも違う。

「高齢だから仕方ない」「一人暮らしだから無理」。そう諦めたら、犯人の思うつぼだ。できることは、ある。一つずつやるしかない。

※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

<書籍評価レポート>

■ 採点結果
【基礎点】  39点/50点(テーマ:10、論理構造:10、完成度:10、訴求力:9)
【技術点】  19点/25点(文章技術:10、構成技術:9)
【内容点】  19点/25点(独創性:9、説得性:11)

■ 最終スコア 【77点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】

テーマの時宜性:闇バイト強盗やSNSを悪用したリクルート手法など、近年社会問題化している犯罪を正面から取り上げており、読者の関心と危機感に直結するテーマ選定が的確である

読者目線の訴求力:「昼間だから安全」「自分は大丈夫」という油断を冒頭から突き崩す構成により、防犯に無関心だった層にも当事者意識を持たせる導入が巧みである

実践的な対策提示:施錠の徹底、インターホン越しの確認、WEBカメラの導入、SNS投稿の注意点など、読後すぐに実行できる具体策が明示されており、初心者にとっての実用価値が高い

【課題・改善点】
対策の深度:紹介される防犯策が「鍵をかける」「カメラをつける」といった基本レベルにとどまっており、防犯設備の具体的な選び方、費用感、自治体の補助制度など、一歩踏み込んだ情報が欲しいところである

独自の視点の弱さ:闇バイトの仕組みや高齢者が狙われる構造の解説は丁寧だが、既存の報道やニュース番組で繰り返し伝えられてきた内容との差別化がやや弱い。著者ならではの取材や分析が加われば、書籍としての存在意義がより明確になる

■ 総評
本書は、闇バイト強盗の急増やSNSを悪用した犯罪リクルートなど、いま最も関心の高い防犯テーマを平易な言葉で解説した入門書として一定の価値がある。「昼間は安全」「自分だけは大丈夫」という読者の思い込みを崩すところから始める構成は巧みであり、防犯意識の低い層が最初に手に取る一冊としては適切だ。

一方で、主張を支える統計データの不足、対策の深度が基本レベルにとどまる点、既存報道との差別化の弱さは否めず、防犯にある程度関心のある読者には物足りなさが残る。初心者が「自分ごと」として防犯を考え始めるきっかけの書としては推奨できるが、本書を入口に、より専門的な防犯情報へ進むことを前提とした位置づけが妥当だろう。