自民党大会の自衛隊政治利用、一番悪いのは幹事長

自民党大会で陸自の歌手が制服で歌った件ですが、一番悪いのは自民党幹事長です。
そもそもいままではこんな胡乱なことはやっていなかった。
それは自民党にもそんなことをすれば政治利用だとわかっていたからです。

鈴木俊一幹事長 自民党HPより

今回こんなことをやったのは幹事長以下、自民党執行部が自衛隊利用して何が悪い、うちの奉公人やないか、というおごりがあったからです。

いやしくも与党が「国軍」を自党の「戦意高揚」ために道具として使ったわけです。これが中国共産党が人民解放軍を使うのであれば問題はない。解放軍は党の軍隊だからです。ところが自民党の執行部は自衛隊は党の軍隊だと思って言わけで、法治の意味でも問題だし、政党としての常識すら持っていなかった。

つまり自民党に文民統制を担う与党としての当事者能力がなかったということです。

国歌の歌唱「別の判断あり得た」 小泉防衛相、自身に報告あれば

小泉進次郎防衛相は17日の記者会見で、陸上自衛官が自民党大会で国歌を歌唱したことについて、自身へ出席に関する情報が上がっていれば「別の判断もあり得た」と述べた。一般論として自衛官の政党行事への参加は個別具体的に判断されるとし、出席を止める可能性があったとの認識を示した。

おいおい。防衛線を下げてきたな。

小泉大臣はXの投稿で鶫3曹とがっちり手を握り合った写真使って「今日は一年に一度の自民党大会。全国から党員らが結集する自民党にとって重要な場で国歌斉唱の大役を担ってくれたのが、陸上自衛隊の鶫真衣(つぐみ・まい)さん。凛とした君が代が大会場に沁み渡りました。鶫さんをはじめ自衛隊の音楽隊を誇りに思います。ありがとうございました!」と述べており、個人だろうが自衛官としてだろうが制服を着用して「自衛隊の音楽隊の一員」として歌唱することに全く疑問をもっていなかったわけです。

つまり党大会という政党の一大イベントで制服の隊員に歌わせても問題ない、政治利用にはあたらないと思っていた。そもそも政治利用という意識すらなかったのではないか。
これが自衛隊の政治的中立を大きく損なうとは思っていなかった。
その意識があれば式次第を見た段階で違和感を感じて何らかの手を打ったのではないか。

陸幕長も事前に知っていたわけです。つまり幕僚長は「私人扱い」であれば制服を着て与党の党大会という極めて政治色の強いイベントで隊員が歌っても何ら問題はないと思っていたということです。まともな軍政関係の教養があればこんな胡乱なことは許可しないでしょう。確かに政治から頼まれれば「できません」と言えない傾向が自衛隊にあります。
だから装備導入などでもできないのに「できます」と言って後で痛い目にあう。
これは南スーダンで派遣部隊の日報がないと断言したのと同じ構図です。政治にないよね?といわれて「ありません!」といっちゃった。結果は防衛相、陸幕長が枕を揃えて討ち死にでした。

陸幕長には自衛隊が政治から中立でなければならないという意識が極めて希薄だったわけです。確かに断れば自民党からにらまれるでしょう。ですが断るのが陸自の最高責任者として責務でしょう。どうせ統幕長にはなれないのですし。
こういう法感覚のまるで旧軍の「陸式」みたいな意識で陸自を率いているのは大変問題だと思います。
さら申せば、先日の充足率がいくら落ちようと、課業中の銃剣道はやめないと断言したことです。戦争に負けても銃剣道をやめないというのは幕僚長として合理的な判断がでないということであり、将としての見識に疑いをもたれると思います。

また鶫3軍曹に対しても疑惑が生じてきます。「縁もゆかりもないイベント業者」のためにノーギャラで、交通費や美容院の費用を持ち出して出演する理由は普通ありません。
更に申せば、これは営利会社、あるいは政党に対する役務の提供であり、公務員としてはやってはいけないことです。入隊したばかりの若者ならともかく、40に近いいい大人です。それがわからなかったわけではないでしょう。

