トランプ大統領の関税政策の行方(古森 義久)

The White Houseより

顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久

米国のトランプ政権は最高裁判所により2月20日に全世界的な関税政策を違法だと裁定されたことで第二期の発足以来最大の試練を受ける情勢となった。同時に野党の民主党側にとっては国政での挽回を図る最大の機会となり、政権への新たな攻勢を強めている。

だがトランプ大統領は24日の一般教書演説でも最高裁のこの判決を不当だと非難し、新たな法的根拠による新関税政策を打ち出した。こうした展開の結果、米国政府の関税政策、さらには貿易政策は混乱を深め、共和党と民主党との党派の対立も一層、険悪となる。

20日の最高裁の判決はトランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にほぼ全世界に対して課してきた貿易関税を違法だと断じた。その理由としてはこの課税が議会の承認を得ていない点を違法だとしていた。ただし最高裁判事9人のうち6人がこの判決に同意し、3人は反対していた。

トランプ関税は昨年8月から日本を含む全世界の多数の諸国に対して実施された。トランプ大統統は米国にとっての国際貿易が米側の輸入の増大一途なのは不公正だとして各国からの米国への多様な輸入品への関税をかけた。その際、国際緊急経済権限法の「現在の米国への輸入の増大は米国経済への緊急の危機をもたらすため、その対策として関税をかける」という趣旨の根拠に基づいていた。

しかし最高裁はトランプ政権のこの関税実施が議会の同意を得なかった部分が違法だとの判断を示した。この関税措置に対しては当初から民主党側からは強い反対が起きて、全米各地の複数の地方裁、上級裁で違法だとする訴訟が起きていた。これらの裁判所での判決はトランプ政権の方法を違反だとする事例が多く、その集約の形で今回、最高裁判所が判決をくだした。

判決は9人の判事のうち従来、保守派とみなされてきた3人をも含め計6人が支持した。ただしクラレンス・トーマス判事ら3人はこの判決に異を唱え、トランプ政権の関税措置は違法ではないとする意見を発表した。

しかしトランプ大統領はこの最高裁の判決にただちに反対し、大幅関税の法的根拠を新たに「通商法122条」に求め、これまでの関税の対象としてきた諸国に一律の10%から15%の新たな関税を課す措置をとった。

同大統領は2月24日の連邦議会上下両院合同会議での一般教書演説でもこの関税問題を正面から取り上げ、最高裁の判決は不当だと糾弾した。同時にトーマス判事ら3人の異見こそ正当だと強調し、新関税の発効を再度、宣言した。

トランプ大統領がここまで強気に出る背景には当初のグローバル関税が政治的、経済的に成功を収めたとみる認識がトランプ政権側には強いことが挙げられる。

まず反対派の「大幅関税は米国経済の大不況や高インフレをもたらす」という警告が実際には的外れとなり、このところの経済成長、低インフレ、株価の記録的上昇などがトランプ大統領の予測を裏付ける形となっていた。しかも米国民一般からの関税への強い反対はなく、国際的にも当初のグローバル関税にも対象国はみな穏健な態度に出て、多国間の紛争は一段落していた。

しかしトランプ政権と対決する民主党陣営にとっては今回の最高裁の判決は最大の攻勢をもたらした。議会両院で共和党に多数を制され、トランプ政権のリベラル政策全面排除とも呼べる保守政策の連発に退潮に退潮を重ねてきた民主党側が今回はトランプ政権の主要政策に対して最高裁の支持を得て、全面的に対決し、排除できる構えとなったわけだ。だから今後の米国の国政は当面は民主党側の反撃が目立つこととなるだろう。

但し、肝心の関税問題では当初の大幅関税が違法だったとする判決は、ではトランプ政権が既に取得した巨額の関税を返金するのか否か、などの点には一切、言及がなく、今後の大規模な混乱も予測される。

古森 義久(Komori  Yoshihisa)
1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2026年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。

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