大阪・関西万博のシンボルとなった「大屋根リング」の建設工事をめぐり、不正な工事代金の請求が行われていた疑いが浮上した。大阪府警は8月19日、竹中工務店の元大阪本店総括作業所長、河井辰巳容疑者(61)を背任容疑で逮捕した。捜査関係者によると、河井容疑者は工事に関わった下請け業者に指示し、竹中工務店に工事費を水増し請求させた疑いが持たれている。
万博の象徴を担当した現場責任者
大屋根リングは全周約2kmに及ぶ巨大木造建築で、工事は3工区に分割された。このうち竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木のJVが西工区約700mを担当していた。竹中工務店によると、西工区ではデジタル技術などを活用し、当初予定より約2カ月早く上棟を実現したとしている。

大阪・関西万博HPより
その現場責任者だったのが河井容疑者だ。2025年にはテレビ番組の取材にも登場し、ロボットやドローン、AIを導入した工事について説明。「未来建築の実験場」を掲げ、「人にやさしい現場」を目指したと語っていた。
水増し分を自宅改装に流用か
捜査では、河井容疑者が下請け業者と共謀し、本来の工事費に金額を上乗せして竹中工務店側に請求させ、その水増し分の一部を自宅の改装など私的な目的に使った疑いが持たれている。府警は下請け業者から河井容疑者側へのキックバックがなかったかについても詳しく調べている。
もちろん、現段階では逮捕容疑であり、今後の捜査や司法手続きによって事実関係が明らかにされる必要がある。
巨大プロジェクトの「チェックの穴」
問題が事実であれば、問われるのは一個人の不正だけではない。万博の大屋根リングは会場を代表する公共性の高い巨大プロジェクトであり、西工区だけでも複数社によるJVで施工された。大屋根リング全体の建設費は約344億円とされ、建設費の高騰をめぐって開催前から厳しい視線が注がれていた。
巨大工事では元請け、JV構成会社、一次下請け、二次下請けと契約関係が複雑になり、工事内容や追加費用の妥当性を外部から確認しにくくなる。そこに現場責任者の大きな裁量が重なれば、チェック体制が形骸化する恐れもある。
「最大の木造建築物」としてギネス世界記録にも認定され、万博のレガシーとして一部保存も進められている大屋根リング。 その舞台裏で工事費が私物化されていたとすれば、「未来社会」を掲げた万博にとって皮肉な不祥事となる。
捜査の焦点は、水増し請求がどこまで広がっていたのか、周囲に認識していた関係者はいなかったのか、そして竹中工務店やJVの内部チェックがなぜ機能しなかったのかに移ることになりそうだ。








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