米軍基地使用を拒否したスペインに日本も連帯を示せ

トランプ大統領が、スペインのサンチェス首相が国内の米軍基地をイラン攻撃に使うことを拒否したのに対して、「スペインとのすべての貿易を断ち切るつもりだ。スペインとは一切関わりたくない」と述べたことについて、フランスのマクロン大統領が厳しく非難し、「サンチェス首相と会談し、スペインに対する最近の経済的威圧の脅迫に対し、フランスの欧州連帯を表明した」とした。

トランプ大統領とスペイン・サンチェス首相

高市首相も少し歯切れは悪くても仕方ないが、トランプ大統領の暴言への否定的な立場を表明しないと、日米同盟における「事前協議」が有名無実となりかねず、黙ってすごしたり、間違ってもトランプ大統領に同調すべきでない。

サンチェス政権は、スペイン南部にあるロタ海軍基地とモロン空軍基地の使用を拒否したことと、スペインが北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防費の目標である国内総生産(GDP)比5%まで引き上げるのを拒否していることを、トランプ大統領は厳しく批判している。

このほか、サンチェス政権は、イスラエルによるガザ地区での軍事作戦や、南米ベネズエラのマドゥロ大統領の誘拐・排除の軍事作戦に断固反対してきたことも背景にある。

米軍との関係について、日本とスペインは少し違う。スペインの米軍基地は、1988年の米西防衛協力協定によって「スペイン政府の同意なしに第三国への作戦に基地を使えない」ことになっている。

それに対して、日本の場合は日米安保条約、日米地位協定、岸内閣時代の1960年交換公文(事前協議制度)で定められているが、日本からの戦闘作戦の発進、重要な装備変更、核持ち込みについては、事前協議制度で日本政府と協議するとされている。

たとえば、台湾有事が尖閣諸島を含む「日本(施政下の領域)への武力攻撃」のケースでない限り、在日基地を「戦闘作戦の出撃拠点」として使うなら、原則として事前協議→日本の同意が必要である(「戦闘作戦」以外の支援活動は、協議不要)。

この仕組みは、日本政府が白紙で認めるかどうか決めるというようなものではないが、最終的な拒否権はあるということだ。しかし、そのときに、米国が通商関係を止めるとか、日本の領土が侵略されたときに助けないぞとかいうのは、筋違いである。

現実には、米国が緊急に介入したいという場合には、渋々でも了解するのだろうが、米国の方から先制攻撃的に動いたりしたら、NOもありうるということは明確にしたい。

台湾有事の場合、米軍から介入するので沖縄の基地使用と後方支援などをしたいと通告されたら、問題の平和的解決を願いつつ、米軍の基地使用や後方支援を大局的見地から認め、自衛隊自体の作戦行動への参加はできる限り避けるべきだろう。

それでも、今回の湾岸諸国へのイランによる攻撃のように、中国から攻撃される可能性はあるが、沖縄の防備は固いし、壊滅的被害は避けられると期待するしかない。しかし、自衛隊が最低限を超えて軍事行動に参加するなら、沖縄が戦場になることもありうる。

その段階で、これまでの自公政権なら、沖縄が巻き込まれないように配慮しつつ行動するだろうが、高市政権のような極端に勇ましい政権は、沖縄より台湾を優先することを恐れている。

その意味でも、中国が動いていないのに、予防的に米軍が中国を先制攻撃するために沖縄の基地が使われるようなことは、日本政府は拒否すべきだし、そのときに認めないなら通商関係断絶だとか脅されないように、この際、スペインに連帯とまではいわずとも、理解くらいは示しておくべきだと思うのだ。事前協議が空洞化するなら、日米同盟はまったく変質してしまうし、それは対等の関係に近づけたいと願った岸信介元首相の意図とはかけ離れたものになるのではないか。

ついでながら、台湾問題についても、新著『国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退』(さくら舎)では論じているが、台湾問題について日本は、「ひとつの中国」原則を認識し尊重するとしつつ平和的な解決を望むとしている。

これを現状維持を支持するのが国交樹立以来の日本政府の立場だと解釈するのは無理がある。「ひとつの中国」原則を認識し尊重するとしつつ平和的な解決をするということは、台湾も現状より、統合の方向に向かってそれなりの譲歩をしなくてはならないことを意味するし、それを日本も受け入れるしかない。

国交樹立以来、台湾の独立性はかなりの分野では強化され、多くの分野では弱体化している。たとえば、国交を持つ国の数は30ほどあったが、現在は12か国で、10年以内に皆無になる可能性も強い。

日本は台湾との人的交流などは拡大しているが、これに対して中国が断固とした措置をとる可能性は常にある。

いったい、台湾のために何を残し、何は諦めるか、戦略的に台湾自身も日米も考えるべきだろう。もし、多国間条約で、これまでの国際法の枠にとらわれない特別の地位を考案できれば一番いいのだが。

この問題については、また別の機会に論じたい。


国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退

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