マリーンズ一筋、益田直也はなぜ250回も最後を任されたのか

史上5人目の250セーブ

千葉ロッテマリーンズの益田直也が8月4日の西武戦で、プロ野球史上5人目となる通算250セーブを達成した。

2点リードの9回に登板し、渡部健人を投ゴロ、外崎修汰を左飛、岸潤一郎を右飛に打ち取った。わずか8球で三者凡退。マリーンズの投手として初めて250セーブに到達し、平成生まれの投手としても初めて名球会の入会資格を満たした。

マウンドを降りた益田は、記録達成後の会見で「本当にホッとしたっていうのが一番」と語った。歓喜より先に安堵が口をついたところに、この記録までの長い道のりが表れている。

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益田は2011年のドラフト4位で入団し、2012年からマリーンズ一筋で投げてきた。新人年には72試合に登板して41ホールド、防御率1.67で新人王を獲得。翌2013年には33セーブを挙げ、早くも守護神の座をつかんだ。

しかし、そこから250セーブまで一直線だったわけではない。

守護神を外れた時期もあった

2014年は防御率4.94、2017年は5.09。抑えだけでなく、中継ぎとして投げた時期もあった。2019年に27セーブを挙げると、2020年は31セーブ、2021年には自己最多の38セーブを記録したが、その後も成績には波があった。

2025年は22試合の登板で5セーブ、防御率4.35。通算250セーブまで残り2としながら、記録達成は翌年へ持ち越された。今季は横山陸人が開幕から主にクローザーを務め、益田は限られた登板機会の中で節目の数字を目指してきた。

大記録が目前にあっても、個人の都合だけで9回に投げられるわけではない。

セーブはチームがリードをつくり、監督が登板を決断し、投手が最後まで勝利を守って初めて記録される。打者の安打や本塁打とは異なり、挑戦する機会そのものを自分一人ではつくれない。

しかも、後継者の横山が結果を残している。過去の実績があるからといって、益田の個人記録のために若い投手の役割を変更するわけにはいかない。チームの勝利を優先すれば、実績のあるベテランにも順番が回ってこないことがある。

益田は250セーブ達成後、横山に対する悔しさは残っていると認めながらも、横山の失敗を願ってはいないと明言した。後輩にも頑張ってほしいと話す一方、自分が任されれば今でもできるという自信も示している。

後輩の成功を認めながら、自分の競争心も失わない。

ベテランが組織の中に残るために必要なのは、若手に席を譲って静かに引き下がることでも、過去の実績を振りかざすことでもない。役割が変わっても準備を続け、呼ばれた場所で結果を出すことである。

795試合が示すもの

250セーブ到達時点で、益田の通算登板は795試合だった。250セーブ達成者5人の中では、到達時の登板数が最も多い。

通算成績は35勝56敗、250セーブ、176ホールド、防御率2.97。プロ入り後、一度も先発登板をしていない。マリーンズのブルペンだけで積み上げてきた数字である。

この795試合という数字を、記録達成まで時間がかかった証拠と見ることもできる。しかし別の見方をすれば、795回も一軍のブルペンに呼ばれ、勝敗を左右する場面で投げる資格を与えられてきたということだ。

益田の価値は250セーブだけではない。

176ホールドという数字は、守護神を外れた時期にも中継ぎとしてチームを支えた証しである。9回を任されなくなったからといって役割を拒むのではなく、7回や8回でもマウンドに上がった。その積み重ねがあったからこそ、再び最後のマウンドを任された。

救援投手は成功して当然とみなされ、失敗だけが強く記憶されやすい仕事である。

先発投手なら数点を失っても「試合をつくった」と評価されることがある。しかし、抑え投手は1点を失っただけで、試合全体の責任を背負わされることがある。何十試合も抑えた事実より、ひとつの逆転負けのほうがファンの記憶に残りやすい。

250セーブに必要なのは、数年間だけ圧倒する能力ではない。

打たれた翌日にも球場へ来て、肩をつくり、自分の名前が呼ばれるのを待つ力だ。抑えを外れた時にも、自分の役割を見失わずに準備を続けなければならない。

失敗しない人より、戻ってくる人

組織では、失敗しない人が評価されやすい。

だが、失敗しない人の中には、失敗する可能性のある仕事を引き受けない人もいる。責任ある場面を避け、無難な仕事だけを選べば、大きな失点をせずに済むからだ。

抑え投手には、その逃げ道がない。

チームが8回まで積み上げてきたリードを預かり、自分の失敗がそのまま敗戦につながりかねない場面に立つ。それでも翌日には、何事もなかったように再び準備しなければならない。

長く働く人に本当に必要なのは、失敗しない能力ではない。失敗した後に戻ってくる能力である。

同時に、組織の側にも、もう一度任せる力が必要だ。

失敗した人間を即座に切り捨てていては、経験は組織に蓄積されない。マリーンズは益田を抑え、中継ぎ、そして再び重要な場面で使い続けた。

もちろん、過去の実績だけでポジションを保証したわけではない。今季の9回は横山が担っており、益田もその競争を受け入れている。年功序列でベテランを優遇するのでもなく、少し成績が落ちただけで見限るのでもない。その時々の実力とチーム事情に応じて役割を与えてきた。

益田の250セーブは、天才が一直線に到達した華麗な成功物語ではない。

打たれ、役割が変わり、成績が落ち込む時期も経験しながら、再びマウンドへ戻ってきた投手の記録である。

マリーンズ一筋15年。益田直也が250回も最後を任された理由は、失敗しなかったからではない。失敗した後も準備を続け、任された時にまた立ち上がったからだ。

完璧ではなかったからこそ、この250という数字は重い。

【参考】

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