麻生副総裁はなぜ旧宮家の養子案にこだわるのか

平河 邦夫

皇位継承問題をめぐって国会の協議は難航しているが、自民党の麻生太郎副総裁が旧宮家の男子を養子として皇族に迎える案に強くこだわっている。彼は「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会長」として、党内でこの問題を主導する立場にある人物だ。

国会では法案提出の見通しが立たず

国会では、女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、旧宮家の男系男子を養子に迎える案の2案を「了」とする形で「立法府の総意」がまとめられ、高市首相に報告された。

つまり旧宮家養子案は単なる保守派の持論ではなく、いまや皇室典範改正の中心論点になっているが、ほとんどの野党が反対に回って法案提出の協議の見通しが立たない。ところが麻生氏はこの案に強くこだわっている。なぜか。

「男系の皇統」を守る

第一の理由は、男系男子による皇位継承を維持するためである。政府の2021年有識者会議報告書は、皇族数確保の方策として、皇族が養子を迎えることを可能にし、その対象を「皇統に属する男系の男子」に限ることが適切だと整理している。さらに、旧11宮家の男系男子子孫についても、養子として皇族となることが考えられるとした。

麻生氏にとって、ここが核心だ。女性皇族の身分保持だけでは、皇族数の確保にはなっても、将来の皇位継承資格者の安定確保にはつながりにくい。しかも、その先に女性天皇、女系天皇の議論が広がれば、男系継承を重視する保守派にとっては「一線」を越えることになる。そこで旧宮家の男系男子を皇族に戻す案を組み合わせることで、女性皇族の身分保持を認めつつ、男系継承の原則を守ろうとしているのである。

第二の理由は、悠仁さま以降の皇位継承不安である。現在の皇位継承資格者は極めて限られており、制度を放置すれば、将来の皇統はさらに細くなる。政府報告書も、未婚の男性皇族が悠仁親王殿下以外にいない現状を踏まえ、皇室を存続させていくため、直系の子、とくに男子を得なければならないというプレッシャーを緩和する効果があると説明している。

第三の理由は、保守政治家としての「落としどころ」である。麻生氏は2025年4月の国民大会で、皇位継承問題について「国論を二分するということがあってはならない」と述べた。今国会が最後となるかもしれない彼にとって、残された時間は少ない。

「男系天皇」を守ろうとした安倍氏の遺志

つまり麻生氏の立場は、女性皇族の身分保持を完全に否定するものではないが、女性皇族の夫や子を皇族にすることには強く慎重である。自民党の記事でも、麻生氏は女性皇族の配偶者や子供を皇族としないことが重要だと訴え、配偶者が皇族になると結婚のハードルが上がるなどの問題があると説明している。

ここには、男系維持派としての警戒心がある。女性皇族の身分保持を認めても、その配偶者や子供まで皇族にすれば、女性宮家、さらには女系天皇への道が開く。麻生氏はそれを避けるため、女性皇族は残すが、皇位継承の本流は旧宮家男系男子の養子案で補うという制度設計にこだわっているのだろう。

ただし、この案には大きな弱点もある。旧宮家の男系男子は、戦後長く一般国民として暮らしてきた。本人が皇族になる意思を持つのか、国民が自然に受け入れるのか、憲法の「法の下の平等」との関係をどう説明するのか、課題は少なくない。政府報告書も、旧宮家の子孫は現在の皇室との男系の血縁が遠く、国民の理解と支持を得るのは難しいという意見があることを認めている。

麻生氏がこの筋の悪い法案にこだわる最大の理由は、安倍元首相との友情だろう。小泉内閣の有識者会議が答申した「女系容認」の法案が2006年の国会に出るのを安倍内閣は棚上げし、そのままになった。そこには宮家を追放した「戦後レジーム」を元に戻したいという意志があったと思われるが、それはもはや時代錯誤である。

制度は「血統の論理」だけでは動かない。皇室は国民の理解と敬愛によって支えられている。旧宮家養子案を本当に進めるなら、麻生氏ら推進派は「伝統だから」ではなく、なぜ現代の国民がその制度を受け入れるべきなのかを、正面から説明する必要がある。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント

  1. 早川蒼真 より:

    「女性天皇に賛成」という世論調査の数字が、いつのまにか「女系天皇にもみんな賛成している」かのように使われてしまような人がいる。だから「ちゃんと説明しろ」と言う前に、まずこの言葉のちがいすら理解せずにギャーギャー騒いでいる人を糾弾することがまず先。話はそこからだと思います。

    ## 反論① 「友情」だけで片づけるのは、ちょっと雑じゃないかな

    記事は、麻生さんがこの案にこだわる「いちばんの理由」を、安倍さんとの友情や遺志だと書いています。

    でも、政治家が国の大事な制度を決めるときの理由を「友情」だけで説明してるのもなんだかなぁと思います。
    いや、安倍さんとの友情や遺志はあると思いますよ。
    けど麻生さんってかなり昔から「男系」言ってたような・・・

    ## 反論② 「昔に戻したいのは時代おくれ」と切り捨てるのは乱暴

    記事は、戦後に皇族でなくなった宮家を元に戻したいという考えを「もう時代おくれだ」と切り捨てています。

    でも、この「皇族でなくなった」というのは、人によって意見が真っ二つに分かれる問題で、**どちらが正解と決まっているわけではありません。**
    それを「時代おくれ」のひと言で終わらせるのは、議論をかえって雑にしていると思います。
    というか「説明ガ~」と言ってる人の説明が、全然説明になってない。

    ## 反論③ 「ちゃんと説明すればみんな納得する」は、ちょっと甘い

    記事は「進めたいなら、なぜ国民が受け入れるべきか正面から説明しろ」と書いています。**説明すれば解決する、という話でもない**と思うんです。この問題は、どの案を選んでも必ずだれかが反対する仕組みになっているからです。

    ここで思い出すのが、「ロバと老夫婦」という昔話です。
    皇室の問題も、まさにこれと同じです。
    政治家に必要なのは「だれからも文句が出ない案」をさがすことではありません。
    そんな案はありません。

    ## 反論④ 世論(その時の空気)だけで決めるのはこわい

    記事は「皇室は国民の理解と敬愛で支えられている」と書いています。きれいな言葉で、その通りに聞こえます。

    でも、ここには落とし穴があります。**「国民の理解」を「その時の世論」とそのままイコールにしてしまうと、とても危ない**んです。

    世論は、テレビの報道ひとつ、その時の空気ひとつで、右にも左にもかんたんに動きます。
    文春捏造報道でも動きます。
    今「女性天皇に賛成」が多いのも、正直に言えば「愛子さまがすてきだから」です。

    そもそも、歴史や文化や伝統の価値って、理解していない人に対して説明だけで分かってもらうのが難しいものです。たとえば宇宙人に「家族が亡くなったらお葬式をするのはなぜ?」と聞かれても、その意味をきちんと伝えるのはむずかしいですよね。男系の話も、それと似たところがあると思います。