SOFの新しい戦い方:「単独で完結する部隊」から「統合を加速させる部隊」へ(辻 一平)

NSBT Japan

NSBTアナリスト 辻 一平

2026年5月、米フロリダ州タンパで開催された特殊部隊(SOF)に特化した展示会「SOF WEEK」で、特殊作戦コマンド(SOCOM)、北方軍(NORTHCOM)、南方軍(SOUTHCOM)の各司令官たちは、特殊作戦部隊、すなわちSOFの将来像について重要なメッセージを発信した。

登壇したのは、SOCOM司令官のフランク・M・ブラッドリー海軍大将、NORTHCOM司令官のグレゴリー・M・ギヨー空軍大将、SOUTHCOM司令官のフランシス・L・ドノバン海兵隊大将らである。

議論の中心にあったのは、米国SOFが今後どう国土防衛、同盟国・パートナー国との連携、無人システム、自律技術、サイバー・宇宙・情報作戦と結びついていくのか、との点であった。

一言で言えば、SOFはもはや「単独で完結する精鋭部隊」ではない。むしろ、通常部隊、省庁間組織、同盟国、産業界、そして新しい技術をつなぎ、統合を加速させる存在へと変化している。これは特殊作戦部隊だけの話ではない。現代の安全保障そのものが、単独の組織、単独の装備、単独の作戦では成立しづらくなりつつある。

脅威は国家だけではなく、非国家主体、犯罪組織、民生技術を使いこなす小規模集団へと広がっている。戦場は陸海空だけでなく、宇宙、サイバー、電磁波、情報環境へと拡張している。

その中でSOFに求められる役割は、単に「敵地深くに入り、特殊な任務を遂行すること」ではなくなった。小さく動き、早くつなぎ、必要な瞬間に効果を集中させること。今回のSOF WEEK 2026は、その変化を明確に示していた。

「SOF WEEK 2026」でSOCOM、NORTHCOM、SOUTHCOMの各司令官たちが特殊作戦部隊(SOF)の将来像を語った。
写真はいずれも米フロリダ州タンパ
出展:NSBT Japan撮影

国土防衛は「前方で守る」時代へ

NORTHCOMのギヨー大将が強調したのは、国土防衛を「可能な限り遠方で」実行するとの考え方である。

これは、米本土の防衛を米国内だけで完結させるのではなく、北極圏、カナダ、グリーンランド、バハマ、カリブ海、中央アメリカ、南アメリカといった広大な責任地域で、脅威が本土に近づく前に察知し、抑止し、必要に応じて対処するとの発想である。

ここでSOFに求められるのは、大規模部隊としての力ではない。むしろ、少人数で迅速に展開できる機敏性、特定任務に特化した専門性、現地パートナーと深く連携できる関係構築力である。

SOFは、通常部隊が持つ大規模な戦力を補完する存在でありながら、危機の初期段階で状況を把握し、関係国と接続し、作戦の方向性を整える役割を担う。これは単なる特殊作戦ではなく、戦略的な「初動対応能力」と言える。

特に国土防衛の文脈では、SOFの価値は直接的な戦闘力だけでは計れない。むしろ、相手に対して「どこで」「誰と」「どう」対応されるか分からない」という不確実性を与えることが重要になる。これが、拒否による抑止である。

相手に攻撃の成功を確信させない。侵入、浸透、威圧、犯罪活動、ドローン使用、情報工作などに対して、事前に察知され、妨害され、現地パートナーと連携して対処される可能性を高める。SOFの常続的な配置やパートナーシップは、まさにそのための基盤である。

SOUTHCOMが示す、世代を超えたパートナーシップ

SOUTHCOMのドノバン大将は、西半球における「世代を超えたパートナーシップ」の重要性を強調した。

南米、中米、カリブ海地域では、麻薬密輸組織、越境犯罪組織、非国家主体による不安定化活動が複雑に絡み合っている。これらの脅威は、伝統的な軍事力だけで解決できるものではない。法執行、情報共有、海上監視、国境管理、地域政府との信頼関係が不可欠となる。

そのため、SOUTHCOMにおけるSOFの価値は、単に作戦を遂行することだけではない。現地部隊、沿岸警備隊、警察、情報機関、外交部門とつながり、脅威の変化に応じて任務を素早く組み替えることにある。

ドノバン大将が挙げたエクアドルでの対DTO、すなわち麻薬密輸組織対策の拡大は、その一例である。既存の関係性があったからこそ、任務の拡大や部隊・装備・情報の連携を迅速に進めることができた。ここで重要なのは、パートナーシップは危機が起きてから作るものではないという点である。平時からの関係構築が、有事での速度を決める。SOFの常続的な展開や交流は、その意味で「戦わない抑止力」として機能している。

