国債の利息は日銀が受け取るから心配ない→それ完全なデマや

本日、日本国債が暴落して10年国債の金利が3%を超えようとしています。
注:国債は価値が下がるほど金利が上がります。

8月18日午前11時で2.947%。前日の17日には一時2.925%をつけて、これは1996年10月以来、29年10か月ぶりの高さだそうです。29年ぶりって。バブル崩壊の後始末をしていた頃の金利ですよ。

で、こういう話をすると必ず湧いてくるのが、これ。

よく見る反論(デマ)

「国債の利息は日銀が受け取るんだから、結局は国庫に戻ってくる。だから利払費が増えても財政は心配ない」

これ、完全なバカデマ。YouTubeでこんなバカデマを流して金を稼いでいるネトウヨやパヨクがたくさんいるのです。そしてそれを丸呑みするバカ。こんなのは日銀の決算書を1回開けば5分で終わる話。今日は数字だけで黙らせます。全部一次資料です。

先に結論
  • 日銀の国債保有比率はもう半分ではない。2026年3月末で42.21%(前年45.95%)
  • 国が払った利払費10.5兆円のうち、日銀が受け取ったのは2兆5,182億円=24%だけ
  • しかも2025年度、日銀は国債から受け取る利息より当座預金に払う利息のほうが1,922億円多かった
  • それでも国庫納付金1兆8,301億円が出たのは、ETFの運用益1兆7,410億円と為替差益7,462億円のおかげ。国債は1円も貢献していない
  • 結局、国が払った利息のうち国庫に戻ったのは17%
反論1|日銀の保有比率は、もう「半分」じゃない

まず前提から間違っています。

日銀の資金循環統計によると、国債等(国庫短期証券を含む)の保有比率は2026年3月末で中央銀行が42.21%。1年前の2025年3月末は45.95%でした。つまり減っている

当たり前で、日銀はいま量的引き締め(QT)をやっているからです。2025年度の1年間だけで長期国債の保有を約43.4兆円減らしたと決算書に書いてある。これからも減ります。

ぜんぷ日銀という馬鹿は置いといて、「半分持ってるから半分戻る」の時点で、もう前提が崩れている。

反論2|4割持っていても、受け取る利息は4分の1しかない

ここが一番効きます。

2025年度(令和7年度)、国が一般会計で払う利払費は10.5兆円(当初予算)。対して日銀が国債から受け取った利息は2兆5,182億円

4割強持っているのに、受け取る利息は24%。半分どころか、4分の1です。

なぜか。日銀が抱えているのは、異次元緩和のときにゼロ金利で買い込んだ低クーポン債だから。日銀の保有国債の利回りは、受取利息2兆5,182億円を保有残高で割るとおよそ0.5%。国全体の平均利率(約1.1%)の半分以下です。

要するに日銀が持っているのは「昔の激安プラン」の契約。残高だけデカくて、月々入ってくる金はショボい。これから金利が上がって国が高い利息を払うようになっても、その高い利息を受け取るのは日銀じゃなくて銀行・生保・海外投資家です。

反論3|そもそも2025年度、日銀は「もらうより払うほうが多い」

ここでトドメ。

日銀は国債の利息をもらう一方で、民間銀行が日銀に預けている当座預金に対して利息を払っています(補完当座預金制度利息)。ゼロ金利のときはタダ同然でしたが、利上げした今は違う。

図1 日銀の国債利息(受取)と補完当座預金制度利息(支払)の推移。2023年度は+1兆5,237億円のプラスだったが、2025年度は▲1,922億円のマイナスに転落した
国債から受け取った利息 当座預金に払った利息 差引
2023年度(令和5年度) 1兆7,124億円 1,888億円 +1兆5,237億円
2024年度(令和6年度) 2兆774億円 1兆2,517億円 +8,257億円
2025年度(令和7年度) 2兆5,182億円 2兆7,105億円 ▲1,922億円

出所:日本銀行 第139〜141回事業年度決算(損益計算書)

2年で1.7兆円ぶん、ひっくり返っている。2025年度は通期で初の「逆ざや」です。

つまり「国債の利息は日銀が受け取るから大丈夫」どころか、日銀は国債の利息を全部もらっても、当座預金への支払いすら賄えていない。国債から入った金は、その場で銀行に流れて出ていっている。

じゃあ、なんで国庫納付金1兆8,301億円が出たの?

ここで「でも日銀は黒字で、ちゃんと国庫に納めてるじゃないか」と言う人がいる。そのとおりです。2025年度の国庫納付金は1兆8,301億円

じゃあその黒字、どこから出たと思います? 決算書の経常収益を見てみましょう。

日銀の主な収益(2025年度) 金額
指数連動型上場投資信託(ETF)運用益 1兆7,410億円
為替差益 7,462億円
国債利息 2兆5,182億円
貸出金利息 1,869億円
(支払)補完当座預金制度利息 ▲2兆7,105億円

出所:日本銀行 第141回事業年度決算(損益計算書)

わかりますか。国債は差し引きマイナス。黒字を作っているのはETF=日本株の分配金と、円安による為替差益です。

つまりこういうこと

「国債の利息が国庫に戻っている」のではなく、「株の配当と円安が国庫に戻っている」のが実態

国債の心配を、株の配当で埋めて「ほら大丈夫」と言っているわけです。論点が完全にすり替わっている。ww

で、結局いくら国庫に戻ったのか

整理します。

図2 2025年度、国が払った利払費10.5兆円のうち日銀が受け取ったのは2.52兆円(24%)、国庫に戻ったのは1.83兆円(17%)

