4月の日銀の金融政策決定会合は9人の投票者のうち、3人が利上げを支持し、6人が現状維持という意見となりました。通常、日銀のこの会合は足並みがそろうか、せいぜい1人か2人しか反対しないのに3人反対のケースはなく、日銀内部でも難しい判断だったことを伺わせます。

会見する植田日銀総裁
今回の金融政策には3つの決定要素があったと考えています。経済ファンダメンタルズ、地政学的要因、政治的配慮であります。これが各委員の内面で激しく葛藤を起こしたのではないかとみています。
まず、経済だけを見れば利上げは支持される考えています。まず、景気の強さを図る指標の一つに需給ギャップがあります。これはひと昔前はずっと需要不足、つまり作る側は「幾らでもお売りします」だけど買う側は「安ければ買うよ」状態でした。これがプラスに転じた、つまり、需要の方が強くなり、「そんなに欲しいといわれてもねぇ」に変わったわけです。
需給ギャップは日銀と内閣府がそれぞれ別の手法により計算し、それぞれが発表してます。ややっこしいですね。その計算方法はかなり専門的になるので説明は省きますが、結論からすると日銀手法の需給ギャップの方がプラスに出やすく、内閣府の数字は渋くなりやすいですが、数字のぶれが大きいのも内閣府の数字であります。
このいわくつきの需給ギャップですが、日銀の発表は22年1-3月期から今日まで16期連続プラスです。一方、内閣府の方は25年通年で0.3%プラスですが、24年通年はマイナスで各四半期数字もゼロ付近を這うような感じです。ただ、直近の数字だけを見れば日銀も内閣府もプラスであり、利上げは支持される内容です。
3月の消費者物価指数は総合1.5%、コア1.8%でしたが、4月以降しっかり上昇してくるのは確実であり、2-3か月のうちに統計指数は2%を超えてくるのが予見されます。また原油価格もアメリカとイランの交渉が暗礁に乗り上げている感じが見える一方、ホルムズ海峡が開放されれば原油問題は解消に向かうわけでここは全く読めないところであります。私が世界の中銀は政策判断を見送るであろう、と先月あたりから指摘しているのはこれが最も大きな、そして読めない点であります。
ただ、考え方としては戦争は何時かは終わるという一時的な問題だと割り切った場合、原油価格の正常化にはホルムズ海峡開放後たぶん数か月かかると思われ、夏の需要が多い時期に向かう中で少なくとも夏の終わりまでは厳しい原油相場となるとみています。当然ながら物価は上昇バイアスなので悪い物価上昇であったとしてもここは利上げが正しいのでしょう。
ではもう一つ、政治的配慮とは何でしょうか?政治家は誰も「金利は低い方が良い」と考えています。支持者からの強い要望です。現政権も同じです。トランプ氏だって吠えています。ただ個人的解釈を述べると90年代から始まった超低金利政策こそが日本をダメにしたと思っています。「大き過ぎてつぶせない」という中途半端な政策を続けたことで生煮え状態を作り、国民はぬるま湯から出られなくなったのであります。とすればこんな日本に誰がした、と言えばそれを代弁した政治家とその片棒を担いだ日銀だろうな、と思うわけです。
今の為替水準と日本経済は当然リンクしています。人口減の日本だからしょうがないのではなく、かつて世界を圧倒したMade In Japanの陰が薄くなり、日本から世界をリードする商品が出てこないのが今の為替と日本経済の立ち位置の理由です。何故か、といえば日本全体にパッションも想像力も改革力もなくなり、中韓との激しい競合にも真っ向から戦わず、勝負を避けるように「日本には〇〇があるさ」というやり方をしてきたのです。
とすれば今の需給ギャップなど統計的数字だけを見れば利上げは支持できるのですが、ここから先、日本の基礎体力が奪われるリスクを多少勘案しなくてはいけないのでしょう。ここで日本経済を内需主導ではなく、世界で稼ぐ日本にできなければアルゼンチン化する可能性を否定するものではありません。実際には多くの日本企業は既に世界でだいぶ稼いでいるのですが、そのお金が現地や他国での再投資に回ったり、現地で滞留したりしており、日本経済の循環の役割を十分に果たせないのです。
となれば、今日明日のことではありませんが、日本が輸入に頼りすぎて財政もさらに悪化すれば為替が暴落し、為替防衛のために金利が5%とか10%になる日だってないとは限らないのです。経済の三本柱である政府部門、個人の家計部門そして企業部門が互いにリンクしあうというのが経済学の基本ですが、企業部門のリンクがうまくかみ合わなくなってきているためにこの大原則が崩れるのではないかという仮説を考えています。
そういう意味でも私は日銀の政策はより実務的なものであり、政府、及び経済産業省こそが日本リバイバルプランを打ち出し、日本のファンダメンタルズを強化してこそ、真の意味での利上げに踏み込めるのだろうな、と思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月29日の記事より転載させていただきました。







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