ハンガリー議会選で16年ぶり政権交代:オルバン首相敗北はロシアにダメージ

ハンガリーで12日、国民議会選挙(一院制、定数199)の投開票が行われ、親欧州派の野党、中道右派ティサ(尊重と自由)が議会の3分の2の過半数を超える138議席を獲得し、オルバン首相率いる与党右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」の55議席を大きく引き離し圧勝、同国で16年ぶりの政権交代が実現した。オルバン首相は選挙の敗北を認めた。中央選挙管理委員会によると、投票率はほぼ80%と歴代最高を記録した。

6年ぶりに政権交代を実現したティサ党首のマジャル氏 同氏Xより

ティサ党首のペーテル・マジャル党首(45)は同日夜、「欧州の一員として新しいスタートを切る。我々はオルバン政権を打倒した。ハンガリーを解放し、祖国を取り戻した」と勝利宣言し、「歴史的な統治の信任を得た。我が国は欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の強力な同盟国となる」と述べた。

マジャル党首は2年前までフィデスの議員だったが、2023年に同党と袂を分かった。2024年6月の欧州議会選挙では、ティサは30%の得票率を獲得した。オルバン政権下で汚職、腐敗が拡散し、若い層の有権者を中心に政権の交代を求める声が高まっていた。ちなみに、中央選挙管理委員会によると、フィデスとティサのほか、極右政党「ミ・ハザンク党(「我々の祖国」運動)が得票率5%のハードルを越え、6議席を獲得する見込みだ。

ハンガリー議会選の行方には国際社会の関心が集まった。選挙がハンガリーの未来を決めるからというより、EUのウクライナへの軍事・財政支援や政策決定プロセスに大きな影響を与えるからだ。オルバン首相はEUのウクライナ支援を悉く拒否する一方、ロシアへの制裁に反対してきた。また、反移民政策を標榜し、欧州の政界で右派政党の台頭を後押ししてきた。

オルバン首相は久しく欧州の異端児と呼ばれてきた。また、ハンガリーのトランプとも呼ばれ、トランプ米大統領とは懇意な間柄だ。トランプ氏のフロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」に何度も招かれ、ロシアのプーチン大統領とはクレムリンで首脳会談するなど、米ロ2大国の首脳と友好関係を構築してきた。同首相は2024年7月、欧州議会で独自の会派「欧州の愛国者」(PfE)を創設するなど、その‘オルバン主義‘は欧州の政界では絶大な影響力を有してきた。

選挙戦終盤、守勢が報じられてきたオルバン政党を支援するために、トランプ大統領はバンス副大統領をブタペストに送り、自身は電話で「オルバン首相は私の信頼できる友人だ」と述べ、オルバン政権の継続に期待を寄せてきた。

また、EUのウクライナ支援に反対し、ロシアへの制裁には異議を繰り返してきたオルバン首相の敗北はロシアのプーチン大統領にもダメージを与えることは必至だ。オルバン首相はウクライナに対しEUが昨年12月の首脳会談で決定した今後2年間のウクライナへの融資900億ユーロをストップするなど、ロシア寄りの姿勢を示してきた。ちなみに、ハンガリーのシーヤールトー外相がロシアのラブロフ外相にEU理事会の機密情報を流していた、というスキャンダルが報じられたばかりだ。

マジャル党首は「ハンガリーの民主主義を強化し、立法、行政、司法の三権分立制度を回復する」と約束し、オルバン政権下の親ロシア政策の修正を示唆する一方、ブリュッセルとの関係改善に乗り出す意向を強調した。EUの対ウクライナ支援を支持する一方、移民政策ではオルバン政権のそれを継承するものと予想される。

なお、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は12日夜、「ハンガリーの国民はEUを選択した。ハンガリーでは今、欧州の心がより強く鼓動している」と述べ、親EU派のティアの勝利を歓迎。ドイツのメルツ首相は「強く、安全で、そして何よりも団結した欧州のために、共に協力していくことを楽しみにしている」と投稿した。イタリアのメローニ首相はマジャル氏を祝福する一方、友人のオルバン氏に感謝し「彼が野党の立場からでも、引き続きハンガリーのために努力することを確信する」と述べている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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