熊本県で最大震度7を観測した地震の後、大型商業施設「イオンモール熊本」(同県嘉島町)で発生した爆発を巡り、死亡したテナント従業員2人が、いったん屋外へ避難した後、売上金を金庫へ戻すため館内に入っていたことが分かった。
雑貨店「ハビタ」を運営するハビタ(熊本市)の上野景真社長が2日、熊本市内で報道陣の取材に応じ、会社側が売上金を金庫へ戻すよう求めていたことを認めた。
上野社長は「痛恨の極みだ。両遺族に申し訳ない」と謝罪した。

ハビタ イオンモール熊本HPより
「会社の人から頼まれた」
亡くなった従業員の1人は、ハビタ社員の大竹玖瑠美さん(22)。
大竹さんは地震発生後、同僚とともに屋外へ避難していた。駐車場で親族と会った際、「会社の人から頼まれた」と話し、再び館内に入ったという。その約5分後に爆発が発生し、同僚とともに巻き込まれた。
上野社長の説明によると、会社幹部から指示を受けた店長が、死亡した従業員に対し、「もし入れるなら売上金を金庫に戻してほしい」と伝えた。
ハビタの店舗は施設の2階にあり、売上金を保管する金庫は1階に設置されていたという。
上野社長は大竹さんの通夜に参列し、遺族に謝罪した。その後の取材で、売上金を戻すよう求める指示があったことを明らかにした。
イオンのマニュアルでは再入館を禁止
イオンの吉田昭夫社長は7月29日の記者会見で、地震などの災害時には、避難後に館内へ戻らないことがマニュアルで定められていると説明していた。
今回、施設側の避難方針とは異なる指示がテナント側から出ていたことになる。施設の避難指示が各テナントにどのように伝えられていたのか、店長や従業員が再入館禁止を認識していたのかが、今後の検証課題となる。
また、「もし入れるなら」という条件付きの依頼であっても、会社幹部や店長から従業員に伝えられた場合、事実上の業務上の指示と受け止められる可能性がある。
特に災害直後の混乱した状況では、従業員が自ら危険性を判断し、会社側の依頼を拒否することは容易ではない。
指示の経緯を検証へ
企業には、従業員が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう配慮する義務がある。今回の指示について法的責任が生じるかどうかは、爆発の原因や当時の館内の状況、会社側が危険をどの程度認識できたかなどを踏まえて判断されることになる。
今後は、誰が売上金の回収を決めたのか、会社幹部から店長、従業員へどのように指示が伝わったのか、施設側の再入館禁止の方針が共有されていたのかについて、詳しい調査が求められる。
売上金や商品を守るための行動が、従業員の生命を危険にさらすことがあってはならない。今回の事故は、災害時におけるテナント企業の指揮命令系統と、大型商業施設全体の避難ルールの実効性を改めて問うものとなっている。







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