
大病をしてしまいお知らせが遅れましたが、今月刊の『潮』6月号にも連載「平成の回廊 創価学会と日本社会」が掲載。いつもどおり、同誌のWebサービスでも無料登録で全文が読めます。
この連載は、始まったときから大変なことになっていて、創価学会や(旧)公明党のみなさんと、むしろそのアンチサイドに近い人たちとがどちらも同じ熱量で読んでくださるので、反応を通して書いた方にも発見がある。
たとえば前回(4月号)は、幸い『産経新聞』の論壇時評で採り上げてもらえたのだが、
筆者は〔1994年の〕懇談に参加しなかったが、写真週刊誌「FOCUS」に漏れた経緯と当時の学会幹部の反応を知っていただけに、32年経って懇談内容が「潮」に掲載されたうえに、創価学会幹部が内容を解説までしたことに驚いた。
(中 略)
與那覇は……首相、高市早苗を批判するが説得力に欠ける。なぜ「理想としてきた自公」でなく、対立してきた立憲民主党と組んだのか、学会幹部の中道改革連合結成に向けた役割はどうだったのか、次回以降ぜひ掘り下げてほしい。
有元隆志氏、2026.3.26
(段落を変え、強調を付与)
えっ、ぼくがやるんすか?
…という次第で、期待に沿えたかはわからないけど、とにかく今回も中道改革連合が結党され、敗北する経緯について、これまで報じられていない側面から取材している。
みんな忘れているが、①まず昨年11月に、野党に転じた公明党が「中道改革ビジョン」として、政策の5本柱というものを出す。で、②それを今年1月にアレンジした新たな5本柱に立憲民主党も乗る形で、中道は結党された。
この「5本柱に同意する」ことが、立憲から(公明もだが)中道に移籍するための必須条件だったことは、当時の安住淳・共同幹事長が明言している。つまり、ファクトである。
「この旗に集まってほしいと呼びかけた。今の党を“たたんで”新しい党をつくるという提案をした以上、もし何十人もこぼれるようなことがあって、(新党立ち上げに)失敗すれば議員辞職するしかないと思っていました」
(中 略)
「当選した後に違うことを言うなんて許されませんよ。……ハンコついて入党申込書を出してるんですから。一体誰ですか、そんなことを言っているのは」
AERA Digital、2026.1.23
だが、①と②の5本柱のあいだで「中身がすり替わっている」と怒るのは、公明にも立憲にもアドバイスしてきた井手英策氏(財政学)だ。年頭にBSでご一緒して以来となるが、研究室でずばりホンネを今回うかがっている。

「中道改革連合の5つの柱では、〔公明党案と異なり〕トップは経済成長に置き換えられ、社会保障は2番手に後退。目玉の公約も『食品消費税の恒久ゼロ』という、減税ポピュリズムに一変しました」
(中 略)
「『この政策のためだから』新たに結集するというビジョンなしの新党では、数合わせにしか見えません。財政を通じて国民が支えあうのとは正反対の、消費減税で個々人の手元に『わずかなお金を残す』というよくある公約に、後退してしまったのが最大の敗因だと思います」
『潮』2026年6月号、57-8頁
(算用数字に改変)
驚いたことに、公明党を支える創価学会もまた「食品消費税ゼロ」の要望は出していないと取材に答えた。賛否を呼んだジャパン・ファンド案も、収益は社会保険料を下げ現役世代の支援に充てるのが、本来の構想だという。
なので創価学会としては、それを消費減税に振り向けたのは(公明を通して伝わった)立憲からの要請だと捉えている。ぼくは立憲側を取材していないので、事実を「確定」するにはまだ早い。
が、だとすると大ごとである。
選挙の翌日から書いているが、負けたときなにより大事なのは、「敗因」をまちがえないことだ。いま中道というか、旧立憲の周囲にいる人の語る分析は、大きく外している可能性が高い。
消費税よりも、月給から天引きされる「社会保険料を下げよう」とは、与党入りする前の日本維新の会や、今回の選挙ではチームみらいが掲げて話題になった政策だ。現役世代の給与明細に照準を合わせるのは、所得控除を引き上げ「手取りを増やす」と唱える国民民主党も変わらない。
そちらに舵を切りかけた公明党に、立憲民主党は抱き着く形で、かえって政策の向きを逆にしたのか。そうなら巷間言われる、原発や安全保障のスタンスを公明に合わせ、立憲が「右傾化」したことで支持を失ったとする見立てと反対に、税制の主張が共産党らに近づく「左傾化」によって、中道改革連合は大敗したことになる。
同誌、60頁
連載でも紹介したが、重要なのは、右傾化でなく「左傾化」で中道が見切られたとする分析の方が、実際の投票動向と合致することだ。もし右傾化を嫌って中道から離れた支持者がいれば、たとえば共産党に投じるはずだ。
現実は、どうだったか。出口調査によれば——

比例代表の投票先で比較すると、〔2025年の〕参院選で立憲民主党に投票した人のうち、衆院選で中道改革連合に投票した人は6割どまり。4割は自民党やチームみらい、国民民主党など他党に流れていた。
「立憲票」の流出先は、全国11ブロックの平均(加重平均)で自民が最多の8.7%。みらい(8.1%)▽国民民主(6.9%)▽共産党(4.2%)▽日本維新の会(3%)――と続いた。
毎日新聞、2026.2.16
(調査は共同通信)
立憲支持層の4割(!)が、今回「中道ならやーめた」となったわけだが、うち元々の立憲の公約に近い共産党へ流れたのは、わずかに10分の1。圧倒的多数は一般に「もっと右」とされる政党を、代わりに選んでいた。
なにが起きたのかと言うと、もともと立憲支持層の4割には、自民一強の行き過ぎはヤバいから①「牽制する力のある野党」が要るでしょう、という認識すらなかった。その点で立憲は、かつての社会党よりも下だった。
じゃあその4割は、何しに立憲に入れてたかだけど、まぁ②「入れました」とSNSに投稿してバズる党がほしかったんだと思う(苦笑)。で、令和の頭までならちょい左っぽさも、そこそこバズってた。だから延命できた。
ところが2021年のオープン(略)とかがあって、左はバズるんじゃなく嫌われるものになったんですよ。で、左の中身も空洞化して、要するに③「SNSで顰蹙買ってるあの人たち」と言うことがかぶるのがイヤなんですよ。

本来は、右翼が現役に優しいわけじゃなく、左翼とシルバー民主主義にも本質的な連関はない。むしろ逆に、嫌われ者の言ってることがサヨク思想なんだと誤解されて、近く見えた政党までトバッチリが来てるのが現状だろう。
もちろん、そんな状態は不健康だ。だけどここまで来たら、一朝一夕には治らない。
外科手術で縁を切るべき識者も旧立憲の周りにいるが、それがすんだら生活歴(歴史)をふり返り長期の体質改善に取り組むほかに、中道が再起する道はないだろう。良薬になる連載をめざして、今後も隔月でやっていきます。

参考記事:これまでの連載2回分です


(ヘッダーは、2/9の日本経済新聞より)
編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年5月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください。







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