Trip.comの「許可番号不一致」問題:空白を突いた構造的欺瞞

NORIMA/iStock

前回、Trip.comで予約した浅草の宿泊施設をめぐり、掲載された旅館業許可番号が台東区の公開情報上、まったく別の施設に発行されたものであることが判明した経緯を報告した。

Trip.comの「虚偽販売」と行政調査で判明した許可番号の不一致
旅行予約サイトを使ったことがある人なら、一度は感じたことがあるだろう。「この施設、本当に存在するのか」という漠然とした不安を。私はその不安が現実になった。単なるトラブルでは終わらない問題が、そこには見えてきた。予約した施設と連絡が取れない事...

Trip.comは行政記録と一致しない情報で施設を販売しながら、返金を拒否したまま「第三者機関へどうぞ」と対話を打ち切った。

その後、問題はさらに深刻な展開を見せた。今回はその全容を報告する。

チャージバックという「最後の砦」

Trip.comとの交渉が完全に行き詰まったため、決済に使用したビューカード(JR東日本ビューカード)にチャージバックを申請した。

チャージバックとは、VISAやMasterなどの国際カードブランドが定める規則に基づき、カード会社が加盟店から強制的に代金を回収する手続きだ。加盟店側の同意は不要であり、消費者が不正または不当な取引に遭遇した際に行使できる権利として国際的に認められている。一般には「消費者保護の最後の砦」とも呼ばれる制度だ。

申請の根拠は明確だった。掲載された旅館業許可番号が、販売された施設とは異なる別施設に発行されたものであることが台東区の公開情報で確認されている。施設名、電話番号、管理会社の情報も行政記録と一致しない。施設からの連絡は予約以降一度もない。これらの事実は、販売時の表示内容と実態との間に重大な乖離があることを示している。

カード会社の回答——「施設が存在するから」

ビューカードのカスタマーセンター担当者(緒方氏)の回答は「受付できない」というものだった。その理由は驚くべきものだった。「施設が存在するから」。

この一言に、今回の問題の核心が凝縮されている。

担当者が述べた「施設が存在する」という根拠は何か。Trip.comが掲載した情報そのものだ。つまりカード会社は、問題の所在であるTrip.comの掲載情報を根拠に、チャージバック申請を却下したことになる。

本件の争点は「施設が存在するかどうか」ではない。「Trip.comが販売時に提示した施設名・電話番号・旅館業許可番号が、行政の公開情報と何一つ一致しない」という事実だ。この照合は台東区の公開データベースで誰でも検証できる。

担当者がこの区別を理解していなかったのか、あるいは理解した上で受け付けなかったのか。いずれにせよ、「施設が存在するから」という一言で片付けられる問題ではない。

「チェックインできなくても責任は取れない」という発言

さらに私は担当者に確認した。「チェックイン当日、何らかの理由で入れなかった場合、ビューカードとして責任を取ってくれるのか」と。

答えはこうだった。「責任は取れない。それはTrip.comとの問題だ」。

消費者保護の観点から、この発言の意味を整理しておきたい。ビューカードは今回の取引の決済を仲介した当事者だ。加盟店であるTrip.comとの取引において問題が生じた場合、カード会社には加盟店管理の観点から一定の関与が求められる。にもかかわらず、チャージバックを拒否した上で、チェックイン不能になっても責任を負わないと明言した。

「問題はTrip.comとの間にある」とカード会社は言う。しかしそのTrip.comは「第三者機関へどうぞ」と言った。消費者は二重の壁の前に立たされている。

なお私が「この対応を世論に問う」と伝えると、担当者は「我々は録音しています」と答えた。消費者が正当な異議を申し立てた際に録音の存在を告げることが、どのような意図に基づくのか。読者の判断に委ねたい。

「三者の無責任連鎖」という構造

今回の一件で浮かび上がってきたのは、個別のトラブルにとどまらない構造的な問題だ。

Trip.comのようなOTA(オンライン旅行代理店)は「情報の仲介者」として施設を掲載・販売する。しかしその情報の正確性について、誰がどのように責任を負うのかが制度的に曖昧なままになっている。特に海外に本拠を置くプラットフォームの場合、日本の行政機関が直接指導できる範囲には限界がある。

カード会社は本来、チャージバック制度を通じて消費者保護の一翼を担う存在だ。しかし今回のように「施設が存在するから」という表面的な理由で申請を拒否するならば、制度が実質的に機能しているとは言えない。

旅館業許可番号は、消費者が施設の正当性を確認するための公式情報として法制度が整備したものだ。その番号が別施設のものであっても誰も責任を問われず、返金も認められないとすれば、消費者保護制度そのものが空洞化する。

Trip.comは「第三者機関へ」と言い、カード会社は「Trip.comとの問題だ」と言う。行政は海外事業者への直接介入に限界がある。この三者の間で、消費者の権利は宙に浮いている。それが現実だ。

チェックイン予定日まで、まだ時間がある。私はこの日に実際に現地を訪れる予定だ。

施設からの連絡は今も一切ない。行政記録と一致しない情報のまま予約が「継続」されている。この状態でチェックインを迎えることに、消費者として納得する理由はない。

チェックインできなかった場合、「サービスが提供されなかった」という最も明確な事実が生まれる。その時点で改めてカード会社への申請を行う。カード会社が今度もチャージバックを拒否するのか。その結果を含め、第三報として報告する。

Trip.com、そしてビューカードには、消費者に対する誠実かつ具体的な説明が求められる局面にある。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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