
群馬県の「中小企業モデル工場」指定企業の更新が発表された。
私は、1999年4月から2017年1月まで「群馬県中小企業モデル工場」指定企業に勤務していたので、この制度について以前から強い疑問を持っている。というのも、指定更新に際して審査が真面目に行われているようには見えず、制度そのものが惰性で継続されているように見えるからだ。
制度が創設された当時には何らかの意義があったのだろう。
高度経済成長期の日本では、製造業の生産性向上が国家的課題だった。整理整頓、安全管理、品質管理、作業効率化などを徹底する「模範工場」を示すことには意味があったのである。
しかし、今は令和である。
人口減少が進み、人手不足が深刻化し、AIが急速に普及しつつある現在、企業に求められる能力は大きく変化している。
それにもかかわらず、群馬県は半世紀以上前の価値観で「モデル工場」を評価し続けてはいないだろうか。
本当に模範とすべき企業とは何だろう。
私は次のような企業こそ評価されるべきだと思う。
- 若者が入社したいと思う会社
- 離職率の低い会社
- 利益率の高い会社
- 価格決定権を持つ会社
- 自社ブランドを持つ会社
- 従業員の給料をインフレ率よりも高く上げ続けられる会社
- 10年後も生き残る可能性が高い会社
逆に言えば、工場がきれいであっても、
- 若者が集まらない
- 外国人低賃金労働者に依存している
- 利益率が低い
- 毎年人が辞めていく
のであれば、それを「モデル」と呼ぶことにどれほどの意味があるのだろうか。
日本の製造業が直面している最大の課題は、「良い工場を作ること」ではなく、「良い会社を作ること」である。
価格決定権を持ち、高い付加価値を生み出し、その利益を従業員に還元できる企業を増やさなければならない。
私はこれまで、相模屋食料、町村農場、オーデマ・ピゲなどを例に、価格決定権を持つ企業の重要性を論じてきた。これらの企業に共通しているのは、単に製品を作っているのではなく、自ら価値を定義し、自ら価格を決めていることだ。
一方、多くの中小製造業は依然として下請け構造に依存し、価格決定権を持たないまま人手不足と低収益に苦しんでいる。
もし行政が本当に模範企業を示したいのであれば、評価基準そのものを見直すべきではないか。
例えば、
- 一人当たり付加価値額
- 営業利益率
- 平均給与の伸び率
- 従業員の定着率
- 自社製品売上比率
- 海外売上比率
などを評価対象にしてはどうだろう。
高度成長期には「良い工場」が日本を豊かにした。しかし、人口減少時代には、「良い経営」が日本を豊かにする。
中小企業モデル工場ではなく、モデル経営。
今こそ、行政が評価する対象そのものを変える時期に来ているのではないだろうか。







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