国が払った利息10.5兆円に対して、国庫に戻ってきたのは1兆8,301億円=17%。しかもその中身は株の配当。

ちなみに日銀の剰余金の処分ルールもよく誤解されています。日銀法53条で法定準備金として5%を積み立て、出資者への配当(年5%=たったの500万円)を引いた残り95%が国庫納付金。2025年度は当期剰余金1兆9,264億円のうち法定準備金963億円、国庫納付金1兆8,301億円。この「95%」だけは、デマを言う人も正しい。だが分母がスカスカなんです。

一撃で黙らせる質問
  • 「2025年度に日銀が国債から受け取った利息と、当座預金に払った利息、どっちが多い?」

答え:払ったほうが1,922億円多い。(日本銀行 第141回事業年度決算・損益計算書)

で、これから金利が上がったらどうなるのか

ここからが本題です。今日2.947%まで来ました。3%はもう目の前。仮に4%まで行ったらどうなるか。

図3 普通国債1,145兆円が各金利水準で全部借り換わったときの年間利払費。4%なら45.8兆円で令和8年度の税収83.7兆円の55%に達する

令和8年度末の普通国債残高の見込みは1,145兆円(対GDP比166%)。これが4%で全部借り換わると、年間の利払費は45.8兆円。同じ年の税収は83.7兆円ですから、税収の55%が利払いで消える

もちろん一晩でそうはなりません。国債の平均残存は長いので、借り換えが一巡するまで10年以上かかる。だからこれは「終着点の絵」です。ただし途中の絵も財務省自身が出している

令和8年度 令和9年度 令和10年度 令和11年度
前提の10年国債金利 3.0% 3.2% 3.4% 3.6%
利払費 13.0兆円 15.5兆円 18.5兆円 21.6兆円
さらに金利が1%上振れした場合 +0.8兆円 +2.1兆円 +3.8兆円

出所:財務省「令和8年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(試算-1)

財務省の前提ですら3年後に利払費21.6兆円。そこから1%上振れれば25.4兆円で、いまの税収の3割です。しかもこの前提の3.0%は、今日すでに2.947%まで来ていて崩れかけている

おまけ|日銀の帳簿はもっとひどい

金利が上がると、日銀が抱えている国債の含み損も膨らみます。2026年3月末の決算に、こう書いてあります。

日銀の保有有価証券(2026年3月末) 帳簿価額 時価 差額
国債 530兆8,695億円 485兆4,280億円 ▲45兆4,415億円
ETF 37兆1,214億円 94兆1,871億円 +57兆657億円

出所:日本銀行 第141回事業年度決算「保有有価証券の時価情報」

国債の含み損45兆4,415億円。一方で日銀の自己資本(資本金+法定準備金+引当金)は14兆7,326億円含み損は自己資本の3倍です。

時価評価したら即・大幅債務超過。それを救っているのがETFの含み益57兆円、つまり日本株です。

日銀は償却原価法なので含み損は損益計算書に出ません。だから「帳簿上は問題ない」で済んでいる。でも冷静に考えてください。日本の中央銀行の財務を支えているのが、国債ではなく日本株って、それでいいんですかね。

しかも金利4%は株にも効きます。最後の砦も同時に痩せる

まとめ

「国債の利息は日銀が受け取るから心配ない」は、4段階で崩れます。

デマが崩れる4段階
  • 保有比率が半分ない → 42.21%で、QTでさらに減っていく
  • 受け取る利息は利払費の24% → 低クーポン債しか持っていないから
  • その日銀が逆ざや → 2025年度は払うほうが1,922億円多い
  • 黒字の中身は株と円安 → 国債は1円も貢献していない。国庫に戻ったのは利払費の17%

そしてこれから金利が上がると、当座預金への付利がさらに膨らんで逆ざやは拡大します。日銀は「国庫に納める側」から「国庫に納めない側」に回る。国庫納付金がゼロになる日は、そう遠くない。

金利が上がって困るのは国だけじゃない。日銀の帳簿も、地銀・信金の債券も、あなたの住宅ローンの固定金利も、全部同じ方向に効きます。「日銀が受け取るから大丈夫」と言ってる人は、決算書を1回も開いたことがないということです。

アホのMMTやリフレ派は数字で殴りましょう。以上。

この記事で使った数字の出所
  • 日本銀行「第141回事業年度(令和7年度)決算等について」(国債利息/補完当座預金制度利息/ETF運用益/為替差益/当期剰余金/法定準備金/国庫納付金/保有有価証券の時価情報/自己資本)
  • 日本銀行「第139回事業年度(令和5年度)決算等について」「第140回事業年度(令和6年度)決算等について」
  • 日本銀行「2026年第1四半期の資金循環(速報)参考図表」(中央銀行の国債等保有比率 42.21%)
  • 財務省「令和7年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(利払費10.5兆円)
  • 財務省「令和8年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(利払費13.0→21.6兆円、金利1%上振れの影響額)
  • 財務省「我が国の財政事情(令和8年度予算政府案)」(普通国債残高1,145兆円、税収83.7兆円、国債費31.3兆円)
  • 10年国債利回り2.947%は2026年8月18日11:00時点。8月17日の2.925%・29年10か月ぶりは報道ベース

※ 利払費(一般会計・普通国債中心)と日銀の国債利息(財投債・国庫短期証券を含む)は、厳密には対象範囲が一致しません。24%・17%という比率は概算です。図3の金利水準別の利払費は当方試算です。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年8月18の記事より転載させていただきました。

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