事業を営む者は日々の顧客や取引業者とのやり取りやオペレーションから経済の熱量や風向きを体感するものです。飲食店なら客の入り具合や客単価、ガススタンドなら消費者や事業者の懐具合、不動産業界なら売り手と買い手の心理…いろいろあるはずです。私は顧客と直接やり取りする方なのでEmailや電話でのやり取りでいつも聞かない質問の真意とか、先行きの不透明感などを嗅ぎ取っています。
これらは当然データに出る前の兆候であり、例えば顧客のネガティブな思考が意思決定を通じて現実化されるとそこで初めて事実として記録され、その数か月後にデータとして世に出回るわけです。とすれば顧客のもやもやから経済アナリストがこりゃ大変だ、というまでざっくり6か月ぐらいのタイムラグがあるとみてもよいのです。
今、世の中で起きていること。最も顕著なのは原油の高騰、日本ではナフサがないと騒ぎ始めているし、液化天然ガスは在庫を抱えられないのでもっと厳しいでしょう。そしてそれは価格上昇というネガティブな引き金を引いてしまっています。物理的に物価が上がると人々の消費マインドが一気にシュリンクするため、あらゆる分野でその影響は広がります。

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経済の活力は「ノリ次第」「周りの雰囲気次第」という点は無視できません。雰囲気が作り出す便乗型経済が実際にはかなり大きなパワーを持つと言ってもよいでしょう。故にバブル経済もノリが大きな役割を果たしたし、主婦向けのテレビ番組の社会影響度が取りざたされたこともあるし、今ではインフルエンサーの動静次第ということになります。
私はこのところ、カナダ経済に全く活気がないと思っています。私のようにアセットを人様にお貸しするビジネスをする中で「全て空き無し」ならどんな文句がある、と言われるでしょう。冒頭申し上げた顧客とのやり取りで感じるのは顧客が打算的でやむを得ずであり、必ずしもそれを取捨選択したわけではないという点にあります。私の周りの経営者から聞こえてくるのは心の中の悲鳴であり、一部では事業撤退する人も出てきています。
北米で報じられているノンバンク融資問題、いわゆるプライベートクレジット問題と称する問題は規模こそ2兆㌦程度であり、金融システムを震撼させるものではありません。ただ、今起きている原油高の行方が全く読めない中、問題の連鎖が起きる可能性がないとは言いません。私が日本人でセロトニンが足りないのだろう、と言われればそれまで。ただし、経営者は最悪のシナリオは常に頭に置いておくべきというのが私の師からの教えであります。ですから今の原油問題も私なりに考えているところはあります。
原油の最悪のシナリオは経済が止まる、であります。既に東南アジア諸国ではガソリンがなくてバイクや自動車への給油に制約が出ています。日本は世界でも最も備蓄量が多いとされますが、それでも254日分であり既にその取り崩しが始まっています。ではホルムズ海峡問題は解決する見込みがあるのか、と言えば今日これを書く時点で予想不能と申し上げます。理由はイスラエルが主導してイラン政権中枢を殺害し、これを続けると脅しているからです。これではイランにとってオカルト映画のようなもので逃げ道がない人間は暴発を導きやすいというのは日本の戦国時代の戦い方を知っている人なら誰でも頷くはずです。
経済というのは夢と希望と未来への投資の観点から前向きの回転をするものです。アメリカとカナダは数年前から移民抑制政策に入っており、経済の刺激度が緩慢になり、不動産市況が崩れ、多くのデベロッパーや建設業者が深刻な経営不振に陥っています。「経済という池にお金と人材と技術を突っ込むと池の嵩が増す」のです。経済学者がどんなに格好の良い表現をしたところで最終的にはこの小学生でもわかる経済の仕組みがもっとも単純化されて、わかりやすいのです。
移民を嫌ったのは政治的理由。お金は人とともにやってきます。技術はもんじゅの智慧であり、様々なバックグラウンドの人が生み出すことでブレイクスルーを生み出します。欧州を見てもわかるでしょう。難民規制をし続けたことで経済は浮揚しません。北米もその仲間入りをしたとみています。とすれば日本が活性化を維持できるかどうかは東アジアと東南アジアの盟主として人とマネーが入るかどうかにかかっていると言えるのです。
併せて原子力発電の再開とSMR(小型原発)の開発に取り組むべきでしょう。これから先、安定電力がなければ皆さんの大好きなAIも動かないのです。自動車もEV復権はあるかもしれません。時代の与件がある日突然変わることは誰も予想していないからサプライズと映るのでしょう。今の私には何が起きても驚かない究極的な最悪シナリオを原油遮断による経済ストップだと考えています。
日本の悪いところは事が起きてから慌てること。今は将来のリスクを見据え、盤石の態勢を整えるべきだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月19日の記事より転載させていただきました。







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