転職で取り戻すものは、「やりたい仕事と自分の成長」

あなたは今、本当にやりたい仕事をしているか。

この問いに即座に「はい」と答えられる人がどれほどいるのか、正直に聞きたい。筆者の知人の中では、むしろ「やりたいことがあるのに、できていない」という悩みを抱えた人の方がはるかに多い。というか、まともな人ほどそれで悩んでいる気がする。

幸せな転職:迷わず進める「キャリア設計」の教科書』(中村浩一郎 著)きずな出版

入社時に希望した部署に配属されなかった。業務が増えて手一杯になった。やりがいを感じていた仕事が会社の事情でなくなってしまった。理由は人それぞれだが、その落差。その葛藤を感じながら日々を過ごしている人は多いはずだ。

実は先日、ある出版関係の後輩と飲んでいて彼が言った。「編集者志望だったのに、営業配置されちゃって」と。三年経つが、変わっていない。悶々とした顔で毎日を過ごしているのが分かる。

そういう人ほど、「これでいいか」と妥協してしまう傾向がある。

いまの会社でどうしても実現できないなら、転職という選択肢がある。転職とは、単なる職場の変更ではない。あなたのやりたいを実現するために、環境を選び直す手段なのだ。

——話は変わるが、転職できる人ってのは実は恵まれている。生活防衛本能が強い人、家族がいて抜けられない人、ローンがある人。そういう人たちは、やりたいことがあっても動けない。簡単に「環境を選び直せ」なんて言えるのは、余裕のある人間の戯言なのかもしれない。

とはいえ、である。成長という観点から考えると、どうしても避けられない問題がある。

新しい部署に配属されたとき、あなたはどのような心持ちだったか。何もわからず右往左往し、帰宅後にYouTubeで業務動画を漁ったり、先輩にLINEで聞きまくったり。そういう試行錯誤の中で、仕事ができるようになっていく喜びが、確かにあった。その過程を、忘れていないか。

やがて時間が経つ。同じ環境で同じ仕事をやり続けるうちに、かつての「できない」は「当たり前」へと変わる。朝、目覚まし時計を見て、「また同じ一日か」と思う。そういう感覚が始まる。気づけば、新しいチャレンジは消え、退屈さと不安が顔を出し始める。

もっと悪いことに、その状態が続くと――本当に何も感じなくなるのだ。感情が死ぬ。それが怖い。

人は本来、挑戦したい生き物だ。トップアスリートが海外のチームに移籍するように、あなたの中にも、自分のまだ見ぬ可能性を試したいという気持ちが眠っているはずだ。それは偽らない。

成長を理由に転職を考える場合、まず問うべきは「何を成長させたいのか」という話だ。

AIの技術や会計知識など、特定分野で活かせる「専門スキル」を伸ばしたい人もいれば、プロジェクト推進力や課題解決力といった「汎用的なスキル」を求める人もいる。あるいは、大学院入学や資格取得といったリスキリングが答えなのかもしれない。いずれにせよ、自分が何を成長させたいのか、その軸を持つ。これは重要だ。

そしてもう一つ、極めて大切なのが「環境にこだわる」という視点である。

人は環境に左右される生き物だ。向上心や貪欲さを持つ人たちに囲まれていれば、自然と成長できる。反対に、成長意欲の低い環境にいれば、一人で成長するのは並大抵ではない。知ってるか? これが実は決定的に重要なんだ。

いまの環境で退屈さを感じているなら、転職はあなたの挑戦心に再び火をつける手段になる。人生は一度きり。やりたいことがあるなら、それをいつから始めるのか。その問いに向き合わない限り、後悔は付きまとう。多分。

※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

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