これは日本にとっても示唆が多い。日本周辺における危機は、いきなり大規模戦闘として始まるとは限らない。海上での不審な活動、離島周辺での圧力、サイバー攻撃、情報操作、ドローンの侵入、民間インフラへの干渉など、グレーゾーンの形で進行する可能性がある。

その時、平時から接続されていない組織は、危機のなかで急に連携することはできない。自衛隊、海上保安庁、警察、消防、自治体、民間事業者、産業界が、どう情報を共有し、どう役割を分担するのか。SOF WEEKで語られたパートナーシップの議論は、日本の危機管理にも直結する。

ウクライナとイスラエルが突きつけた現実

今回の議論では、ウクライナとイスラエルの戦訓が繰り返し取り上げられた。

ウクライナが示した最大の教訓の一つは、無人システムの急速な普及である。ドローンは、もはや一部の先進国だけが保有する高価な軍事技術ではない。安価な市販部品、民生技術、ソフトウェア、通信機材を組み合わせることで、非国家主体や小規模組織であっても、監視、攻撃、妨害、心理的圧力を実施できるようになっている。

一方、ブラッドリー大将が強調したのは、人間の回復力である。ウクライナの戦いは、技術だけでなく、社会の結束、兵士の耐久性、国民の意思が戦争の持続力に直結することを示している。つまり、将来の戦いは「人か技術か」ではない。人間の回復力と、無人・自律システムをどう結びつけるかが問われている。

SOFにとっても、この教訓は重い。小規模で分散した部隊が、通信が制限され、電磁波が妨害され、常にドローンに監視される環境で任務を遂行する。そのためには、単なる装備更新ではなく、訓練、指揮、通信、判断、兵站(たん)の全体を変えなければならない。

ウクライナやイスラエルの教訓は、そのまま米軍に移植できるわけではない。米軍は遠征軍であり、海外に展開し、同盟国やパートナー国と連携しながら作戦を行う。したがって、戦訓は単純な模倣ではなく、自国の作戦環境に合わせて再設計されなければならない。

この点は日本にも当てはまる。ウクライナで有効だった戦術や装備を、そのまま日本に導入すればよいわけではない。日本には島嶼、海峡、都市、山岳、災害対応、法制度、国民保護、民間インフラという独自の条件がある。重要なのは、戦訓の表面を追うことではなく、その背後にある構造を読み取ることである。

SOUTHCOM司令官のフランシス・L・ドノバン海兵隊大将
出典:NSBT Japan撮影

自律戦争は「プラットフォーム」ではなく「データ」の問題である

ドノバン大将は、自律戦争について、特定の機体やロボットを中心に考えるのではなく、データ中心で捉えるべきだと述べている。

これは非常に重要な視点である。自律システムの本質は、ドローンそのものではない。どこで何が起きているのかを把握し、どの情報を誰に渡し、どのタイミングで判断し、どの手段で効果を発揮するのか。その一連の流れを高速化することにある。つまり、自律性とは「機械が勝手に動くこと」ではなく、センサー、指揮統制、通信、データ解析、意思決定、効果発揮を一体化させることである。

SOUTHCOMが2026年4月に設置を表明した米南方軍自律戦争司令部(SAWC:SOUTHCOM Autonomous Warfare Command)の考え方も、ここに位置づけられる。広大な海域、国境、ジャングル、島嶼部を抱える地域では、すべてを米軍だけで監視することはできない。だからこそ、パートナー国と領域認識を共有し、データを流し、必要な効果を素早く集中させる仕組みが必要となる。

これは、日本にとっても示唆が多い。島嶼防衛、海上保安、災害対応、グレーゾーン事態において、重要なのは単体の装備ではなく、情報が流れる仕組みである。ドローンを導入する。センサーを増やす。通信装置を更新する。それ自体は必要である。

しかし、それらが別々に存在しているだけでは、作戦上の価値は限定的である。重要なのは、得られた情報が意思決定につながり、意思決定が現場の行動に変換されることである。その意味で、自律戦争とは「無人機の戦い」ではなく、「データを作戦に変換する戦い」なのである。

小さく、欺瞞的で、遠征的な部隊へ

今回のセッションで印象的だったのは、「大きければよい」という発想への反省である。イラク、アフガニスタンでの長期作戦では、大規模な基地、重い兵站、巨大なデジタル通信網が作戦を支えた。

しかし、将来の戦場では、それ自体が脆弱性となる。大きな基地は発見されやすい。大量の補給線は妨害されやすい。デジタル通信は追跡されやすい。常時接続された部隊は、便利である一方、敵にとっては発見しやすい存在にもなる。そのため、今後のSOFには、より小さく、移動しやすく、欺瞞的で、デジタル足跡を抑えた態勢が求められる。

