ローカル鉄道が止まる本当の理由:運転士不足は地方衰退ではなく経営の問題だ

Gyro/iStock

群馬県の桐生と栃木県日光市の間藤を結ぶ第三セクター鉄道・わたらせ渓谷鐵道が運転士不足を理由に一部列車の運休を発表した。自然災害や工事による運休はこれまでもあったが、運転士不足による運休は今回が初めてだという。

多くの人はこれを「地方の人口減少」や「地方鉄道の衰退」といった話として受け止めるだろう。しかし問題の本質はそこではない。これは地方の問題ではなく、むしろ日本の組織の「経営の質」を映し出す出来事である。

鉄道運転士は誰でもすぐにできる仕事ではない。資格や訓練が必要であり、養成にも時間がかかる。そのため労働市場が逼迫すると、最初に供給制約が表面化する職種でもある。今回の運休は、日本経済がすでに深刻な人手不足の時代に入っていることを象徴している。

私は子どもの頃から鉄道マニアで、日本全国の地方ローカル鉄道を乗り歩いてきた。実際に多くの路線を見てきた経験から言えば、このような路線を運営する鉄道会社の経営レベルには非常に大きな差がある。そして率直に言えば、経営の質が高い中小鉄道会社は非常に少ない。残念ながら、そのほとんどは、経営に必要な最低限の知識や経験を持たない”自称経営者”によって経営されている。

その中で印象的だったのが、福島交通や湘南モノレールである。これらは「みちのりホールディングス」グループの鉄道会社だ。実際に利用すると、鉄道会社として事業を成立させようとする明確な経営視点が感じられる。

企業として収益構造を意識し、事業を成立させる努力をしている会社は、結果として従業員の待遇も改善できる。待遇が改善されれば人材が集まり、結果としてインフラとしての鉄道も維持できる。極めて当たり前の話である。

一方で、第三セクター鉄道の多くは全く違う構造を抱えている。

わたらせ渓谷鐵道の場合、歴代社長は群馬県庁出身者が務めてきた。つまり群馬県庁職員の天下りポストとして機能してきた側面がある。ここで問題にすべきなのは個々人の能力ではない。構造である。

地方公務員としてキャリアを積んできた人は行政運営の専門家であっても、企業経営の専門家ではない。企業経営とは、市場の中で価値を作り、価格を決め、収益を上げる活動である。しかし行政組織の延長として運営される会社では、発想がどうしても「予算管理」や「補助金確保」になりがちだ。

その結果、賃金や待遇を市場水準まで引き上げることができない。人が集まらない。そしてついに列車が止まる。

これは地方人口減少の問題ではない。

「人がいないから鉄道が止まった」のではなく、「経営が人を集められなかったから止まった」のである。

鉄道は社会インフラだが、その運営主体は企業である。企業である以上、最終的に結果を決めるのは経営の質だ。経営レベルの高い企業は収益構造を作り、従業員に適正な待遇を提供できる。その結果、人材が集まり、インフラとしての機能も維持される。

逆に、経営が行政組織の延長として運営されている限り、問題は解決しない。補助金で延命しても、労働市場の現実からは逃げられないからだ。

地方ローカル鉄道の問題は交通政策の問題ではない。

それは日本社会の「経営の質」の問題なのである。

運転士不足で列車が止まるという出来事は、日本の組織が本当に市場と向き合って経営してきたのかという問いを、私たちに突きつけている。

私は2024年秋に、社会派ブロガー「ちきりん」氏と、わたらせ渓谷鐵道を利用して1泊2日の旅行をした。

この動画では、私も「ちきりん」氏も、テレビの旅番組でよく見られる「ヨイショ」を一切しておらず、辛辣に経営の問題点を指摘している。長い動画ではあるが、一人でも多くの沿線自治体関係者に視聴していただき、過去の否定と、経営陣の刷新を行なっていただきたい。

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