W杯の商業価値を「資金化」
国際サッカー連盟(FIFA)が、ワールドカップの商業権を外部の民間投資家に開放するため、新会社「FIFA Forward Enterprise」を設立しようとした計画が、FIFA内部を揺るがす大問題に発展している。
背景にあるのは、W杯が生み出す巨額の商業価値を積極的に資金化する構想だ。FIFAは新会社にW杯などの放映権、スポンサー権、チケット、ライセンスなどを集約し、企業価値を約200億ドルと評価。その最大20%を外部投資家に売却し、約42億ドルを調達する計画だった。
「将来の収益」を先取りする構想
FIFAの説明では、調達した資金を各国サッカー協会への育成・強化支援に回し、「FIFA Forward」による分配を大幅に増やすことが狙いだった。
つまり、W杯が将来生み出す収益を先に資金化し、それを世界のサッカーの発展に使うという構想だ。
しかし、問題はその方法にある。
W杯という世界最大級のスポーツイベントの商業権を一つの会社に集め、そこに民間資本を入れれば、FIFAの収益構造そのものが変わる。しかも、AFCやCONCACAFなどは、この計画をメディア報道で初めて知ったとされ、十分な協議を受けていなかったことに強く反発した。
AFC・UEFA・CONCACAFが異例の共同声明
こうした中、アジア・サッカー連盟(AFC)、欧州サッカー連盟(UEFA)、北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)は10日、異例の共同声明を発表した。
3連盟は今回の問題について、「単なる手続き上のミスではなく、信頼を損なう重大な誤りだ」と批判し、第三者による調査を求めた。
さらに、「過去10年の成長は1人の力によるものではない」と指摘。「サッカーを支配するのではなく、奉仕するリーダーシップ」のために団結する必要があると強調した。
インファンティノ会長への異例の異議申し立て
これは事実上、インファンティノ会長の権力集中に対する正面からの異議申し立てだ。

FIFAジョヴァンニ・ヴィンチェンツォ・インファンティノ会長
インファンティノ氏は2027年のFIFA会長選を控えている。加盟協会への巨額の資金配分を可能にする仕組みを会長主導で作ることになれば、結果として会長の影響力をさらに強めることにもなる。
もちろん、インファンティノ氏が会長選で自らの影響力を強めるために子会社設立を進めたと断定できる証拠は現時点ではない。ただ、W杯というFIFA最大の収益源を新会社に集約し、民間資金を導入し、その資金を加盟協会に分配する構想が、会長の権限と影響力を強める可能性を持っていたことは否定できない。
問われる「誰のためのFIFAか」
今回の問題の本質は、42億ドルの資金調達そのものではない。
「W杯という世界のサッカー界全体の財産を、誰が、どのようなルールで動かすのか」
いま問われているのは、まさにFIFAのガバナンスそのものだ。







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