ただし、単に分散すればよいわけではない。分散した部隊が必要な瞬間に効果を集中できなければ、戦力はばらばらになるだけだ。そこで重要になるのが、自律性、任務指揮、信頼、そして共通の目的理解である。通信が途絶しても、現場が上級指揮官の意図を理解し、自ら判断できること。これが、現代におけるミッションコマンドの核心である。

SOCOM司令官のフランク・M・ブラッドリー海軍大将
出典:NSBT Japan撮影

訓練と演習場の近代化が追いついていない

ブラッドリー大将は、SOCOMが電磁波、仮想空間、通信制限下の環境に対応するため、訓練と演習場を近代化する必要があると述べた。

ここには現実的な課題がある。ドローン、電子戦、サイバー、宇宙、情報作戦を含む訓練を実施するには、従来型の射撃場や演習場だけでは不十分である。電波を使うには周波数管理が必要で、無人機を飛ばすには航空規制が関係する。仮想環境を使った訓練には、デジタル基盤と専門人材が必要となる。さらに、SOCOMの予算は2019年以来、横ばいであるとされる。つまり、新しい戦い方に対応する必要性は増しているが、それを支える訓練環境や投資は十分ではない。

ここにも産業界の役割がある。演習場のデジタル化、仮想訓練、電子戦環境の再現、対UAS訓練、データ解析、通信途絶下の意思決定訓練などは、まさに民間技術が貢献できる領域である。

防衛産業の役割は、完成した装備品を納めることだけではなくなっている。実験、訓練、検証、改善のサイクルに入り込み、現場の課題を技術と運用の両面から解決することが求められている。特に対UASの分野では、脅威の変化が速い。敵が使うドローン、通信方式、飛行高度、攻撃方法は短期間で変化する。そのため、装備を一度導入して終わりではなく、現場からのフィードバックを受けて素早く更新する仕組みが必要となる。

これは、日本の防衛調達や訓練体系にとっても大きな課題である。技術の進化が速い領域では、従来の長い取得プロセスだけでは、現場の脅威に追いつけない。実験、試行、評価、改善を短い周期で回す仕組みが必要である。

サイバー・宇宙・情報作戦は「後付け」ではない

ギヨー大将はこのように強調した。サイバー、宇宙、情報作戦を計画の初期段階から統合する必要性である。従来、これらの機能は作戦計画の後半で追加されることが多かった。しかし、現代の作戦では、宇宙による位置情報や通信、サイバーによる妨害・防護、情報作戦による認知領域への影響が、最初から作戦の成否を左右する。後から「サイバーを足す」「宇宙を使う」「情報発信を考える」では遅い。作戦の設計段階から、これらの専門家を本部プロセスに組み込む必要がある。

これは、組織論としても重要である。専門機能が縦割りのままでは、統合された効果は生まれない。サイバー、宇宙、情報、SOF、通常部隊が、同じ目的に向けて最初から設計されることが求められている。

現代の作戦では、物理的な行動と情報環境での影響が同時に進行する。ある部隊の展開は、敵のセンサーに捕捉されるだけでなく、SNS上で拡散され、世論や政治判断にも影響を与える。サイバー攻撃は通信や電力だけでなく、指揮官の判断速度にも影響する。宇宙アセットは位置情報、通信、監視、ターゲティングに関わる。つまり、作戦は最初から多領域で設計されなければならない。これは、SOFだけでなく、通常部隊、政府機関、産業界にも共通する課題である。

NORTHCOM司令官のグレゴリー・M・ギヨー空軍大将
出典:NSBT Japan撮影

筆者の視点

① 沿岸警備隊との統合が示すもの

SOUTHCOMの文脈では、沿岸警備隊の役割も大きく取り上げられた。海上法執行、麻薬阻止、違法活動の監視、海上領域認識で、沿岸警備隊は不可欠な存在である。特に、軍事作戦と法執行の境界にある任務では、柔軟な権限を持つ沿岸警備隊の存在が大きい。これは日本にとっても非常に重要な論点である。

日本周辺でも、海上保安、警察、自衛隊、自治体、民間インフラ事業者が関わるグレーゾーン事態が想定される。そこでは、軍事力だけでも、警察力だけでも対応しきれない。

必要なのは、各機関が平時から接続され、情報を共有し、役割を理解している状態である。SOF WEEKで語られた米軍と沿岸警備隊の関係は、日本における自衛隊と海上保安庁、警察、消防、民間との連携を考えるうえでも参考になる。

特に、海上における危機は、軍事と法執行の境界が曖昧になりやすい。違法操業、密輸、工作活動、無人機の使用、民間船舶を装った活動など、脅威は軍艦の形で現れるとは限らない。そのため、平時から有事までをつなぐ制度設計、情報共有、共同訓練が重要になる。これは単なる組織間連携ではなく、国家としての危機対応の構造設計の問題である。

