日経の記事に「首都圏の定借マンション、供給2.7倍 2025年 地価上昇で用地取得難しく 好立地、若年層が注目」とあります。定借マンション、つまり定期借地権付きマンションはお得なのか、考えてみたいと思います。

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そもそも定期借地権という言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、なじみがない方も多いと思います。まず、通常の借地権とどう違うのでしょうか?
通常の借地権は地主との契約次第で契約更改が可能でそれこそ借地人は永久にそこに住めるとも言われるほど借主が強い立場にあります。覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、私が東京で展開する賃貸住宅事業のうち借地権物件が2つあります。不動産屋には「物件があれば借地はウェルカム」と申し上げています。なぜなら事業者としてはその土地から収益を生めばよいのです。借地権の場合、土地代は実勢の半額程度で取得でき、賃料は電気代に毛が生えた程度です。一方、土地にかかる固定資産税は大家が持つので実態としては地代が固定資産税ぐらいになると考えてよいかと思います。
では定期借地権です。これは上記の通常の借地権と全く別物と考えてもらって結構です。まず、法律が1992年に施行された比較的新しい発想です。そしてその法律の文言は「存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、次に掲げる事項を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。更新がないこと。建物の築造による存続期間の延長がないこと。第十三条の規定による建物の買取りの請求をしないこと。」となっています。
以上により「3なし法律」とも言われています。日経の記事では定借期間70年程度のものを紹介しています。なぜ70年か、と言えば今の建設技術からすれば70年は健全な状態で建物を維持できるという発想があります。では定借期間の70年後はどうなるか、と言えば一応は取り壊すことが前提になっており、マンションの住民は解体料を毎年積み上げていく仕組みになっています。
ではこの「3なし法律」はその通りになるか、と言えば私は相当怪しいとみています。1992年にできた法律なのでそもそも一番古い建物でも計算上34年しかたっておらず、実際には96年頃から供給が始まっていますのでまだ30年がたったところであります。
まず地主が個人である場合、70年後はほぼ100%相続されています。その際に相続人が相続税を払えるかどうか、という問題があります。払えなければ借地権を売却するわけですが、マンションが建っている借地権を取得したい人はあまりいないと思います。仮に残存期間が10年程度になれば話は別でデベロッパーが街の不動産屋に土地を抱かせる(自社で持たず、取引会社に持たせること)ことで期間満了後の再開発はあるでしょう。残存期間が長い場合に地主が借地権を売却したい場合、マンションの管理組合に土地取得を打診すると思います。その際、積み上げた解体費用を頭金にして銀行のローンを組むという方法はあり得ると思います。
次に定借満了後に契約更改はない、とあります。ならば新規に契約すればよいだけでしょう。あるいは取り壊す代わりに地主に有償/無償で建物を譲渡することも可能です。取り壊すのが前提と言う法律の文言をそのまま受け止める必要は全くなく、その気になればいくらでも知恵は出てくるものです。
では定借付きマンションはお得か、と言えば所有する側のメリットが何か次第です。例えば10年住んで引っ越すつもりでその間値上がりすればよい、と考えるなら定借物件の値上がり期待はほぼないと思ってよいでしょう。これは中古を購入する側の住宅ローンがつきにくくなるという問題をはらむこととメンタル的に土地建物の区分所有権にならない制約が需要を抑えるのです。
実を言うと中国で住宅不況になっていますが、その理由は中国は個人による土地所有が認められてないことも一つの重要なファクターで、マンションは70年リースのようなものです。もしも中国が真剣に不動産問題から解放されたいならこの所有できない70年問題を緩和、ないし、撤廃すれば確実に不動産事情は変わります。
これと同じで日本の定借は住むところを自分の余生分までは確保できているという安心感以外の何物でもなく、支払う建物代、例えば7000万円だとすれば一年で均等割り付けで家賃100万円、月に直せば83000円を払っているようなものと割り切るべきなのでしょう。
いかんせん法律ができたのがバブル崩壊直後、つまりまだまだ不動産価格が高値乱舞していた頃に検討されてできた法律だけに不動産価格を少しでも抑えられる庶民の味方的な発想であったとしても過言ではないと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月16日の記事より転載させていただきました。






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