Trip.comの「虚偽販売」と行政調査で判明した許可番号の不一致

旅行予約サイトを使ったことがある人なら、一度は感じたことがあるだろう。「この施設、本当に存在するのか」という漠然とした不安を。

私はその不安が現実になった。単なるトラブルでは終わらない問題が、そこには見えてきた。

予約した施設と連絡が取れない

事の発端は、Trip.comで浅草のホテルを予約したことだ。予約確定後、施設に連絡を試みた。しかし何度メールを送っても返答がない。

掲載情報を改めて確認して、複数の違和感に気づいた。整理すると以下の通りだ。

  • 住所に「台東区」の重複表記がある
  • 連絡先は携帯番号のみで、常設施設の連絡手段として不自然だ
  • 旅館業法上の許可番号がページのどこにも記載されていない

許可番号は、消費者が「実在する正規施設かどうか」を確認できる唯一の公式情報である。その記載がない時点で、すでに重大な問題がある。

Trip.comにキャンセルと返金を申請した。しかし返ってきたのは「施設からの回答がないため確認中。基本的には規約通り返金不可」という対応だった。

Trip.comとの交渉と並行して、台東区保健所生活衛生課に電話照会を行った。担当者による調査の結果、以下の事実が確認された。

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出は存在しない。旅館業としての登録は確認されたが、施設の電話番号は行政も開示できない性質のものだという。管理会社として確認されたのは池袋に所在する不動産会社であり、Trip.comが掲載していた電話番号とは異なる。

この時点で、掲載情報と行政記録との間に複数の不一致が存在することが明らかになった。

さらに、交渉が進む中で、Trip.comの担当者は旅館業許可番号を提示し、「正規の許可を取得した施設である」と説明してきた。住所の重複表記については「誤植」と認め、3,740円相当のTrip Coinsによる補償を提示したが、返金には応じない姿勢を変えなかった。

提示された許可番号を台東区の公開情報で照合した。番号自体は実在した。しかし、その登録内容はTrip.comが販売していた施設名とも、掲載電話番号とも、行政が確認した管理会社とも、何一つ一致しなかった。

異なる施設に発行された許可番号が、なぜ今回の販売施設の情報として掲載されていたのか。Trip.comに対して複数回確認を求めたが、明確な説明は得られなかった。Trip.comが意図的であったかどうかはわからないが、結果として消費者に重大な誤認を招く表示であったことは否定できない。

「第三者機関へどうぞ」という回答

この不一致を指摘したところ、Trip.comからは「販売時の名称についてご不満でしたら、第三者機関にご連絡くださいませ」という回答が届いた。事実上の対話打ち切りである。

現在、クレジットカード会社へのチャージバック申請を行い、調査結果を待っている。その間も「予約は継続される」という自動メールがTrip.comから届いている。

本件を単なる返金トラブルとして見ることはできない。問題は四点に整理できる。

第一に、掲載情報の正確性の問題だ。 Trip.comは施設を掲載・販売するにあたり、住所表記の正確性、連絡手段の妥当性、法令上の許可番号の確認といった基本的な審査を行う義務があると解される。複数の異常が重なったまま販売が行われたことは、この義務の履行に疑問を生じさせる。

第二に、許可番号の誤提示の問題だ。 Trip.comが提示した許可番号は、台東区の公開情報上、別施設に発行されたものであることが確認されている。消費者がこの番号を信じて安心したとすれば、それは誤認誘導に他ならない。

第三に、返金拒否の根拠の問題だ。 消費者契約法第10条は、事業者が基本的義務を履行しない場合にまで「返金不可条項」を機械的に適用することには疑問が残るとされている。施設側の応答義務が果たされておらず、掲載情報の正確性にも疑義がある状況での条項適用は、そのまま認めることには無理がある。

第四に、交渉打ち切りの問題だ。 「第三者機関へどうぞ」という一言で対話を終えることは、仲介業者としての誠実対応義務に反すると言わざるを得ない。

旅行予約サイトを使う前に確認できること

今回の経験から、旅行予約サイトを利用する際に事前確認できる点をまとめておきたい。

旅館業の許可番号は、各都道府県・区市町村の保健所が公開しているデータベースで照合できる場合がある。東京都台東区の場合は区のウェブサイト上で公開情報として確認できた。予約前に施設名や住所で検索してみることを勧めたい。

連絡先が携帯番号のみの場合や、住所表記に不自然な点がある場合は、予約確定前に施設へ直接問い合わせることが有効だ。応答がない、あるいは応答が遅い場合は慎重に判断すべきだろう。

万一トラブルになった場合、クレジットカードのチャージバック制度は有効な手段の一つだ。ただし申請には一定の期限がある場合があるため、早めにカード会社に相談することをお勧めする。国民生活センター越境消費者センター(CCJ)は、Trip.comのような海外事業者とのトラブルを専門に扱う公的窓口でもある。

旅行予約プラットフォームが掲載情報の正確性を十分に担保しない構造的な問題が存在する以上、消費者自身が一定のリテラシーを持って利用することが現実的な対策となる。そしてOTAが許可番号を正確に扱わない状況が常態化するならば、消費者保護のために設けられた法制度そのものが空洞化しかねない。

Trip.comはこの問題についての説明責任が問われる局面にある。引き続き注視したい。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

23冊目の本を出版しました。日本初のClaude実用書です。

3時間で身につくClaude活用術』(WAVE出版)

 

 

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント