「上司に厳しい指導」を期待する新入社員の「本音」

黒坂岳央です。

日経MJが報じた調査によれば、新入社員のうち上司に「厳しい指導」を求める割合が3年連続で増加し、24%に達したという。

この数字だけを切り取れば、いまどきの若手は成長意欲にあふれ、ぬるい職場を嫌う骨のある世代に見える。だが、この数字を額面通りに受け取るのは危険だ。

実態としては「懇切丁寧に一から十まで時間と手間を惜しまずに教えろ。ため息ひとつついたらパワハラで訴える」これが現実である。

つまり彼らが求めているのは「厳しさ」ではなく、「摩擦なく成長」という都合のいい要求と読み取れる。

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「厳しい指導」の中身を分解する

そもそも「厳しい指導」という言葉は曖昧だ。この調査で回答者が想定しているのは、おそらく「フィードバックの速さと具体性」であって、「負荷や責任の重さ」ではない。ミスを指摘されずに放置されるのは困る、成長の機会を逃したくない、という意味での「厳しさ」であれば、それは指導の質の話にすぎない。

本当の意味での厳しさとは、成果に対する結果責任を負わされることであり、期待水準に届かなければ相応の評価を受けることであり、時には理不尽なほどの負荷がかかることでもある。昨今はどこの会社もパワハラにおびえているので、上司が理不尽でないことは多いが、取引先や顧客が理不尽なことはまだまだ現実にある。そこまで期待できているかだ。

この種の厳しさを、同じ新入社員たちが本当に望んでいるかは疑わしい。心理的安全性への配慮やハラスメントへの敏感さが同時並行で高まっている状況を踏まえれば、都合のいい部分だけの厳しさを求めている可能性が高い。

つまり、管理コストは上司や会社側に転嫁されたまま、成長という果実だけを受け取りたいという要求になっていないか、という疑いは拭えない。

上司はプロであって教育者ではない

そもそも会社の上司に「適切な指導」や「教育」を求めること自体が筋違いだ。

もちろん、会社には研修やOJTという制度がある。これ自体は否定しない。しかし、OJTという制度の存在と、上司個人が教育者としてのスキルや意欲を持つべきだという期待は、まったく別の話だ。

会社が研修制度を用意しているのは事実だが、その実態は「必要な仕事をさせながら覚えさせて自走を促す」ことであって、体系的なカリキュラムに沿って手取り足取り教えることではない。プロが自分の仕事を遂行する過程を横で見て、盗んで身につける機会が与えられているにすぎない。

上司の本務は何かといえば、チームとして成果を出すことである。部下の成長は、その過程で生じる副産物であって、目的そのものではない。ここを履き違えると、「成果より育成」が上司の評価軸そのものになってしまい、組織として本末転倒になる。会社は学校ではないのだ。

上司は本来、教育のプロではなく仕事のプロだ。仕事は基本的に、最低限の研修以外は自力で学ぶものである。この原則を忘れて、上司に教育者としての役割を期待するのは、そもそもの職務設計を勘違いしている。

受け身の姿勢では成長しない

自力で学ぶ人材と、教えてもらうのを待つ人材とでは、長期的なキャリアの成果に明確な差が出る。統計として厳密に切り出すのは難しいが、自己投資型の人材の方が昇進スピードも転職市場での評価も高い傾向にあるのは、労働市場を見ていれば明らかな経験則だ。

筆者が会社員の頃、仕事で最も成長を実感したのは、座学による研修ではない。上司からの「さっさと結果を出せ、役に立って見せろ」という圧力だった。

仕事をしている間は非常に辛いが、この圧力があることで四六時中、「どうやったら結果を出せるか」ということを考え続けることになった。休みの日に書店で理論書を手に取ることにもつながった。

上司から見れば手のかかる部下だったと思うが、それでも努力して食らいついた結果、「やるじゃん」と上司からもらえるようになった時にはとても嬉しかったし、成長の実感があった。

市場価値を考えれば成長できる

はっきりいうと、成長して自分の価値を高めたい人は「上司からの丁寧な教育」なんかを期待するのは極めて効率が悪い。本当に成長したい、年収を上げたいと考えるなら、市場価値を意識することに尽きる。

年収を上げる方法はシンプルで、欲しい年収の会社に転職できるスキルと経験値を詰むことだ。そうすれば「100% 年収アップ」できるし、実際に自分はそうした。

仮に現在年収300万円で、次は年収500万円がほしいなら、その水準の求人票を見て、必要とされているスキルと経験を身につければいい。そうすれば会社からの教育よりはるかに早く、確実に成長できる。求人票を読むこと自体は、誰にでもできる。必要なスキルと経験を身に付けたらさっさと転職すれば年収は上がるし、成長も出来るのだ。

「厳しい指導を求める新入社員が増えている」という現象は、一見すると成長意欲の表れに見える。だが実態は、自分で成長する力の不足の裏返しであることが多い。プロである上司に教育を期待するのは筋違いであり、本当に年収を上げたいのであれば、上司の顔色をうかがうよりも、求人票を見たほうがよほど確実だ。

会社は教育機関ではないし、上司は先生ではない。キャリアは自分で設計するものである。


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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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