1ドル162円、政府が日銀を牽制する「財政支配」で急落する円

円安が止まらない。ドル円相場はついに1ドル162円台に乗せ、三菱UFJ銀行の公表仲値も162.39円となった。市場では、日米金利差に加え、高市政権が日銀を従属させる姿勢が円売りにつながっているとの見方が広がっている。

日銀の利上げを牽制した「骨太の方針」

政府は7月に策定する「骨太の方針」に、経済成長の実現に向けて「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要だ」と明記する方針だという。これは追加利上げを志向する日銀への牽制である。

日銀は6月、政策金利を1.0%程度に引き上げた。日銀の公表資料でも、補完当座預金制度適用利率は6月17日以降1.0%、基準貸付利率は1.25%となっている。 物価高と円安が続く中で、金融政策を正常化するのは当然の判断である。

だが高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、財政出動によって成長を支えようとしている。そのため、金利上昇による景気下押しや国債利払い費の増加を強く警戒し、「景気のために利上げを急ぐな」と日銀に圧力をかける構図になっている。

「財政支配」で通貨危機が起こる

これが財政支配(fiscal dominance)である。政府の赤字や債務が大きくなると、中央銀行が物価安定よりも政府の資金繰りや国債利払いを優先し、政府の資金調達の都合に従属するようになる。

市場が恐れているのは、日銀が必要な利上げをできなくなることだ。日本の政策金利は1%に上がったとはいえ、米国との金利差はなお大きい。加えて、円安による輸入物価上昇が続けば、実質金利は低いままである。これでは円を持つ理由が乏しい。

BIS(国債決済銀行)も、高債務国が財政再建を先送りすれば「財政支配」に陥り、インフレと通貨危機を招くと警告している。 1ドル162円は、市場が日本政府に突きつけた警告である。

インフレ税は政府の「徳政令」

日本最大の債務者である政府が、利払いの増加を恐れて中央銀行に金融抑圧させるのはよくあることだ。高市政権は骨太で「名目成長率3%で政府債務比率を減らす」という方針を掲げ、日銀もそれに従属している。

これがインフレ税である。「名目成長率=実質成長率+インフレ率」だから、実質成長率ゼロでも、インフレ率が3%になれば政府債務比率は下がる。株価が上がり、税収も上がるので、国民に痛みを感じさせずに景気がよくなる(感じがする)。

政治的には結構なことばかりなので、政権がその誘惑にかられるケースは多い。最近では、アルゼンチンやトルコが財政支配の罠にはまって通貨が崩壊した。まず必要なのは、財政の責任は政府が負い、日銀が物価安定の責任を負うことだ。

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