しかも彼女は日本会議関連のイベントにも出演していた。これも極めて政治色が強い、ある意味極右と言っていい団体です。彼女は同様にノーギャラでていたわけでしょう。

これらの事実をみるに、何らかの組織的な関与があったのではないか。例えば音楽隊の上層部。中央音楽隊の副隊長が私服で党大会に招かれていました。
普通の党員では招待もされない、イベントにどのような肩書で招待されたのか。まさか「私人の普通のおじさん」という肩書ではないでしょう。小泉大臣は自衛官には制服着用の義務があるといっていましたが、私服で参加です。おかしくないですか?

現場では鶫3軍曹に何の指導もしていないとことですが、彼の参加をみれば日本会議のいイベントからの流れをみれば中央音楽隊の組織的な関与が疑われます。またあるいは外部のフィクサーがいるのかもしれません。仮に鶫3軍曹にそのような政治嗜好があったのであれば、退官後には自民党からの立候補という「報酬」が待っていたのかもしれません。
美人の自衛官で歌のプロ、しかも顔は売れている。議員候補として自民党にとっても魅力があるでしょう。そうだというつもりはありませんが、そのようなことも疑われて仕方ない状況ではあります。
鈴木幹事長、小泉大臣、荒井幕僚長は辞任すべきだと思ます。また併せて今回の件で外部の調査委員会を立ち上げて、事実関係を明らかにすべきだと思います。

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防衛破綻 – 清谷 信一


専守防衛 – 清谷 信一


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2026年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    正直なところ、この一連の論の立て方を読んで「また不条理な叩きか」と思える部分があります。

    過去の安倍いじめ、高市いじめの流れを振り返ると、些末な事象を針小棒大に膨らませ、証拠のない疑惑を「疑惑は深まった」という便利な言い回しで積み上げていく手法が、今回も再利用されているように見えます。美人女性自衛官の経歴に「日本会議」「極右」「立候補という報酬が待っていたかもしれない」と、憶測を重ねて人物攻撃に走る筆致は、冷静な軍政論ではなく、もはやいじめです。

    もし筆者が本気で「与党と軍の距離感」を問題視するのであれば、次の二つを同じ熱量でやってもらえばよいだけの話です。

    一つ目。与党と軍の距離感を問題視しするのなら、まずは「党の軍隊」である中国に対して同じ熱量で叩くと宣言し、実行してもらいたいものです。自衛隊の歌唱一件で陸幕長の辞任を求める熱量の半分でいいので、中国を同じ筆致で叩いてほしい。

    二つ目。「与党が軍を自分の持ち物扱いした」という論点を立てるのであれば、立憲民主党が、党大会・地方の党イベント・支援組織の行事に公務員に手伝ってもらった事例が出てきたときに、同じ熱量で「公務員は党の持ち物ではない。幹事長辞任、委員長辞任、外部調査委員会設置だ」と同じように騒ぐと宣言してほしい。

    ところが実際にはそうならない。毎回ブーメランを盛大に投げておきながら、自分の側に返ってくるとこそこそと論点をずらし、「あれは事情が違う」と逃げてごまかす。この繰り返しを何度も見てきたからこそ、今回の「幹事長・大臣・陸幕長そろって辞任せよ、組織的関与だ、フィクサーかもしれない、立候補の報酬かもしれない」という盛りに盛った主張も、「ああ、またいじめがはじまったか」としか読めないのです。

    問題提起そのものを否定するつもりはありません。制服自衛官が与党の党大会で国歌を歌うことの是非は、本来、冷静に論じる価値のあるテーマです。しかし、それを論じたいのなら、推測に基づく人物攻撃と、野党・中国には決して向かない「片側通行の熱量」を、まず自分で点検してその結果を公表してほしい。そこが直らない限り、この種の論評は「正しい指摘」ではなく「いつものいじめ」として終わるだけだと思います。