「宮崎麗果」の名で活動するインフルエンサーで、広告代理店「Solarie」社長の黒木麗香被告に、東京地裁が懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。法人としてのSolarieには罰金4000万円が命じられた。

宮崎麗果氏インスタグラムより
架空経費で約1億5700万円を脱税
黒木被告は、2021年1月期と2023、2024年1月期の計3年間、架空の業務委託費を計上するなどして約4億9600万円の所得を隠し、法人税約1億2600万円を脱税した。
さらに、2022年2月から2024年1月までの間に消費税約3100万円を免れ、脱税額は合計約1億5700万円に上った。
単なる申告漏れや経理上のミスではない。架空費用をつくり、課税所得を意図的に圧縮するという計画的な犯行だった。
東京地裁も「納税額を減らしたいという身勝手な考えで犯行に及んだ責任は重い」と指摘している。
全額納付すれば実刑判決は免れるのか
それでも実刑判決にはならなかった。
裁判所は、黒木被告が事実を認めて反省していることに加え、修正申告を行い、脱税した税金を全額納付したことなどを考慮した。
しかし、ここに一般の納税者との大きな感覚のズレがある。
税金を全額納付することは、本来払うべき金を払ったにすぎない。摘発された後に納税したからといって、架空経費を使って巨額の税金を免れようとした行為そのものが消えるわけではない。
まじめに源泉徴収され、物価高の中でも消費税や社会保険料を払い続けている会社員や事業者から見れば、「1億円以上を意図的に脱税しても、後から払えば執行猶予なのか」という疑問が出るのは当然だろう。
「華やかな生活」を支えた不透明な会計
黒木被告は、SNSで美容商品などを紹介し、成果報酬型広告によって多額の収入を得ていた。フォロワー数や知名度がそのまま広告収入に変わる、典型的なインフルエンサービジネスである。
この世界では、個人の生活、会社の事業、広告宣伝、接待、衣服や旅行などの境界が曖昧になりやすい。経費の範囲が広がり、取引の実態も外部から見えにくくなる。
しかし、SNS上でどれほど華やかな成功を演出しても、その利益は税金を納めた後のものでなければならない。フォロワーの共感を収益化しながら、社会を支える納税だけを免れようとするなら、ビジネスの信頼性そのものが崩れる。
問われるインフルエンサー経済の信用
今回の事件は、一人の経営者による脱税事件にとどまらない。
企業はインフルエンサーに広告費を払い、消費者はその発信を信じて商品を購入する。その市場が拡大するほど、広告取引や報酬、経費処理の透明性が求められる。
従来型の企業には厳しい会計監査や内部統制が要求される一方、個人の人気を基盤とする事業では、巨額の資金が動いても経営管理が追いついていない場合がある。
「キラキラした生活」の裏側で、架空経費による脱税が行われていたとすれば、傷つくのは本人のブランドだけではない。インフルエンサー広告全体への信頼も損なわれる。
巨額脱税でも全額納付すれば執行猶予になるという判決は、法律上の量刑判断としては説明できても、国民の納得を得られるとは限らない。税の公平性は、制度だけでなく、「逃げ得を許さない」という社会の信頼によって支えられているのである。







コメント