
The White Houseより
高市早苗首相の今回の訪米は、単なる儀礼外交では終わらなかった。日米同盟の根幹に関わる、極めて重大な政治的成果を伴う訪問となった。
最大のポイントは、米上院が「尖閣諸島は日米安保条約第5条の対象である」と明記した決議を採択したことである。
これは単なる歓迎決議ではない。米国議会が初めて、尖閣防衛について「文書で保証」したという意味を持つ歴史的転換点だ。
決議の核心は次の3点に集約される。
・尖閣への武力攻撃は、米国の対日防衛義務発動を意味する
・中国による現状変更の試みへの断固反対
・日本の防衛力強化(防衛費増額・反撃能力)の支持
これまで米国は「日本の施政下にあるため安保の対象」と繰り返してきたが、それはあくまで政府見解や発言レベルにとどまっていた。今回は議会決議という形で固定化された点に決定的な意味がある。
政権が変わっても議会決議は残る。ゆえに抑止力としての価値は極めて高い。
さらに米議会は今回の訪米を「同盟強化の象徴」と位置づけ、日本の安保政策を公式に評価した。これは米国が高市政権を信頼し、対中抑止を共に構築する意思を明確に示したものだ。
尖閣の本質:単なる無人島ではなく「日本の国益そのもの」
尖閣問題は領土紛争の一つではない。日本の国家存立に直結する問題である。
今後1〜2年で現実味を帯びる台湾有事において、中国が想定するシナリオは「海上封鎖」と「尖閣占領」がセットとなる。その局面で日本の安全保障は直接的に脅かされる。
尖閣は単なる無人島ではない。そこには、
・海底資源
・広大な排他的経済水域(EEZ)
・重要な海上交通路
・南西諸島防衛の前線拠点
が重なっている。
もし尖閣を失えば、エネルギー・漁業・海上輸送・防衛ラインが一気に崩れる。つまり、尖閣は日本の国益の核心そのものである。
だからこそ日本政府は半世紀にわたり、米国に対して尖閣防衛の明確化を求め続けてきた。
高市首相の国会答弁で示された「海上封鎖や尖閣防衛で米軍とともに戦う」という方針は、この現実を踏まえた当然の国家意思に過ぎない。
これに対して「撤回すべき」といった批判は、国防の基本を理解しない極めて的外れな議論であり、結果として国益を損なうものである。
取材から見た現実:米国は尖閣をほとんど知らなかった
筆者は40年以上にわたり尖閣問題と米議会を取材してきた。その経験から断言できるのは、米政府の一部を除き、米議会では尖閣問題の認知すら極めて低かったという現実である。
1996年、ウォルター・モンデール駐日大使が「尖閣は安保適用外」と受け取られる発言を行い、日本国内は大混乱に陥った。
その後、カート・キャンベル国務省高官が「尖閣は安保5条の対象」と明言して火消しに動いたが、この一件は米国の認識の曖昧さを象徴している。

カート・キャンベル元米国国務副長官(左)と筆者
筆者提供
また、尖閣の海底資源についても誤解が多い。一般には国連調査が発端とされるが、実際には米海軍が潜水艦戦略の一環として行った調査が起点である。筆者は30年ほど前に作戦に従事した米核軍高官のテキサス州の自宅を訪問して詳細を聞いた。文書も入手した。
さらに日本政府は「領土問題は存在しない」と公式に主張しているが、実際には大平政権時代に中国との「棚上げ」合意があったことは確認されている。筆者はtanaage と書かれた米公文書を入手。現場にいた米政府高官と対談した。
日本政府は公式には「領土問題は存在しない」とする。だが、領土問題はあるが、日本固有の領土というべきである。
つまり、尖閣問題は歴史的にも政治的にも、極めて複雑な背景を持つ問題である。
日本は尖閣を自力で守れないという現実
日本は竹島を韓国に占拠されたままであり、尖閣も実効支配を強化しなければ同様の事態に陥る可能性がある。
現状、尖閣は灯台や常駐施設すら整備されておらず、実質的には無防備に近い。
このまま台湾有事が発生すれば、中国軍や武装漁船による占領は現実的なシナリオとなる。
さらに、日本の安全保障体制には根本的な問題がある。米国が指摘してきたように、日本は自国防衛への負担が小さく、同盟の非対称性が存在する。トランプ大統領がいうように、米国は条約により日本を防衛する。だが米国有事でも、日本人は9条を言い訳にTVを見ているだけだ。
そのため、米国が日本防衛にどこまで関与するかは常に不確実性を伴ってきた。
しかし今回の上院決議により、その不確実性は大きく低減した。尖閣の存在すら知らなかった米国の男女兵士が、日本防衛のために動き血を流す可能性が制度的に高まったのである。
歴史的経緯:なぜ今回の決議が特別なのか
これまでの経緯を振り返ると、今回の決議の異例さが明確になる。
・1972年:沖縄返還により施政権は日本へ。ただし領有権は中立
・1996年:モンデール発言で安保適用に疑義、日本側が危機感
・同年:キャンベルが「安保対象」と明言し修正
・2010年:クリントン国務長官が明確化
・2014年:オバマ大統領が初めて明言
・トランプ・バイデン両政権も同立場を継承
しかしこれらはすべて「発言」であり、「議会による文書化」ではなかった。
今回の決議は、
・尖閣攻撃=安保発動を明記
・政権交代に左右されない議会文書
・高市訪米と連動した政治的意思表示
・尖閣防衛の制度化
という点で、これまでとは次元が異なる。
結論:日本外交の歴史的成果
今回の米上院決議は、日本外交における比類なき成果である。
日本が自力で防衛できない尖閣について、米国が初めて議会レベルで防衛意思を明文化した。
これは政権交代後も有効であり、抑止力として長期的な意味を持つ。
高市訪米は、単なる外交イベントではない。日米同盟を実質的に一段引き上げた、歴史的転換点である。







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