イラン戦争、果たして停戦できるのか?:アメリカを踏み台にするイスラエル

パキスタンがイラン戦争の和平交渉に乗り出そうとしています。パキスタンもイスラム教シーア派が人口の15%程度占めています。またアメリカとパキスタンの関係も悪くなく、ワシントンのパキスタン大使館内に「イラン利益代表部」があります。イランとアメリカは国交がないので、実質的にアメリカとイランを結ぶ事実上の唯一の政府の出先機関であります。故に仲介するにはその特殊な歴史を踏まえ、その候補として考えられているようです。アプローチとしては悪くはないと思いますが、果たしてパキスタンに取りまとめられるだけの手腕と調整能力があるか、ここが未知数であります。また仲介についてはトルコ、エジプトも手を挙げているようです。

様々な報道を総合的に勘案すると今回の戦争の関係国の三者三様ではないかと思います。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

アメリカはここにきて「この戦争を主導したのは誰か?」という責任回避の動きが若干見て取れます。トランプ氏への戦争責任転嫁が増えてきている中で、トランプ氏がヘグセス国防長官に「お前が先にやるといったよな」と言うなど「俺が主導したのではない」という言い訳をし始めているように感じます。これはトランプ氏の考えが揺れ動いている兆候で、アメリカの腰が引けてきているとも見ています。

私の見方はトランプ政権は当初、この戦いはベネズエラのように短期決戦で終わると考えていた節がかなり強かったと考えています。ところが戦火はより広範に広がり、留まるところを知らない状況になってしまったのです。トランプ氏の判断ミスは将来、当然問われます。そこでトランプ氏の迷いが生じたと同時にアメリカ大統領として本来やるべく内政や外交がおろそかになってしまい、トランプ氏は大統領としての成果の加点どころか就任以来の政策がプラスマイナスゼロ状態になったようなもので焦っているのでしょう。

次にイスラエルですが、私から見ればネタニヤフ氏が最大の策士であることは疑いの余地はありません。氏はイスラエルの立場と自身の権力の座をより強固にするために精力を注ぎこんでいます。イスラエルの強硬派はイランもヒスボラも殲滅させたいわけで、ネタニヤフ氏も自らの地位をより長期化させるには何らかの理由をつけて戦時体制を続けるのがベストなわけです。アメリカの庇護の下、やりたい放題することで自国の戦闘能力をより高め、絶対的な防御網を作ることに今のところ、成功していると言えます。イスラエルはアメリカを踏み台にしてより高飛車で積極的な攻勢にいつでも出てくる体制を維持したいのでしょう。

最後にイランですが、国内世論が割れているうえに、経済的困窮で「解放されたい」人たちがいる一方で、政権は強硬派が主導しており、イラン国内外で一種の闘争が起きているところが収拾がつかない最大の理由であります。強硬派や原理派は政権方針に関わらず別に独自の動きする傾向がある上にイランという要塞のような攻めにくい地形の国家に武器や兵力を分散させることで一網打尽にされにくい戦術をとっています。ただ、一般国民の疲弊感は相当高まっており、国民の忍耐力との戦いになっています。

ここから類推するにイランがアメリカと和平をしなくてはいけないとすれば国民の疲弊感がトリガーになるでしょうが、攻撃停止をしている5日間でまとまる話でもなさそうです。一方でアメリカは4月9日を停戦のターゲットにしているという話も聞こえてきました。とすれば5日間が約20日間に延び、まずはパキスタンの仲介による交渉再開がシナリオになってくるのでしょう。

アメリカは地上部隊投入のための戦力が移動中ですが、5日間の攻撃停止終了時に準備完了になるとされています。地上軍の投入は人的損失リスクが極めて大きくなり、失敗した時のトランプ政権への世論の圧力は相当厳しいものになるでしょう。本気なのか、単なる脅しなのか、あるいは選択肢の一つとして準備しているだけなのか、どれとも言えそうです。

和平交渉ですが、中東のことは中東に聞け、イスラムのことはイスラムに聞け、なので中東周辺国でないと仲介は厳しいと思います。もしもこれが宗教絡みでなければ日本も仲介の可能性はあったと思っています。というのはイランは親日国で、以前ここに記したように「おしん」のイランでの視聴率が90%を超えるほどでした。もちろん日米関係は言うまでもありません。そういう意味では日本は中立的な立場に立てるのですが、イスラムの背景を全く理解していない上に日本が紛争仲介の経験値が極めて乏しい点が悔やまれます。

中国もこの戦争の行方を注視していると思います。というのはイランの体制は中国の体制に似たところがあり、反政府的な動きは徹底的に弾圧し、ヒエラルキー的権力構造の社会を構築してきたわけです。それが今、崩れるかどうか、という瀬戸際にあるわけで、仮にイランの体制変換でもあったならば中国は今後、極めて保守的な行動をとるのではないでしょうか?

停戦交渉が成功するかしないか、どうやら4月の初めが一つの山場になりそうです。私はアメリカとイラン双方が止めたくて、イスラエルが嫌がっている構図を感じています。要注目です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月25日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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