

韓国人の日本旅行が、もう完全に止まりません。2025年に日本へ来た韓国人は946万人。逆に韓国へ行った日本人は365万人。約2.6倍ですよ、2.6倍。しかも韓国人が日本で使ったお金(84.4億ドル)は、日本人が韓国で使った額(27.4億ドル)の約3.1倍。対日旅行収支の赤字は57億ドルで過去最大。韓国の財布、日本でガバガバに開いてます。
わたしも韓国は経由含めて4回ほどいったことあり。去年の身内の話だが、ソウルのカフェではあいみょんやOfficial髭男dismが普通に流れていて、街はもう「日本好き」の空気。……って、これ本当にデータでも言えるの? そして「若者は仲良し」だとして、じゃあ一体“誰が”日韓の仲を邪魔してるの? 複数の世論調査を年代別にバラしてみたら、日韓の両方で、まったく同じ顔をした”犯人”が浮かんできました。
① まず全体像──ほぼ両思い。おめでとうございます
土台から確認します。2025年現在、お互いへの好感度は日韓そろって「調査開始以来いちばん高い」水準にあります。
韓国側はEAI調査で「日本の印象が良い」が52.4%で過去最高(前年41.7%から爆上げ)。ギャラップでも「日本人に好感」56%。日本側も内閣府調査で韓国に「親しみを感じる」が56.3%と、堂々の過半数超え。
数字だけ見たら、ほぼ相思相愛。両思いです。おめでとうございます。……と言いたいところですが、この”全体平均”ってやつがクセモノで、世代ごとのデコボコを一枚にのっぺり塗りつぶしちゃうんですよね。本題はここから。

ヒトもカネも、見事に「韓国→日本」へ流れている。出典:韓国銀行・JNTO
② 「ソウルであいみょんが流れてる」、ガチでした
「街でJ-POPかかりまくってる」という体感、気のせいじゃありません。むしろ報道とバッチリ一致します。Korea Timesによると2025年、Ado、YOASOBI、King Gnu、髭男、藤井風がそろって韓国で単独公演。これ、1998年に韓国が日本の大衆文化を解禁して以来、初の珍事だそうです。米津玄師まで来てる。もう普通に文化侵略(音楽的な意味で)が完了しつつあります。

しかもこれ、テレビもラジオもほぼ露出ゼロのまま起きてるのがすごい。若い韓国人、YouTubeとTikTokとサブスクで勝手にJ-POPを掘り当ててるんです。「愛を伝えたいだとか」がTikTokでバズる時代。国同士がどれだけギスギスしても、こっちの回路はまったく別物で回ってる。あいみょんがソウルでウケるのに、外交は1ミリも関係ないわけです。
③ 韓国を年代でブッた斬る──きれいなU字、底は50代
さあ核心。朝鮮日報がソウル大とやった調査(2025年3月)で、韓国人の対日好感度を100点満点・世代別に出すと……見事なU字。きれいに谷ができます。

20代が46点で最高、50代が35点で最低。両端が高くて、真ん中がへこむ。出典:朝鮮日報×ソウル大学校・国家未来戦略院(2025年3月)
20代が46点でトップ。そこから年齢が上がるごとにズルズル下がって、50代が35点でドン底。ところが60代(40点)・70代以上(41点)でまた持ち直す。谷の底はピンポイントで50代、というわけ。
「好意的」と答えた割合だと、20代32%に対して50代はたった16%。逆に「否定的」は20代38%、50代60%。……50代の6割、けっこうハッキリ嫌ってますね。ギャラップでも10〜20代の77%、30代67%が「日本好き」。韓国リサーチの調査も同じU字。独立した複数の調査が、全部おなじ形。これはもう偶然じゃなくて構造です。
なぜ50代が底なのか──”586世代”という補助線
で、なんで50代が底なのか。便利な補助線が「586世代」です。2025年の韓国の50代は、だいたい1966〜75年生まれ。80年代に大学で民主化運動をやっていた世代の中核で、歴史と主権の話には人一倍アツい人たち。一つ下の40代も、2019年の不買運動を”大人として”通過しています。
逆に両端が高い理由もシンプル。20代は植民地支配の記憶なんてゼロ、生まれた時から日本のアニメとゲームが日常。70代以上の高齢保守は、反共・西側陣営という安全保障観からむしろ親日。EAIだと70歳以上の「良い」が前年から28.3ポイント爆増して48.9%・全世代トップになった年もあるくらいです。「歴史を知ってる老人ほど反日」という思い込み、今の韓国だとむしろ逆なんですよ。
④ 日本側も割ってみた──え、ほぼ同じ形なんだけど
じゃあ日本側は? ここで多くの人の予想がスコーンと外れます。日本もほぼ同じ形なんですよ。