② 日本への示唆:装備中心から運用設計中心へ

SOF WEEK 2026で語られた内容は、日本の安全保障にも多くの示唆を与える。

第一に、平時からの接続が有事の速度を決める。危機が発生してから関係を作るのでは遅い。自衛隊、海上保安庁、警察、消防、自治体、民間事業者、産業界が、平時から情報共有と訓練を重ねる必要がある。

第二に、無人機や自律技術は、単体装備ではなくデータと指揮統制の問題として捉える必要がある。ドローンを持つことが目的ではない。センサーから得られた情報を、誰が、どのように判断し、どの行動につなげるのかが重要である。

第三に、通信が途絶しても現場が動ける任務指揮の文化が不可欠である。通信、衛星、ネットワークに依存しすぎる組織は、通信が途絶した瞬間に機能不全に陥る。目的と意図を共有し、現場が自律的に判断できる組織文化が必要である。

第四に、サイバー、宇宙、情報作戦を後付けにしてはならない。これらは専門部門の追加機能ではなく、作戦設計の初期段階から組み込むべき要素である。

第五に、産業界は装備を売るだけでは不十分である。訓練、演習、データ、実験、改善、運用設計に関与し、現場課題を解決するパートナーとなる必要がある。日本では、防衛力強化が装備品の取得として語られやすい。

しかし、今回のSOF WEEKが示したのは、装備そのものよりも、それをどう接続し、どう訓練し、どう運用し、どう意思決定につなげるかが重要だという点である。防衛力とは、保有装備の一覧ではない。それを使いこなし、変化に適応し、必要な瞬間に効果を発揮できる組織能力である。

③ 結論

SOFの変化は、特殊作戦の変化ではなく「安全保障の設計思想」の変化である。

かつてSOFは、少数精鋭による高難度任務、秘匿性の高い直接行動、特殊な環境での作戦遂行能力によって語られてきた。しかし今回の議論で浮かび上がったSOFの姿は、それとは明らかに異なる。

SOFは今、単独で任務を完結させる部隊ではなく、通常部隊、省庁間組織、同盟国、パートナー国、沿岸警備隊、産業界、そして新興技術を結びつける「作戦上の接続機能」として位置づけられつつある。ここで重要なのは、SOFの価値が「強い部隊」から「変化に適応する仕組み」へと広がっている点である。

今回語られた司令官の言葉すべてに共通しているのは、状況の変化が速く、従来の縦割り組織や重い意思決定では対応が間に合わないという現実である。だからこそ、SOFには「小さく動き、早くつなぎ、必要な時に効果を集中させる」役割が求められている。これは、特殊作戦の話にとどまらない。むしろ、これからの防衛組織、危機管理組織、さらには防衛産業に共通する課題である。

日本にとっての教訓もここにある。防衛力強化を装備品の取得だけで捉える限り、変化の速度には追いつけない。必要なのは、装備、情報、人材、訓練、制度、産業を結びつける設計思想である。言い換えれば、これから問われるのは「何を持っているか」ではなく、「それを誰と、どのように接続し、どの速度で運用に変えられるか」である。

SOF WEEK 2026が示したのは、特殊作戦部隊の未来だけではない。それは、変化の激しい時代において、米軍内部の専門部隊の話ではなく、日本の防衛、海上保安、警察、消防、自治体、そして産業界が共有すべき先行事例と見るべきである。結論として、SOFの本質は「特別な任務を行う部隊」から、「不確実な環境で組織と技術を接続し、行動可能な形に変換する存在」へと移行している。

これは、現代の安全保障における最も重要な変化の一つである。そして日本が学ぶべきなのは、SOFの戦術そのものではなく、SOFが体現している接続・適応・即応の設計思想である。

SOFの未来とは、人、組織、技術、同盟、産業を結び、危機の前に備え、必要な瞬間に効果を集中させるための「統合の技術」なのである。日本がこの議論から学ぶべきことは、米軍の特殊作戦部隊をそのまま模倣することではない。重要なのは、変化に適応する組織をどう作るか、現場の問題をどう技術と結びつけるか、平時から有事までをどう一つの流れとして設計するかである。

SOF WEEK 2026が示したのは、未来の特殊作戦ではなく、未来の安全保障のあり方である。そしてその中心にあるのは、装備の多寡ではな(たか)く、接続する力、適応する力、即応する力である。

辻 一平
NSBTアナリスト。元陸上自衛隊特殊作戦群。小部隊戦術、暗所・夜間戦術、市街地戦、特殊作戦および関連装備に精通。目的型組織の構築や自立型人材の育成にも専門的知見を有し、現在は海外における作戦動向、部隊運用、先端装備に関する戦術的・技術的分析と評価を担っている。

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