北米時間の4月29日の円ドル相場は160円台に突入し、更に円安に向かっている状態でした。為替相場は3月半ばから160円手前で比較的レンジの狭い動きに終始していたのですが、ポッと下抜けした感じがしたのです。円が売られる理由はいくつかの組み合わせの理由になります。
まず、為替相場には思惑による売買を好むFXを含む投機家、実需、中長期的な視野に立った投資家の3つのグループがそれぞれどういう動きをするか次第になります。これを推し計るのに重要なレイヤーとなるのが日米金利差であります。
今週、日銀もFRBも事前予想通り金利を据え置きました。しかし、中身を見ると日銀は以前から利上げバイアスにあるのですが、昨日のパウエル氏の最後の記者会見を見ていると19人の政策委員に利上げを支持する人が少なからずいると言葉の端々から聞こえてきました。次期総裁のウォーシュ氏はトランプ氏の子飼いかもしれませんが、今はトランプ氏が撒いたインフレ要因で利下げできる環境にはありません。とすれば日米の金利差は縮まる見込みは少なく、円が売られ、キャリートレードに利用されることになります。これが円を売る動きのベースにあるレイヤーです。
次に高市氏の緩和的財政姿勢であります。財政が緩和的だと日本の将来がヤバいという安直で短絡的な議論をよく目にするのですが、議論の焦点はそんなところにはありません。財政を大量の国債発行で補い続けているバイアスが為替相場と同期しやすいということです。
例えば25年度の財政は一時期プライマリーバランス(PB)が黒字化する見込みだったものを積極財政で赤字にしており、26年度も怪しい状況にあります。PBをどう重視するかは学術的、実務的、思惑的にそれぞれが勝手な解釈をするのですが世界基準で言えば日本は対GDP比が悪いのだから改善する姿勢を見せるのは円を長期的に買いたくなるシグナルになるし、海外投資家が日本株に投資する観点ならば5年後にもっと円高になっていれば為替分も得するダブルゲインになるのです。
このような背景の中で昨夜、財務省が為替介入をしました。振れ幅は約5円。実はその前に片山財務大臣と三村財務官が「これは最後の退避勧告」と述べていた中での介入です。個人的にはあと1-2回、ジャブを入れてくる気はします。中銀ウィークが終わり、日本はゴールデンウィークという最中で市場参加者が減る時期を狙ったとも言えます。ただし5月2日から6日まで片山、三村両氏はウズベキスタンに出張があります。正直タイミングを見計らった第2弾は打ちにくいところではあります。

片山さつき財務大臣
次いで私がやや懐疑的なのはドルの実需がある点です。特に原油のスポット買いであります。アメリカやメキシコなどで買い付けているのはたぶんスポット。それに伴うドルによる支払い需要があるし、基本的には全般にドル需要は当面高いとみています。よって足元を見透かした投機筋が逆に円売り攻勢をかけてきてもおかしくないし、そもそも高市氏が「行き過ぎた円安は許さない」といった明白なステートメントを出さない限り円安の方向性は変わらないだろうとみています。
ところでこのところ高市氏が「無口」になっており、発信量が少なく、明日からはベトナム、オーストラリア外遊です。個人的な不満を申し上げさせてもらえれば、あまりにも発信力がなさすぎで国民との対話をないがしろにしているように感じます。明らかに首相就任前の高市氏の性格とは変わってしまっています。むしろ心配になります。
今回の財務省の介入、一言で言えば「160円の攻防を抜けてしまっては歴史的事象となり、財務大臣と財務官のキャリアに傷がつくからそれだけは守ろうね」ではないかと思います。介入すれば外為特会が儲かるし、その利益で国の借金返済の足しにする、ぐらいではないかと思います。ただ、日本の国家体質が変わらない限り、いつかはこの160円の壁はぶち抜かれることになるとは思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月1日の記事より転載させていただきました。







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