どこまで踏み込める日印関係:日本はインドとビジネスができるのか

高市首相がインドを公式訪問し、一定の成果を上げています。主に戦略的連携の強化という観点です。なぜ、日本がインドを重視するかと言えば1つには人口ボーナスがあり、国民の平均年齢も高く、かつ、これからの潜在的成長余地が大いにあること、2つ目に日中関係がぎくしゃくする中でインドと日本の連携強化は安全保障の面から重要である点は間違いありません。

モディ首相と会談する高石首相 首相官邸HPより

2兆円規模の投資を行うことも表明した件につき、国内からは異論の声もありますが、インドの国の規模とそのインパクトを考えると私にはゼロが一つ足りないぐらいだと思います。インドを本気にさせるにはその10倍ぐらいの資金力で向かう必要があります。

では日本はインドとビジネスができるのか、これは全く別次元の問題であり、個人的には一筋縄ではいかず、9割の日本人には困難を伴うとみています。日本人とインド人はある意味、根本的に真逆の価値観にあるともいえ、その壁を打ち破るのは容易ではないというのが私の見方です。

基本的にインドの考え方の一つにケースバイケースという捉え方があります。国際世論がどうであろうが、みんながどうしようが関係なく、インドにとって良いことであればそれを選択するわけです。古くは東京裁判で唯一、無罪を主張したのがインド人判事、パール氏でしたが、その根拠は「勝者による裁き=事後法による判断は法の原則に反する」でした。当時、国際世論は敗戦国に対する厳罰が感情的になるバイアスが強い中、それに押されず、中立的にその判断を下せたのはインド人ならではだったと私は考えています。

一方、近年では安全保障に関してクワッドがあるにもかからわず、ロシアから原油を購入し続けたインドに二枚舌外交のような感じもしました。彼らの理論からすればインド太平洋の経済安全保障には同意するが、安定的なロシア産の原油輸入はインドの生命線という割り切りがあるのです。これは日本人には理解しがたいものがあると思います。つまりインドの発想はその時々によってベストなメリットあることを選択していくというスタンスが強く、誰にも迎合しないのであります。

よってインドの新幹線事業も当然ながら日本がターンキーで請けているわけではなく、部分部分でインド企業との協調になっています。この傾向は別にインドだからというわけではなく、インドはインド製造業振興策があり、自国の基礎能力向上目的があるのです。(日本がかつて中国でやったのと同じです。)スズキ自動車がインドで成功したのも地元企業との連携がキーでありました。よってインドとビジネスをするには日本の技術やノウハウをそのまま輸出するのではなく、インド側にどれだけ教育し、共に成長するという超長期の視点が必要とも言えます。

ところでインドのビジネスの基本にジュガール(JUGAADと書きますが、ヒンディ語ではジュガールと聞こえるらしい)があります。私もサチン チョードリー氏の「大富豪インド人のビリオネア思考」という書籍を読みましたが、なかなか含蓄がある一方、日本人には高い壁がありそうです。基本的な発想は「限られた知見の中で即興で解決策を見出す世渡り」のようなものです。考えながらも即行動することに意義があるという捉え方で、仕事もパッチワークだろうが、とにかく、一定の達成をしたら良し、という感じです。なので日本人のように完璧主義では唖然とするようなことも発生しやすい一方、日本人の判断や行動力が鈍く、時間がかかることとの対比ともされます。

このようにインドと日本は基本思想がかなり離れている中で外交的戦略提携を進めていくわけですので、将来まるで意図しないことも起きうることはあります。よって私はインドとの付き合いは一定の割り切りも必要だと思っています。お互いに今、メリットあることを分かち合う、と言う発想にしないと向こうはもらうだけもらって他においしい果実があればそちらもかじることに日本は嫉妬しなくてはいけなくなるのです。

最後にもう1つ加えるならインド人の先祖はインド アーリア人でこれは欧州人と先祖を共にします。つまり欧州人とは系統が一緒なので発想や価値観は欧州人的です。地政学的にはアジアに属していますが、アジア系と考えるべきではないと思います。日本に在留するインド人は55000人程度、一方インドカレー屋を模倣するネパール人は30万人います。日本人はそういう意味でインド人とは接点はありそうであまりないというのが実情な気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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