
小泉防衛相が核戦力や非核三原則に関するタブーなき議論の必要性に言及(26年7月)しました。安全保障政策を担当する官邸幹部も、核兵器所有について議論すべきだとの認識(25年12月)を示しています。
これらの発言は高市首相と共有し、事前にすり合わせているとしか考えられない。高市首相自身も広島での「原爆死没者慰霊式・平和記念式」後の記者会見で、非核三原則について「堅持している」という現状の説明にとどめ、「将来も堅持する」とは述べませんでした。修正を目指したいのでしょうか。
トランプ米大統領も「日韓が独自の核兵器を持つことはあり得る」と述べたことがあります。「米国の負担を減らすためにも、日本は独自の核武装をすべきだ」との論文も発表されています。
実験もせずに危険な核兵器は製造できまい
私が素朴に思うのは、「核実験場もない、確保できない日本が核兵器を開発できるはずはない。非現実的な議論だ」ということです。米国にはネバダ実験場、ロシアにはセミパラチンスクのような核爆発を伴う実験を行う場所があります。日本にはありません。
地震帯、活火山帯が列島を覆う日本が核開発を進めるにあたって、実験場を国内に設けることは不可能でしょう。
Google AIに聞いたところ、「コンピューターによる仮想実験、爆発を伴わない特殊な実験は、シミュレーション技術の進歩によってできる」まで進んでいるとのことです。米国、ソ連は1950年~1990年にかけて2000回以上の核爆発実験をしており、「どうすれば爆発するか、失敗するかのデータがあり、100%に近い確率で核兵器の製造は成功する」そうです。そのような機密データを日本に渡すことはあり得ないにせよ、とにかく核弾頭を製造することは不可能ではないという状況なのでしょう。
核兵器の製造能力は日本にある
日本にはその他、6000発分と言われるプルトニウムがあり、核弾頭を製造可能な能力を持っています。運搬能力についても、宇宙ロケット、ミサイル技術を持ち、核弾頭を打ち上げることができます。本気で核兵器を造ろうとすれば、まず製造施設を設ける。地元の猛反対で至難であるにしても、それが完成すれば数年、もしくはそれ以上の年数で造れるというのが専門家の、まあ一致した見解でしょう。
日本にとって致命的な問題は、核実験場がない、造れないということではないか。失敗すれば取り返しのつかない悲惨な状況をもたらす核兵器は、机上のシミュレーションだけで済ますわけにはいかない。私はこの一点だけで、日本の核製造、所有は不可能と考えます。
日本の核開発の議論で、実験場の問題を指摘するメディアや野党、専門家は目につかない。「被爆国の日本は核開発をすることは言語道断だ」の類いの指摘は山ほどあります。それに対し、「実験場すら持てない日本にとって非現実的な話だ」という指摘はまず聞かない。
日米原子力協定も平和利用に限定
原子力の平和利用(非軍事的目的)に限定している日米原子力協定も立ちふさがる。「核燃料(濃縮ウラン)、原子力設備(資機材)、技術・情報の提供など米国に依存している」(Google AI)。協定に違反すれば、濃縮ウランの対米輸入ができなくなり、日本の原発は即時に止まり、極度のエネルギー危機が起きる。原発停止という致命的リスクが伴う。
この議論を進めようとすれば、日米原子力協定の修正、日本の原子力基本法(平和利用に限定)の改正・改悪が必要だし、核不拡散条約(日本は非核保有国として加盟)からの脱退が必要で、まず不可能でしょう。中国・北朝鮮など周辺国との軍拡競争をどう考えるのか。政権が倒れることは必至です。
小泉防衛相が「触れざるを得ない問題の一つは核戦力。あらゆる選択肢を排除しない」と、胸を張って発言できる問題では全くないと思う。
議論の落としどころが見える
落としどころとしてあり得るのは、「議論をすると見せかけて、中国、北朝鮮などの反応をうかがう。日本をそこまで追い込むな、とのシグナルにする」、「最後の落ちは米軍の核持ち込み(すでに日米密約が存在)の黙認を示唆」、「議論の進め方について、その目的、レベルを巡り米側との意思疎通を図っていく」などでしょうか。
進め方によっては政権が吹っ飛ぶことは間違いない。非核三原則の一部修正(米軍の核持ち込み)を曖昧な形で文章化するのが精一杯でしょうか。
なお、文章面とは別に、内容上は確認した方がよい点がいくつかあります。特に「ロシアにはセミパラチンスク」「プルトニウム6000発分」「濃縮ウランの対米輸入ができなくなれば日本の原発は即時に止まる」「核実験なしでは核兵器保有は不可能」という部分は、事実関係や表現の精度を確認した方が安全です。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年8月21日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。







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