投資においては、常に、長期投資、即ち、長期の視点で投資の重要性がいわれる。確かに、投資の代表である資産形成、即ち、豊かな老後生活のための原資の形成においては、非常に長期におよぶ積立投資として、短期的な投資対象の価格変動に一喜一憂することなく、遠い未来だけを見つめていればいいわけだ。
しかし、老後生活が始まった後の資産の取り崩しは、決して、長期の視点ではなし得ない。自分の余命を知っているのなら、余命で保有資産額を除した金額を毎年取り崩せばよく、長期の視点で管理できるかもしれないが、誰も自分の余命を知り得ないのである。

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また、自宅の修繕費や医療費など、様々な老後生活の都合で生じ得る資金需要によって、資産の取り崩しを余儀なくされることもあり得るし、こうした不時の資金需要は、資産形成中の勤労層についても、様々な生活上の問題によって生じ得る。このとき、資産価格が下落していれば、不利な売却になってしまう。
さて、金融とは、そもそも、不時の資金需要に応えるものではなかったか。融資は、まさしく、不時の資金需要に対して、資金を融通するから、融資なのである。ならば、金融機関としては、一定の掛目をとって保有資産の枠内で融資することは可能なはずである。
真に顧客本位な金融機能の提供とは、資産形成の道具としての投資信託の販売、保険やローンの営業というような個別の問題なのではなく、それらを総合し、家計の資金の余剰と不足を適時適宜に調整するものでなければならないであろう。しかし、金融機関の現状では、そうした高度な提供形態は実現していない。
実は、最近まで、投資が普及せず、預金が選好されてきたのは、不時の支出に備えるためではないか。元本保証されている預金は、価格下落の危険がなく、不時の支出に備えるには最適な資産なのである。おそらくは、高齢者層において預金の保有が多いのは、そうした背景があるからである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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