世界(マップ)が罠だらけな件

Deagreez/iStock

朗報だ。お前が太ったの、お前のせいじゃない。
世界のせいだ。マップ設計が悪い。バグ報告レベル。
……は? って顔すんな。証拠、見せてやる。

科学的に実証された 超ダイエット習慣大全」(堀田秀吾、木島豪著)Gakken

コンビニ、入ってみろ。目の高さ、ど真ん中、ベストポジションに菓子パンとスイーツが整列してる。あれ偶然じゃない。配置だ。配置の暴力。テレビつければメシのCM、スマホ開けばXのタイムラインに飯テロ写真が津波となって押し寄せる。「見るだけで腹が減る画像」が、二十四時間、こっちめがけて自動発射されてる。誘惑、攻撃的すぎだろ。アサルトかよ。

しかも体は動かさない設計。仕事は座りっぱ、在宅も定着、エスカレーターあるから階段スルー、電車あるから歩かない。「動かない、なのに食う」——この黄金コンボが、生活にデフォルトで組み込まれてやがる。

オラテジュらのレビューもズバッと言ってる。「過体重と肥満は、主に座りがちな生活習慣と、エネルギー消費と摂取のアンバランスから生じる」と。要するにこの社会、初期設定が「太る」になってんだよ。スタート地点がもう沼。沼にスポーンしてる。

……ちょっと脱線する。

この前、夜中に小腹が空いて部屋を見回したら、手の届く範囲に食い物ゼロ。買い置き、切らしてた。で、わざわざ着替えてコンビニ行くのもダルくて、寝た。

翌朝、なんか勝った気がした。何にだよ。……たぶん、世界に。レベル1の勝利。でも勝ちは勝ちだ。

この環境で意志だけで痩せようとするのは、台風の中をフルマラソンするようなもんだ。最初は進む。気合で進む。でも絶対バテる。で、バテた自分を「根性なし」って殴る。やめろ! 悪いのはお前じゃない。風だ。風と、マップだ。

じゃあどうすりゃいい。

オラテジュらは結論でこう言う。「食事と運動だけを処方するアプローチから、行動療法を含むより包括的なアプローチへの移行が必要だ」。キモは「行動療法を含む」の一語。

「カロリー減らせ」「運動しろ」——正論。ぐうの音も出ない、ド正論。でもな、正論で人は動かないんだよ。「なんで食いすぎる?」「どんな時に負ける?」「どうすりゃ続く?」っていう、行動の裏っ側の心理と環境にまで踏み込まなきゃ、何ひとつ変わらん。

で、ここで発想をひっくり返す。誘惑に「勝つ」んじゃない。誘惑に「会わない」。

帰り道のルートからコンビニを物理削除。お菓子を視界に置かない。一駅前で降りて歩く。全部、根性ゼロでできる。これは精神論じゃない。模様替えだ。インテリアの話だ。

要は、「何をすべきか」を覚えるのがクリア条件じゃない。「放っといても勝手に続く仕組み」を組むのがクリア条件だ。

心に頼るな。配置で勝て。

遠回りに見えて、それが科学の出した最短ルート——らしいぞ。まあ騙されたと思って、まず部屋の菓子だけ捨ててこい。話はそれからだ。知らんけど。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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