18〜29歳が72.6%で突出。一方40代は「親しみを感じない」が51.6%で全世代トップ。出典:内閣府(2024年実施)
内閣府調査で韓国に「親しみを感じる」のは18〜29歳が72.6%(全体56.3%を余裕で上回る)。逆に「感じない」が多いのが40代・50代で、特に40代は「感じない」51.6%と全世代トップ。性別は女性>男性。冬ソナ以来の韓流が、若者と女性に分厚いファン層を作ってきたわけです。
つまり日韓どっちを見ても、ピークは若者、谷は40〜50代。日本の40〜50代は嫌韓言説と歴史・領土(竹島)をいちばん抱え込んでる層で、韓国の586世代と、鏡みたいに睨み合ってる。これ半分くらい同族嫌悪では?と言いたくなる構図です。
⑤ 韓国人、「日本という国」より「日本人」のほうが好き説
もう一個、地味に面白い非対称があります。韓国人の好感、“国”と”人・モノ・文化”でくっきり分かれてるんです。

「国家」だけが中立(50度)を割り込み、人・製品・文化はそれを超える。出典:韓国リサーチ「世論の中の世論」2025年7月
感情温度(50度が中立)で見ると、日本という“国家”は42.7度で歴代最高なのに、中立の50度には届かない。ところが日本“人”は50.0度、企業も50.0度、“製品”と”文化コンテンツ”に至っては54.7度で堂々の中立超え。ギャラップでも「日本人に好感」56%なのに「日本という国に好感」は38%。その差、18ポイント。
要するに韓国の人たちは、頭の中に引き出しが2つあって、「歴史と領土でモメてる国」と「目の前の日本人・ビール・アニメ」を別々にしまってるわけですよ。だから政治がどれだけ冷え込んでもYOASOBIのチケットは1分で売れるし、観光客は過去最多を更新できる。嫌いなのは”国”であって、”あいみょん”じゃない。逆に言うと、好感が上がったのは「国への評価」が変わったからじゃないんです。ここ、あとでボディブローのように効いてきます。
⑥ 「日韓の邪魔をしてる世代」、正体判明
ここまでで、もう答えはハッキリしてます。

だからね、「世代交代すれば勝手に解決」も「老人がいなくなれば変わる」も、両方ハズレなんです。谷を作ってるのは最高齢層じゃなく、これから20年は社会のド真ん中に居座る中年層。彼らが管理職・政治家・世論のボリュームゾーンを握ってる間は、平均の温度が”若者の温度”まで一気に上がることはありません。
……ちなみに、この記事を読んでるあなたが40〜50代だったら? そう、統計的にはあなたが容疑者です。いや、もちろん例外はいますけどね。例外ということにしておきましょう。
⑦ 「嫌韓」「反日」の人って、結局どんな人?──データで似顔絵
じゃあ、その”壁”を作ってる人たちって、具体的にどんな人なんでしょう。年齢・性別だけじゃなく、学歴・収入・渡航歴まで踏み込んで、データで似顔絵を描いてみます。イメージと実物、けっこうズレてますよ。
【韓国側】反日のコアは”進歩・中年”。そして「行ったことない人」ほど嫌い
韓国で対日好感度が低いのは、年代なら40〜50代、思想なら進歩(リベラル)層。韓国リサーチも「進歩層ほど日本に否定的」とハッキリ書いてます。民主化を闘った586がリベラルの中核なんだから、”年代の谷”と”進歩層の反日”は、同じ集団を別角度から見てるだけなんですね。
逆に保守・高齢層は、対中・対北の警戒から日米韓連携を支持してて、対日感情も温かい。EAIの孫洌(ソン・ヨル)院長いわく、与党支持の多い60〜70代が政権の対日改善を評価してるそう。で、ここが面白いんですが、反日と実利はちゃんと別腹。日本への好感度が最低ランク(24度以下)の人ですら、58%が「経済では日本と緊密にやるべき」と回答してます。嫌いだけど取引はする。……大人ですね。
そして渡航歴。これが効くんです。EAI調査では訪日経験者が60.8%と過去最高で、初めて「行ったことない人」を上回りました。しかも訪日歴のある人のうち、22.4%が「(行って)良い印象に変わった」、55.1%が「良い印象が続いた」。合計約77.5%が好意的です。要は「実際に日本に行くと、だいたい好きになって帰ってくる」。逆に言えば、反日感情が濃い層ほど”行ったことがない”層と重なりやすい。食わず嫌い、ってやつですね。韓国の経済力が伸びて旅行のハードルが下がったことが、ボディブローのように効いています。
【日本側】”低学歴・貧困の若者”説は、データでほぼ崩壊する
日本の”嫌韓”層も、イメージとは全然ちがう顔をしてます。大阪大の辻大介さんが2014年に約2400人を調べた計量研究(「ネット右翼」=中韓への否定的態度・保守政治志向・ネットで発信、の3点セット)が決定版。世間のイメージを1個ずつ潰していきます。

