トランプ米大統領や高市首相といい政治のトップに虚飾に満ちた言動が多すぎる

中村 仁

トランプ米大統領の一般教書演説(24日)、高市首相の施政方針演説(20日)や国会代表質問での答弁などを比較すると、両氏には共通点が少なくないことに気が付きます。「虚飾に満ちている」、「こじつけが多い」、「事実の恣意的な解釈が目立つ」などです。

匿名の発信源による意図的な情報操作、フェークニュースの垂れ流しどころか、政治の当事者による言動の虚実の検証がますます必要になってきました。メディアに虚実の検証が期待されているのに、当事者の発言を垂れ流し、まるで広報・宣伝活動に貢献しているような姿は情けない。

トランプ氏は一般教書演説で「今は米国の黄金時代だ。バイデン政権は史上最悪のインフレをもたらし、国内犯罪の流行も引き継ぎ、それを是正した。さらに歴史上どの時代よりも多くの米国人が働いている」などと、胸を張りました。

トランプ大統領と高市早苗自民党新総裁

米紙は虚偽に満ちた演説と酷評

米ニューヨークタイムズ紙は「虚偽や不正確な主張を列挙した」とずばりと批判しました。「前政権下の22年6月に9.1%だったインフレ率はトランプ氏の就任前から下がり、就任時点の昨年1月にはすでに3%の低水準だった」、「犯罪率は前政権下で低く抑えられており、トランプ氏の就任前から低下していた」と指摘しています。

AP通信も「トランプ氏自身の成果のアピールについて、多くは誤情報に基づいている」と非難しています。就業者の推移を失業率でみると、「現在の4.3%は、昨年1月は4%だった(つまりトランプ氏の就任後、失業率は上昇)」と指摘(いずれも読売新聞)しています。

私が思うに、「今は米国の黄金時代」も虚飾に満ちた表現です。トランプ氏が売り物にした「高関税による脅しで相手国から譲歩を引き出す」相殺関税に対し、連邦最高裁が違憲判決を下し、トランプ氏は焦りの色を濃くしています。そこで「別の法的枠組み」を使うことにし、150日程度、通商法122条による関税引き上げに踏み切ります。

おかしな点は、新に持ち出した同122条は「大規模かつ深刻な国際収支危機」の際に、期間を区切って関税を課す権限(15%まで)を大統領に与えることにしています。その大統領は「今、米国の黄金時代」といい、これは法律が規定する「深刻な国際収支危機」とは両立しません。

さらにトランプ氏は「外国が支払う関税は、米国民の財政負担を軽減することになる」と指摘しました。これも事実に反し、関税が上がった分だけ米国内における販売価格が上がり、NY連銀は「米国の企業、消費者がその9割を負担する」試算し、トランプ氏の主張と真逆のデータを示しています。

こうしたフェーク、虚飾的言動をきちんと検証する精神が米国には残っています。では日本の高市首相の政治手法はどうかというと、トランプ氏を模倣しているのではないかと思えるような虚飾が多いのです。

3党しか参加しないのに超党派とは

飲食料品に対する消費税ゼロを検討する会議が26日開かれ、政府は「超党派の社会保障国民会議の初会合」といい、メディアもそう表現しています。おかしいと思いますよね。自民、維新、チームみらいの3党しか参加していないのに「超党派」といい、国民が参加していないのに「国民会議」というのか。そう書く新聞も頼りない。「3党議員会議」が正しい。

まともな経済学者8、9割が反対しているほど問題の多い消費税減税なのです。高市氏は選挙公約に掲げた手前、実施に移すのでしょう。「国民会議」が決めたことは「国民」が納得して決めたという形にしたいのです。メディが「国民会議」と表現を繰り返していると、国民は知らず知らずにうちに違和感を持たなくなってしまう。誤情報の刷り込みです。

高市氏の看板である「積極財政」、「長年続いてきた過度な緊縮志向・財政の流れを断ち切る」という表現も同じ問題を含んでいます。いかにも「これまでは緊縮財政であった」という印象の刷り込みが行われてしまうのです。「これまでずっと緊縮財政」はデータをみれば、事実に反する。

安倍政権の異次元金融緩和、財政拡張政策で日銀が国債発行残高の半分を購入・保有(財政ファイナンス)という異常な姿をみれば、高市氏の「行き過ぎた緊縮財政」は事実の捻じ曲げに相当します。

「財政規律にも十分配慮した財政政策」と強調する一方で、「経済成長を実現するために必要な財政出動をためらわない」という。さらに「成長投資、危機管理投資については、多年度で別枠で管理する」そうです。その「心」は「財政規律維持の対象としない別枠」を設けることでしょう。

経済常識に反する数々の高市財政

「国民会議」で首相は「物価高に苦しむ中所得層の負担を緩和したい」と述べました。「飲食料品の消費税ゼロの恩恵は、高額消費が多い富裕層、高額所得者ほど多い」が経済常識です。実施するならば、中低所得層に絞った減税にするか、現金給付をすべきなのです。それには各層の所得を自営業も含めて把握する必要があるのに、それができない。

なんとも得体の知れず、経済常識にも反する高市財政です。与野党議員を含む国会にブレーキ役を期待するのは難しそうです。結局、マネー市場が波乱を起こし、ブレーキをかけるかしかないようです。市場を重視する米国のベツセント財務長官も高市財政にはらはらしています。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年2月27日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。

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