「タトゥーを入れるやつはバカ」は本当か?

黒坂岳央です。

先日、「タトゥーを入れるやつはバカ」という動画が話題になり、それに賛同する動画や意見が続いた。一方で、当然ながら反対意見も出ている。「海外では普通なのに日本は遅れている」「タトゥーを否定するのは古い世代だけ」といった意見である。

個人的な意見を言えば、筆者はタトゥーを入れている人が全員バカだとは思わないが、タトゥーを入れると「バカだと思われても不思議ではない」と思っている。

念のためにいうが「タトゥーを入れている人はバカ」と言っているのではない。加えて「やめろ」ともいっていない。好きにすればいい。

持論を述べたい。

Denis Novikov/iStock

タトゥーは簡単に消せない

まず、一番大きいのは不可逆性である。

タトゥーは髪型などと違ってそう簡単に変えられない。一応、レーザーなどで除去することはできるが、時間も費用もかかる。完全に元の状態に戻るとは限らない。

20歳の自分がタトゥーを支持しても、40歳の自分では価値観が変わるかもしれない。

米国Pew Research Centerの調査では、タトゥー保有者の24%が後悔を口にしている。4人に1人だ。

一度入れると簡単に消せず、多額のコストがかかるものを将来価値観の変化を想定せず入れてしまうのは「雑な判断をする人」と解釈する人は少なくない。

「海外では普通」という誤解

タトゥーに否定的な意見をいうと、「日本が遅れているだけで海外ではタトゥーなんて普通」という反論を必ず見る。

数字を見てみるとアメリカでは成人の32%、18~29歳の若者は41%である。これを見て「日本は遅れている」と言う人がいるが、筆者は逆の解釈をする。成人全体なら68%と「3分の2が入れない判断」をしている。つまりアメリカでも、タトゥーを入れていない人の方が多数派といえる。

さらに、タトゥーを入れていないアメリカ人の85%は、今後タトゥーを入れる可能性が低い、または全くないと回答しているのだ。

以上を「海外ではタトゥーを否定する人間は時代遅れ」という意味に変換するのは無理がある。社会全体がタトゥーを肯定しているわけではないし、タトゥーのある人に対して29%は、「より悪い印象」を持つと答えている。肯定的な印象を持つ人はわずか5%だった。

アメリカですら、「誰も気にしていない」わけではない。

スポーツ選手やアーティストで反論する

「メッシもレブロンもタトゥーだ=だからタトゥーはおかしくない」という反論もよく見るがこれはまったく通らない論法だ。

アスリートやアーティストの市場価値は、パフォーマンス指標だけで決まる。得点、勝率、興行収入、再生数。この軸で評価が完結するため、外見の逸脱は評価に入り込む余地がない。

一方、医師や会社員、公務員は能力に加えて信頼度や協調性という代理変数込みで評価される。ここでは外見そのものが評価対象になる。

実際、タトゥーを入れている本人も人生をかけた手術や訴訟を前にすれば、積極的にタトゥー入りの医師や弁護士を選ぶ人はいなくなる。

タトゥーが許されるかどうかは「有名かどうか」ではなく、その職業の評価軸に外見が組み込まれているかどうかで決まる。パフォーマンス一本で評価される世界の例外を、複合的に評価される一般社会に持ち込むのがそもそも比較として成立していない。

入れた後に文句をいう

タトゥーを入れること自体を禁止しろとは思わない。自分の身体なのだから好きにすればいい。だが自由には責任が伴う。それは当然受け入れるべきである。

日本では現在も、タトゥーを理由に温泉、銭湯、プールなどの利用を制限する施設が存在する。「なぜ自分だけ入れないのか。時代遅れだ」と憤る人がいる。

だがタトゥーを入れる際にそうした制約がついてくることは明らかである。自分の意思で入れた責任に文句を言うのは、例えるとタバコや酒で健康を害して怒り出すのと同じくらいおかしなことをやっている。

さらに「タトゥーに偏見の目で見るな」も通らない。タトゥーを入れる自由もあれば、それを見て否定的な気持ちになるのも相手の自由だからだ。

もちろん、タトゥーを理由に他人を侮辱していいという話ではないが、「タトゥーを悪く見るな」は言えない。それなら「嫌ならやらなければいいのでは」となるからだ。

「偏見」ではなく「シグナル」

人間は他人の頭の中を見ることができない。だから外見や行動から相手を推測する。

アメリカ人の中にも否定的に見る人がいる以上に、日本人にとってタトゥーは良い印象を持たない傾向にある。ジムやプール、銭湯で禁止されていることからも「悪い」連想をしやすい環境だ。

だがもっと根本的な理由は「わざわざ自分の意思で、社会的に否定的に思われやすく、不可逆的なことをあえてした人」「自由を主張するのに付帯する責任には言及しない」という「反社会性を感じさせる思考と行動」にリスクを感じていると筆者は見ている。

自分は人生の中で、タトゥーを入れている人との出会いもあった。中には普通の人もいたが、どちらかといえば犯罪を犯して捕まった人や暴力的、攻撃的な人、付き合いづらい自我強めの人も多かった。こんな一個人の体験は全体を示すものではまったくないということを理解した上で言うが、自分個人はこの経験からも彼らと積極的に関わりたいシグナルと思っていない。

タトゥーを入れている人をバカとは思わない。賢い人が1人いればこの論は否定される。だが、タトゥーを入れている人が相対的にバカと思われやすい、は矛盾せずに成立すると思っている。

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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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