「ネット右翼」層と一般層の比較。学歴はむしろ高く、世帯年収はやや低い。出典:辻大介(2017)2014年ウェブ調査

整理すると、「低学歴・貧困の若者」という4点セットのうち、“低学歴”と”若者”はハッキリ誤り(むしろ高学歴で、中年が中心)。当たってるのは”世帯年収はやや低め”くらい。つまり世間のイメージ、4分の3はガセでした。実像は「高学歴だけど世帯年収は伸び悩む、ネットに長時間いる中年男性」。ちなみに辻さんの分析だと、この層はマスコミ不信が強烈で、「日本のマスコミは信用できない」への賛同がほぼ100%。”マスゴミ”の語感、データでも裏が取れてます。
渡航歴については、日本側は”嫌韓層に絞った”きれいなデータが乏しいんですが、辻さんの回帰分析では「外国人との交流経験がある人ほど排外的態度が弱い」という関係が出ています。韓国側の「行くと好きになる」と、方向はまったく同じ。接触は、たいてい憎悪の解毒剤になるってことですね。
そして内閣府データとも符合します。韓国に「親しみを感じない」のは40〜50代、性別では男性で多い。つまり日本の嫌韓のボリュームゾーンも、韓国の反日と同じく中年男性。両国の”壁”、年齢も性別も政治的な熱量も、気味が悪いくらいソックリ。鏡を挟んで、ほぼ同じおじさんが睨み合ってる。地球規模のミラーマッチですね。
で、最後にもう一度強調しておくと、この人たち少数派です。日本のネット右翼は人口の1%台。韓国の強硬な反日も年々ジリ貧。沈黙してる多数派、とくに若者は、もうとっくに仲良し。なのに関係が冷えて見えるのは、声のデカい中年の言説が、両国のメディアで実物の何倍にも増幅されて響いてるから。1%の声がデカすぎ問題、とも言えます。
⑧ ただし「親日化した」と勘違いするのは、さすがにヤバい
最後に、データに正直であるための注意書きを一個だけ。若者の好感度が高いのを「韓国が親日化した!」って読むのは、ハッキリ誤読です。ここ、テストに出ます。
⑤で見たとおり、上がってるのは”人・モノ・文化”への好感であって、”国”への評価じゃない。歴史認識も竹島(独島)も、韓国側の主張は世代が変わってもほぼ不動です。20代が日本のアニメを愛することと、日本の歴史認識を受け入れることは、まったくの別問題。今あるのは「人と文化への親しみ」で、「争点での歩み寄り」じゃないんですよ。
おまけにEAIだと日米韓の安保協力支持が78.8%まで上昇してて、若者の対日好転には「対中脅威でみんな西側に寄った」っていう地政学的な追い風もかなり混じってる。中国リスクが薄まれば、この支えもしぼむかもしれない。要は「日本が好き」というより「中国がもっと怖い」の側面もある、と。ロマンチックな話ばかりでもないんです。
……とはいえ、ヒトもカネも、若い世代の気持ちも、過去いちばんいい場所にあるのは紛れもない事実。あとはこの温度を伸ばすのか、谷の世代の不信を煽るのか。ハンドルを握ってるのは若者じゃなくて、両国の政治とメディア、そして当の40〜50代本人です。あいみょんがソウルで流れ続けるかどうかは、結局そこ次第ってことで。
主な出典:韓国銀行・経済統計システム(対日旅行収支、2025年)/日本政府観光局(JNTO)/The Korea Times(J-POP公演、2024〜25年)/聯合ニュース・Korea Herald(あいみょん来韓公演、2025年)/東アジア研究院(EAI)対日認識調査(2024〜2025年。訪日経験・世代別好感度含む)/韓国ギャラップ(2025年8月)/朝鮮日報×ソウル大学校・国家未来戦略院(2025年3月)/韓国リサーチ「世論の中の世論」(2025年7月)/内閣府「外交に関する世論調査」(2024年実施・2025年公表)/辻大介「計量調査から見る『ネット右翼』のプロファイル」(年報人間科学38号, 2017/2014年ウェブ調査 n=2347)/樋口直人・永吉希久子ほか『ネット右翼とは何か』(青弓社)・東洋経済オンライン。グラフは各出典の公表値を基に筆者作成(日本側40代は「親しみを感じない」51.6%からの推計値を含む)。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年6月24日の記事より転載させていただきました。







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