美味しい養殖サーモンは「わかる事業」を考え抜いた結果だった

pain au chocolat/iStock

我が家の主食は、魚です。

いつも近所にあるデパ地下の魚売り場で魚を買っています。

数年前までは、脂が乗りこってりしていて旨いノルウェーサーモンが我が家のお気に入りでしたが、コロナ禍をきっかけにノルウェーからの輸入が滞るようになり、入手できないことが増えました。

困っていたところで数年前から魚売り場に並び始めたのが、青森産の養殖サーモン。味はノルウェーサーモンと比べても、全く見劣りしません。

そんなわけで、最近我が家でよく食べるのは青森産の養殖サーモンです。

この青森産養殖サーモンで急成長する会社が、オカムラ食品工業です。

同社の国内養殖サーモン生産量は、2019年は550トンでしたが、2025年は3,476トンと急拡大。いまや国内でトップクラスの生産量です。2030年は12,000トンを目標に掲げています。

もともと同社が水産加工で創業したのは1971年。

そして2000年代に転機がやってきました。中国などで需要が拡大して海産物の価格が高騰し、日本は買い負け始めたのです。

原料が確保できなければ、水産加工ビジネスは継続できません。

そこで同社は、2005年に長年取引を続けてきたデンマークのサーモン養殖会社ムソンを買収。サーモンの卵から加工までのノウハウを日本に導入し、2017年から青森で養殖を始めたのです。

日本は食料自給率が低いですし、食料の品質管理も重要になっています。

きっちり管理して養殖された美味しいサーモンが食べられる事は、日本にとっても消費者にとっても重要です。

一方で、水産物は劣化が激しい商品です。我が家も魚を買う時に賞味期限をチェックしますが、鮮度はたいてい2-3日です。

養殖だけやっていては、こうした鮮度管理はできません。

そこでオカムラ食品工業は、養殖から加工・販売まで一貫して手掛けています。養殖・調達・国内外での加工・販売(卸売)を一気通貫で行う垂直型統合ビジネスモデルなのです。ユニクロのSPAモデルと同じです。

さらに海外事業も拡大しています。

こうした同社から学べることは色々とあります。

【危機は、大きなチャンスになる】
同社のサーモン養殖は、2000年代に中国などの新興国に海産物で買い負け始めたのがきっかけでした。危機は、新たな変革に踏み切るチャンスになるのです

【強みをじっくり積み上げる】
同社は時間をかけて強みを積み上げてきました。

  • 1971年の創業以来、青森で水産加工に携わり、海産物を熟知しています
  • 1991年、デンマークのムソンからサーモンの冷凍卵原料の提供を受けて醤油筋子を作ることに成功しました
  • 1992年に青森県内に直営店舗をオープンし、高品質な水産加工品を地元の一般消費者に販売を始めました
  • 2005年、ムソンを子会社化して、サーモン養殖ノウハウを入手しました
  • 2017年、青森県がサーモン養殖に適した環境だと確信して、養殖事業を始めました

こうして積み上げた強みが全て相乗効果を生み出しています。ポーターが提唱する「活動システム」を作り上げています。

【ミッションから現場の業務までが首尾一貫している】
同社のミッションは次の通りです。

「海の恵みを絶やすことなく、世界中の人々に届け続ける」

このミッションのために、6つのValueも決めています。

・持続可能であること
・顧客に寄り添うこと
・感謝と謙虚を忘れないこと
・チーム力を大切にすること
・地域と共存していくこと
・世界のマーケットを支えること

トップレベルのミッションから、ビジネス行動を規定するValue、現場の実務、さらに消費者に届ける価値まで、首尾一貫していることがわかります。

ちなみに同社の業績は次の通りで、売上成長を続けています。

2022年 売上 241億円 営業利益 30億円
2023年 売上 289億円 営業利益 32億円
2024年 売上 327億円 営業利益 25億円
2025年 売上 353億円 営業利益 30億円
2030年 目標 売上620億円 営業利益72億円

同社は「国内養殖事業はまだ黎明期」と認識しています。

そこで成長のボトルネックとなる中間養殖場への投資を拡大する一方、海外事業を成長させるために、海外人材の育成/採用、拠点拡大などを推進中です。

こんなオカムラ食品工業の取り組みを理解する上で参考になるのが、経産省で経済産業政策局長などを務められた新原浩朗さんの著書『日本の優秀企業研究』です。

新原さんは、日本の優秀企業について次のようにまとめています。

「自分たちが分かる事業を、やたら広げずに、
愚直に、真面目に、自分たちの頭できちんと考え抜き、
情熱をもって取り組んでいる企業」

まさに同社の取り組みを表現していると思います。

【参考資料】
・『中期経営目標2030』オカムラ食品工業
・『統合報告書2025』オカムラ食品工業
オカムラ食品工業ホームページ”Mission/Value” 
・週刊東洋経済 2026.5.2-9号 p.50-51


編集部より:この記事はマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏のオフィシャルサイト(2026年4月28日のエントリー)より転載させていただきました。永井孝尚氏のメルマガのご登録はこちらから。

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