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財務を中心とした経営コンサルタントとして、はっきりと伝えておきたいことがある。
税理士はこの話をしない。
銀行員もこの話をしない。
だから私が言わなければならないと思い、今回の記事を書いている。
「節税をしっかりやっています」と誇らしげに言う社長に、私はいつもこう問い返す。「それで、自己資本は増えていますか」と。
ほとんどの社長が黙る。
なぜ誰もこの話をしないのか
税理士は税金の申告・納税が仕事であり、会社経営がどうなるかは業務の範囲外だ。税理士を責めているのではない。守備範囲が違うということだ。
銀行はお金を貸して返してもらえればいい。
当面返済に問題がなければ、わざわざ関係を悪化させることは言わないのが人情だ。
他の経営コンサルタントは売上・マーケティング・人材が主戦場で、決算書すら見ない。特に貸借対照表を確認するコンサルタントがどれだけいるだろうか。
結果として社長は、誰からも聞かされないまま「節税が賢い」という誤解を持ち続ける。
財務を中心とした経営コンサルタントだからこそ言える話を、今回はしたい。
自己資本を増やす方法は1つしかない
増資をしない中小企業にとって、自己資本を増やす方法はいくつあるだろうか。
答えは1つだ。税引き後の当期純利益を、繰越利益剰余金として貸借対照表に積み上げるしかない。
税金を払わなければ当期純利益は増えない。当期純利益が増えなければ繰越利益剰余金は積み上がらない。繰越利益剰余金が積み上がらなければ自己資本は充実しない。
節税を最優先にしている社長は、この連鎖を自らの手で断ち切っている。
「税金を減らす」ことと「自己資本を増やす」ことは、根本的に矛盾する。これは財務の基本中の基本だが、社長に説明する人間が誰もいない。
銀行は自己資本に何点の評価を与えているか
金融検査マニュアルは2019年に廃止された。しかし銀行の融資審査の現場では、今もその考え方を踏まえた定量評価が使われている。
自己資本に直接関係する評価項目は3つある。自己資本比率、ギアリング比率=有利子負債÷自己資本、自己資本額の絶対額だ。配点はそれぞれ10点、10点、15点で、合計35点。満点は129点だから、全体の約27%が自己資本に関係する項目だ。
自己資本比率の評価を見ると、15%未満はゼロ点だ。15%以上でようやく2点。40%以上で初めて満点に近づく。
節税を繰り返し、繰越利益剰余金を積み上げてこなかった会社の自己資本比率がどうなるか。「節税をしっかりやっています」と誇らしげに語る社長の会社が、この項目でほぼゼロ点に近い評価を受けているケースは珍しくない。
自己資本が薄い会社に起きる2つのこと
第1に、銀行からの金利が高くなる。
融資審査の評価点が低ければ、銀行はその分をリスクプレミアムとして金利に乗せる。自己資本を積み上げず節税を優先した結果、借入金利が高くなる。節税で浮かせたはずの税負担が、金利という形で銀行に流れていく。
第2に、債務超過に転落するリスクが高まる。
繰越利益剰余金を積み上げてこなかった会社は、何か1つ想定外のことが起きたとき——売上の急落、不良債権の発生、設備の突発的な修繕——すぐに純資産がマイナスになる。債務超過になれば、銀行は新規融資を止める。
事業再生が必要になった会社の多くに、共通する軌跡がある。
税金を払うのは損だとして、自己資本を積み上げなかった。
それが積み重なって薄い純資産になった。
1つの誤算で債務超過に転落した——この順番だ。
「自己資本を増やしなさい」と言ってくれる人はいたか
社長にこう聞くことがある。「これまでのコンサルタントや税理士から、自己資本を増やすために利益を出して税金を払いなさいと言われたことはありますか」と。
ほとんどの社長が「ない」と答える。
言ってくれる人がいなかったのだから、知らなくて当然だ。
しかし知らなかった結果は、自分の会社に降りかかる。
自己資本関連の評価で約27%の配点がある。その約27%で低い点数を取り続けながら、銀行の評価が上がらないと嘆く社長に、私はこう伝える。「賢いと思ってやってきたことが、銀行の評価を下げ続けてきました」と。
次回は残りの約73%——収益性と返済能力の評価項目——に目を向ける。節税で営業利益を圧縮することが、銀行の評価シートで何点分の減点になるかを、数字で示したい。







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