国民民主党の「イラン情勢に未対応だから反対」論は筋が通らない

経緯を整理する

国民民主党は昨年末、所得税の非課税枠「年収の壁」引き上げで自民党と合意した際、予算案を「年度内の早期に成立させる」と明記した合意文書を交わしていました。

その後の日程闘争を経て、榛葉賀津也幹事長は自民の鈴木俊一幹事長に対し、「13日の衆院通過には反対だが16日なら容認する」と伝えていたのです。つまり「3日待てば賛成する」という立場でした。

ところが、自民側が13日通過を譲らないと一転して反対を表明。その際の理由として浮上したのが「イラン情勢への対応が不十分」「暫定予算が必要」というものでした。

「イラン反対論」は論理的に成立しない

残念ながら、この主張は論理的に成立しません。

16日採決なら賛成するというのが国民民主の立場でした。しかし、週明けになったところで中東の情勢が突然解決するわけがない。この理屈を持ち出した瞬間に、「16日になっても反対する」と自ら宣言したも同然です。

「日本に影響する国際情勢が落ち着くまで予算は組めない」——その論理を押し通せば、永遠に予算が組めない話になってしまいます。

玉木代表自身が「暫定予算に制約あり」と語っていた

さらに見逃せない点があります。玉木雄一郎代表は今年1月、自身のSNSでこんな投稿をしています。

「暫定予算については、暫定的なものであるから、そこに盛られる内容は、国家諸機関の基準的経費に限られ、新規事項に属するものはいっさい取り上げられない」と厳格に解する説もある……ただ、新年度4月からの執行に支障が生じないよう速やかに衆参で承認を得なくてはならないことが大前提であるため、自ずから「国政遂行上不可欠の経費」として与野党に幅広く認められる経費に限定されてきました。(中略)なんの制約もなくあらゆる経費を「暫定予算」に計上できるわけではありません。

これは玉木氏自身の言葉です。大蔵省出身の財政知識をもとに、暫定予算の限界を丁寧に解説している。財政の本質を誰より理解しているはずの玉木氏だからこそ、今回の「暫定予算論」は一層もったいなく感じます。

玉木雄一郎代表 国民民主党HPより

イラン対応の正しい道筋は「本予算+予備費+補正」

では、イラン情勢のような緊急事態にはどう対応すべきか。答えは明快です。

政府はすでに予備費などを活用して対応する考えを示しており、高市首相は緊急的な激変緩和措置を早急に実施するよう指示し、燃料油価格激変緩和対策基金の残高を活用する方針を示しています。

本予算を速やかに成立させ、予備費で機動的に対応しながら、必要であれば補正予算を編成する——これが財政運営の王道であり、財政の専門家である玉木氏もよくご存じのはずです。

「解決する野党」への期待を込めて

国民民主党はこれまで、「与党にも批判野党にも与しない、政策実現のための是々非々」という姿勢で多くの有権者の支持を集めてきました。「年収の壁」をはじめ、実際に政策を動かしてきた実績は本物です。

だからこそ、今回の対応は残念に感じています。与党の強引な国会運営への不満は理解できますし、それを表明する方法は当然あってよい。

ただ、自らの過去の言論と矛盾する論拠を持ち出してまで対決姿勢を演出することは、国民民主が大切にしてきた「政策の党」としての信頼を損ないかねません。

参院での審議はこれからです。玉木氏率いる国民民主党が、「対決」ではなく「解決」の政党として再び存在感を発揮することを、期待を込めて見守っていきたいと思います。


編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2026年3月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント

  1. 早川蒼真 より:

    音喜多氏の指摘には100%同意します。
    「16日なら賛成」と言っていたのに、13日通過が決まった途端に「イラン情勢が不十分だから反対」と言い出すのは、論理的に筋が通らない。
    週末を挟んだだけで中東情勢が好転するわけがないのだから、これは後付けの理由と言われても仕方がない。
    「本予算+予備費+補正」という対応の王道についても、財政出身の玉木氏が一番わかっているはずだという指摘はその通りだと思います。

    「時間をかけて話し合いたい」と思うこと自体は、私は別にあっていいと思います。
    審議日程が短い、熟議が足りない、拙速だと感じるなら、そう主張する自由は当然あるはずです。
    問題は、そう思っているならそう言えばいいということなんです。
    それが大事なら、後付けの苦しい言い訳をするのではなく、SNSでも記者会見でも、もっと具体的に
    「◎という項目について、◎という懸念があるから、だからこの点についてはもっと時間をかけて議論したい」
    と、具体的に発信すればいいんです。
    たとえばエネルギー対策なのか、暫定予算の扱いなのか。
    それを怠って、後から取ってつけたような理由を並べ、
    どこが本丸なのかを明確にしないまま反対だけが前に出ると、
    どうしても「政策の党」ではなく「政治をしているポーズを見せたいだけの政治ごっこ」にしか映らなくなってしまいます。
    玉木氏はSNSの発信力がある政治家なのだから。

    しかも、イラン情勢や物価高への対応については、政府は予備費や基金残高の活用、必要なら補正予算編成の可能性にも触れています。
    少なくとも「本予算を止めなければ何もできない」という話ではありません。
    だからこそ、反対するならなおさら、どの政策を修正させたかったのかを具体的に示す責任があったと思います。

    次の選挙で国民民主の議席数が増えれば、「あの時の反対は筋が通っていた」と評価されるし、
    逆に議席を減らせば「対決より解決・・ああ、昔そんな看板あったね。デタラメだったけど」と有権者に判断されたということです。
    ただそれだけの話だと思います。