プーチン大統領、ロシア国民に戦争の継続を訴える

ロシアのプーチン大統領は22日、首都モスクワのメガスポーツ・アリーナで開催されたクレムリン(ロシア大統領府)を支持する与党「統一ロシア」の党大会で演説し、ウクライナに対する侵略戦争を継続するよう国民に呼びかけ、「今、多くのことが我々の結束、ロシアの将兵の勇気、そして勝利に貢献するために各自が誠実に任務を遂行することにかかっている」と述べた。

ロシアの与党「統一ロシア」の党大会、モスクワで、2026年8月22日、クレムリン公式サイトから

議会選挙を1ヶ月後に控え、プーチン氏は「統一ロシア」を最も経験豊富で国内を主導する政治勢力だと称賛し、同党への支持を強調した。また、「統一ロシア」の党首、ドミトリー・メドベージェフ元副大統領は、すでに4年半に及ぶウクライナとの戦争においてロシアが勝利するという確信を表明した。国家安全保障会議の副議長も務めるメドベージェフ氏は、「ロシアはさらに多くの領土を奪還するだろう。我々の勇敢な軍がそれを繰り返し証明している」と語った。

9月18日から20日にかけて実施予定の下院(ドゥーマ)選挙について、多くのロシア国民から支持を集める反戦政党「ヤブロコ」(ロシア語でリンゴを意味)は、当初は参加が認められていたが、その後人気が高まったことを受けて出馬を阻まれた。ロシア最高裁判所は10日、9月の議会選挙へのヤブロコの参加を認めない決定を下した。同党のニコライ・リバコフ党首は、裁判所の決定を不服として異議を申し立てる方針を明らかにしている。国連人権高等弁務官事務所は12日、ロシアで最も歴史ある政党ヤブロコの選挙参加が認められなかったことについて「深い懸念」を表明した。

与党「統一ロシア」は、2003年以降のロシアのすべての議会選挙で勝利を収めてきた。同党はプーチン大統領の権力を支える基盤だ。現在、投票用紙に名を連ねているのは10党で、そのすべてがウクライナとの戦争を支持している。

プーチン氏にとって、今回の選挙は自身の政策に対する信任投票でもあり、対抗政党がない状況下で実施される選挙の結果は既に決まっている。注目されるのは投票率だ。プーチン氏は高い投票率を期待している。今回初めて、ロシアが併合したウクライナのルハンスク、ドネツク、ヘルソン、ザポリージャ各州のうち、ロシアの支配下にある地域の住民にも下院選挙での投票が呼びかけられている。

ちなみに、2024年3月に実施された大統領選挙の投票率は77.44%、ロシア大統領選では過去最高を記録.プーチン氏は87・28%で5選を果たした。2021年9月17日から19日に実施された下院選挙の投票率は51.72% だった。前回選挙時の47・88%を上回った。プーチン政権の与党「統一ロシア」が 49.82% の得票率 で、憲法改正の発議が可能となる下院の3分の2(324議席)を単独維持 した。いずれの選挙も、政権側による反対派の排除や徹底した動員、数字の操作があったとして、欧米諸国や独立系の選挙監視団体からは公平性に強い疑問が呈された。

ところで、ロシア国民がプーチン大統領の対ウクライナ戦争、戦時経済に満足しているわけではない。高インフレに悩む国民は4年半以上続くウクライナ戦争、それに関連する欧米諸国の経済製剤下で、戦争の早期停戦を願っていることは間違いない。

ウクライナ軍のドローン攻撃を受け、ロシア各地の石油精錬所が破壊され、ガソリン不足が既に表面化してきている。クレムリンはウクライナ戦争を「戦争」とは呼ばず、「特別軍事作戦」と呼んできたが、クレムリンのペスコフ報道官は7月5日、初めてこの紛争を「戦争」と公言している。戦争の被害がロシア国内でもはや隠蔽できないほど表面化していることの表れだ。

プーチン大統領は22日、ウクライナがロシア経済を標的とした大規模なドローン攻撃について初めて言及し、モスクワとして厳しい報復措置を講じると表明した。プーチン氏は国営テレビのインタビューで、「ウクライナがロシア経済を標的にしたことでパンドラの箱を開けてしまった。対抗措置はすぐに実行されるだろう。覚悟しておくことだ」と警告を発している。なお、ウクライナ軍が迎撃ミサイル不足に陥ていることを受け、ロシア軍はここにきて弾道ミサイルによる攻撃を強めている。

参考までに、ウィーン比較経済研究所(WIIW)のロシア経済の見通しを紹介する。
「2026年第1四半期の実質GDPは前年同期比0.2%減となり、3年ぶりのマイナス成長を記録した。その主な要因は、借入コストの高止まりや、輸入代替が事実上限界に達したことなどを背景とした、投資活動の14.3%減だ。年初4ヶ月間の製造業生産は0.3%増加したが、プラスの伸びを記録したのは6業種にとどまった(うち3業種は軍需生産が大きな割合を占める分野)。これは主に、ドローン生産の好調な動きが続いていることによるもの。対照的に、家計消費は比較的堅調に推移し、小売売上高は4.3%増加した」


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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