政府は8月5日、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間、現在の8%から1%に引き下げる基本方針を閣議決定した。中低所得者には1%相当を給付し、「実質ゼロ」にするという。
ただし厳密には減税法案が国会を通ったわけではない。政府は今後、制度の詳細を詰め、秋の臨時国会に関連法案を提出する予定だ。それでも、自民党内の手続きと閣議決定という最大の政治的関門は越えた。不思議なのは、この減税案を心から歓迎している政党がほとんど見当たらないことだ。

減税派まで反対する欠陥だらけの減税
自民党内の財政規律派は、年間約5兆円の財源が示されていないことや、社会保障財源への影響を問題視してきた。一度1%に下げた税率を2年後に8%へ戻せば、事実上の「7%増税」と批判され、選挙を戦えなくなるという懸念も強い。
実際、自民党税制調査会の役員会では、約7割が反対または慎重論だった。税調副会長の古川禎久氏が反対の意見書をだし、インナーと呼ばれる幹部だった小渕優子氏は税調を辞任した。
野党もこの案を歓迎していない。国民民主党や中道改革連合などは、減税よりも早く実施できる現金給付を優先すべきだと主張した。チームみらいは食料品減税そのものに反対している。野党の中には一律5%や食料品の恒久ゼロを掲げる政党もある。
2年間だけ1%に下げ、給付を組み合わせる政府案は、彼らにとっても中途半端な制度である。つまり今回の案は、与野党の最大公約数ではない。各党の政策を少しずつ薄めて混ぜた結果、誰の持論でもない制度ができあがったのである。
高市首相がトップダウンで党幹部の頭越しに決めた
それでも案が通った最大の理由は、高市首相がトップダウンで結論を出したからだ。社会保障国民会議は与野党の意見をまとめられず、最終的に各党の主張を併記した。普通なら「合意できなかった」という結論である。
ところが高市首相は、その翌日の7月30日に1%案を正式表明した。その前日には麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長への根回しを済ませ、麻生氏は「私は反対が首相が決めたのならしょうがない」と言った。
自民党税調と国民会議との全体会合では、75人のうち8割以上が賛成に回った。賛成派には出席を促す動員もあったとされる。2月の衆院選で初当選した議員や、高市人気に支えられて当選した高市チルドレンと呼ばれる1年生議員が、この逆転をもたらしたのだ。
党内基盤の弱い首相を「高市チルドレン」が支えた
高市首相は世論調査では高い支持率を維持しているが、自民党内に長年かけて築いた大派閥や強固な議員集団を持っているわけではない。その弱点を埋めたのが、2月の衆院選で初当選した議員たちだった。
自民党は高市人気を追い風に歴史的な大勝を収め、多数の新人議員を国会に送り込んだ。彼らの多くは、地元で個人的な支持基盤を築いて当選したというより、「高市旋風」に乗って議席を得た。
チルドレンの1人は「高市氏のおかげで当選したのだから意向に逆らえるはずがない」と語っている。(Reuters Japan)これは高市首相にとって大きな政治的資産となった。党内基盤の弱い首相が、総選挙によって自分を支持する議員集団を一挙に生み出し、古い党内秩序を押し切ったのだ。
彼らは政策の中身を十分に理解した上で賛成したわけではないが、「公約を守らなければ信用を失う」という声には大きな拍手が起き、制度設計の不備を指摘する反対意見への拍手はまばらだった。
こうして高市首相は、派閥という伝統的な党内基盤の代わりに、選挙で生まれた新人議員の忠誠心を利用して減税案を通した。党内民主主義というより、「高市人気」による自民党の構造変化だった。






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