時たま、人にものをお願いすると「金にならないことはやらないよ」と断られることがありました。(カナダではさすが少ないですが、どこまで協力してくれるかは別問題です。)金にならないことをしてもお勤めの方なら自分の身銭になることはあまりないと思うので「無駄な仕事はしないよ」という意味に訳せるかもしれません。
世の中の多くの会社には会長と社長というポジションがあります。その違い、説明できますか?功績あった社長の引退の花道に用意された最後のイスじゃないですよ。社長は社内のトップであり、業務、業績の責任者であります。つまり社員を叱咤激励し、積極的に重要営業相手にあいさつし、社業の1年、3年、5年先を見通し、投資の計画をするといった実務の長であります。

一方、会長の仕事は社内の仕事からは一歩離れ、会社や業界がおかれている立場をいかに守るか、そして会社を社会貢献的視点でとらえます。もちろん、社長などとの経営の相談もしますが、主たる守備範囲は社外です。ときとしてメセナ的なこともやるでしょう。経済団体などの役員をして異業種交流を通じて人脈を作り、「やー、やー〇〇会長、お元気そうで…」という「爺の会話」ができる関係を作り、自社の社長を連れ回し「いや、今度、うちの社長になった〇〇です」と紹介して回る、という感じであります。
では会長職はカネになる仕事なのか、と言えば直接的にはほとんど利益を生み出していないかもしれません。ただ存在そのものに意味がある場合もあるのです。それは第三者が評価する長年の功績が会社の顔役として強力な牽引力を持つのです。トヨタの豊田章男氏などはそのものでしょう。創業家出身だけではなく、自ら今でもレーシングカーのハンドルを握り、車好きとしてトヨタのイメージを強烈にアピールできるのです。
カネにならないこと=直接の利益にならないことは会社の会長だけではなく、あらゆる人が社会活動の中である程度求められると思うのです。例えば高校、大学の頃に「クラブ活動していましたか?」と聞くと案外やっていない人が多いのです。特に大学になるとクラブ活動への参加者は50-60%とされます。「大学時代、何やっていたの」と聞けば「バイト、マージャン、あとはだらけ切っていた」という方は多いのであります。さすがゼミ活動参加者は60-70%と比率が上がるのは就活に直接的に響くからでしょう。「なぜ、ゼミを取らないの」と聞けば「かったるいじゃん」の一言であります。つまり大学を4年で最短卒業するための効率重視のトランジット機関と考えている節が見えるのです。
その後、社会人になると20代から50代まではほぼ会社漬けであります。会社の人以外口をきいたことがないという人もいるぐらいで「世界は私の会社を中心に廻る天動説」といわんばかりであります。よって「金にならないこと、していますか?」と聞くこと自体がおぞましく、「多忙な会社の業務に家のこと、子供のこと、もう、くたくたです」というのが関の山。そうみると人生に余裕がないのかな、と思ったりするのです。
日本で昔、異業種交流会によく参加していた頃、多くの参加者は「上司に来いと言われたので」という消極的理由。そこで名刺を交わしても2度と連絡をすることはない相手ばかりでした。新しい世界に飛び出すのがどうも苦手にみえます。
私は当地に来た時からNPOの集まりに出席するようになり、90年代半ばから今日に至るまでNPOの団体の役員をしています。その後、出身大学の校友会のことやイベント企画など様々なことをやってきました。よろず相談も引き受けているし、ビジネスの無償のお手伝いもしています。
お前は暇なのか、と言われるでしょう。自分は会社を超えられるか、とチャレンジしているのだと思います。多くの方は同じ場所で同じ時間帯に同じ業務をしています。それって飽きませんか?おまけに私の場合、いわゆる賃貸の大家業が殆どなので貸すところが満杯だと何もやることがないのです。なので暇といっては語弊があるので、刺激が欲しいわけです。刺激とは今までに見たことも聞いたこともない世界に出会うことです。先日も異業種交流会の際「日本で青島ビールのアンバサダーやっていました。渋谷の交差点の電光掲示板に俺の顔がでかでか出ていました」という若者に出会い「マジ?」と思わず、話に引き込まれていくのであります。
このブログだってそう。2007年から書き続けていますが、カネにはなりません。でも私は得たものがものすごく多くあります。自分が阿呆だったことを認識したこと、それを丁寧に指摘してくれる常連のコメンテーターの方々、そして何よりも毎日、皆さんが書き込むコメント欄に花が咲くこと、これほどの幸せはカネでは絶対に買えないのであります。ありがたいとしか言いようがありません。
カネで買えないことをするって自分の本質を探す世界に飛び込むということなのでしょうね。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月3日の記事より転載させていただきました。







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