トランプ大統領が大幅譲歩、アメリカのイランへの配慮

アメリカとイランが停戦に関する覚書が電子署名で締結されていたようですが、トランプ大統領が実際にパリで署名したと報じられています。その覚書の内容についてはトランプ大統領が署名後に公開する、と述べていましたが、電子署名の段階でG7において各国首脳にそのコピーが廻ったようです。カナダのカーニー首相はG7の際にこれを見てゲームチェンジャーと称し、「I have to say, it’s exceeded my expectations. We’re very pleased with the deal that’s been struck」(想定を超えるもので内容に非常に満足している)とコメントしています。

トランプ大統領 ホワイトハウスHPより

またブルームバーグがその覚書のコピーを入手しており、私も全文を拝見しました。ざっと読む限り、アメリカの大幅譲歩とイランの復興に関する記述が大変気になります。

基本的には2つの約束、ホルムズ海峡封鎖解除と核兵器を開発しないと約束する代わりに経済制裁の解除を含むイランへの縛りを解くことが盛り込まれています。具体的には14条の覚書の7番目に「米国は、最終合意の一部として合意される日程に従い、イランに対して現在適用されている全ての制裁を終了することを約束する。これには国連安全保障理事会および国際原子力機関(IAEA)理事会の決議、ならびに一次制裁と二次制裁を含む全ての米国の単独制裁が含まれる」とあります。

これの意味するところは今まであれだけ執拗にイランへの関与をし続けたアメリカがその興味を完全に失ったとも解釈できます。そこまでトランプ氏を変心させた理由が何なのか気になります。個人的にはトランプ氏の本質的な思想であるビジネスマインドに戻ったことではないかと解釈しています。つまりトランプ氏は第1期の時もそうでしたが、アメリカが利益を上げるために構造的障害や誰も出来なかったことを政治利用、ないし大統領の立場を利用しながら乗り越え、実現するチャレンジをしてきたということではないでしょうか?

アメリカから見てイランはほぼ地球の反対側に当たり、地政学的には遠い存在であります。一方、中東の和平という観点からはイランがカギを握ることも自明であり、イスラエルはその不安感から様々な画策をしてきたとも言えます。またイランへの戦争へ踏み切ったのもネタニヤフ首相からの強い要請を受けたことは事実でありますが、基本的なトランプ氏=アメリカの戦争へのスタンスは「脅し」が主体でした。イスラエルのような残忍さはありません。

ここで考えるべきはトランプ氏の変心のきっかけであります。私の読みはトランプ氏とネタニヤフ氏の確執、およびイスラエルで秋までに行われる選挙でネタニヤフ氏の敗北が濃厚になったと読んでいる節を感じます。もしも同氏が選挙で敗北すれば次は収監される可能性すらあるなかでトランプ氏はネタニヤフ氏とこれ以上、近づかない方が良いという判断を下した感があります。

ある意味、エプスタイン問題と同じで「悪い輩」と付き合っていた人は悪の色に染まっているという連鎖的思想に取り込まれるリスクです。仮にそうであれば今回の覚書の意味するところは国際情勢とにおいて歴史的な転換点にすらなりうる大きな節目となるでしょう。

さて覚書のもう一つの気になる項目です。それはイラン復興の部分であります。これは6番目の条文に当たりますが、その全文は「米国は地域のパートナー国とともに、両当事者が合意する包括的なイラン復興・経済開発計画を策定することを約束する。この計画については、少なくとも3000億ドルの資金供給を確保する。最終合意の一部として、この計画の実施メカニズムを60日以内に策定する」とあるのです。

この日本語の解釈が一部分かりにくいのでキーとなる部分を原文で見ると3000億㌦(48兆円規模)に関してはensuring financing of at least $300 billion とあります。金融の世界の意味合いからすれば政府機関が保証し、民間銀行がそれを融資するスキームではないかと読めます。

もう一つ、これがもっと気になるのですが、「米国は地域のパートナー国と共に」という部分ですが、この原文はThe United States undertakes, together with its regional partnersとなっています。regional partnersですから日本は遠い気がしますが、たぶん、トランプ氏のことですからG7の国々に協力を申し入れたとみています。つまり最終的には主要国及び周辺地域国という感じではないかとみています。となれば日本はイランと歴史的に友好関係にあるので資金絡みだけではなく、ビジネスを通じた展開が見込まれるかもしれません。

ここで思い出すのがIJPC(イラン ジャパン石油化学)事業。これは三井物産が中心となり、イランの原油資源が日本にとって重要な選択肢の一つになることを見越し、1971年から始まった日本とイランの友好の象徴のようなプラントのプロジェクトでした。ところが79年にイラン革命が起き、アメリカとイランが国交断絶、その後、イランとイラクが戦争を始めて建設されたプラントは破壊されてしまい、三井物産は歴史に残る撤退をしたのであります。

これを知っている人からすればあの国は何が起きるかわからないという意識は強く持っているはずで二の足、三の足となるかもしれません。ただ、私はある可能性を見出しているのです。それは昔からいう「街は西に発展する」という事実からすればインドの次はペルシャの時代となり人類の歴史において遂に地球を一周してペルシャの発展のサイクルに戻る可能性を見ています。

「アメリカのイランへの配慮」と今日のブログのタイトルに入れたのはここまでアメリカの高官たちが読み込んだかどうかは知りませんが、インドの次のステップに向かう大きな節目となるかもしれないという壮大な第一歩になるのではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月18日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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