憧れ作品に会いに、夕暮れ「ルーヴル美術館」。夕暮れといっても16時半前でこの空色。ものすごい勢いで日がのびてる。月末にはもう夏時間。嬉しいな。
この時間はさすがにメインのピラミッド入口も列がない。

今日の目的は、ただただこの絵

3月スタート。日が延びたね
今日の目的は、シュリー翼の奥の奥。シュリーに入りガンガンあるいて2階に上り、ルノワールやモネをチラ見して、ラ・トゥールもすっ飛ばし、大好きなヴァトーも少し眺めただけで、ぐんぐん奥に。シャルダンの”エイ”のいとしの猫ちゃんに挨拶し、あたりをキョロキョロ眺めて、次の部屋でついに初対面。

ルーヴルも、印象派の良い作品がちょっとだけおいてある
ルノワールの壁。この二人の少女、このシリーズの中でも傑作だと思ってる

モネの雪景色、よいよね〜

イカサマ師、5秒だけみて先を急ぐ
なにしろ目的地は遠い

大好きヴァトーも駆け足
あぁでも、シテール島の巡礼を見ないわけにはいかない

ということで、ここで1分寄り道

次の間、”エイ”の中の猫ちゃんにもゆっくりご挨拶
すでにシャルダンの間の一つ目なので、気が大きくなる

絵画に描かれた猫、の中で、ボナールのぐ〜んと伸びをする白猫に続いて愛してる猫ちゃん。
この子もちょっとぐ〜んとしてるね。白猫ちゃんと意図は違うけど。
ジャン=シメオン・シャルダン、”いちごの籠”。
シャルダンの傑作。2012年に三菱一号館で披露された時、見たくて仕方なかった。その時からずっと個人蔵のこの作品が心にあった。
シャルダンの子孫に受け継がれていたのが、2年くらい前にパリのオークションに登場し、ものすごい話題に。
アメリカの画廊が競り落としたのだけれど、そこはアートを国力として大切にしているフランス。国から待ったがかかり、この作品を国宝に指定。国が買い上げるまで数年の猶予を獲得し、同時にフランス屈指の画家の傑作を国内にとどめよう!と、購入キャンペーンも大々的に実施。結局、LVMHがスポンサーになってくれ、作品はフランスに残りルーヴル美術館に入ることになった。やれやれよかった。アメリカに行っちゃったら、一生見られなかったかも…。
購入キャンペーン中はルーヴルに、購入後はしばらく、ルーヴルランスをはじめいろんな美術館で巡業し、去年のディオールのメンズコレクションのデフィレ会場にも飾らたりしていたけど、タイミングなく会えず。
そして今日、待ちに待った初対面。嬉しい〜

いよいよ初対面
おぉ!

おぉぉ!
主役のいちごとさくらんぼと桃の赤と、カーネーションの白のコントラストの美しさ。背景の壁が醸し出す見事な静寂と空気感。水とグラスの描き方の妙。素晴らしすぎる……。惚れ惚れみとれる。



この作品を初めてネットだか画集だかで見てタイトル知った時からずーっと疑問なのが、これはいちご(fraise)?
さくらんぼと桃の大きさと比べると、どう見ても森いちご(fraise des bois)。でも、森いちごだとすると、緑のヘタがちょこちょこ見えるのはなぜ?森いちごって、ヘタがついてることほとんどないよね。18世紀にはヘタつきのまま売るのが多かったのかな。というより、買ったものではなく、自分や家族が摘んだり、プレゼントなのかしら。
もう一つの疑問は、森いちごって、いちごよりもさらに繊細で潰れやすいのに、こんな山積みにする?作品に描かれてるのだけでも70粒くらい。ということは、全部で700粒くらいにはなるよね。下の方や内側、完全に潰れちゃうでしょう…。
森いちごは高価。当時は安かったのかしら?やっぱり自分で摘んだもの?この頃のシャルダンはもう名声あってお金もあっただろうから、森いちごも大人買いできた?
んー、やっぱりかなり小ぶりのいちごなのかなあ。
籠の外側にちょっとだけついてる赤色は、潰れたいちごの汁?カーネーションの手前にある赤は転がり落ちた森いちご?この円錐形に積み上げるの、なかなか大変だし、ぽろぽろこぼれ落ちちゃうのも多かっただろうなぁ。手前に赤は、そんなこぼれたいちごを見逃した?画家の目が見逃すはずないし、あえて、溢れた赤が白と絶妙のバランスと思ってそのまま残して描いた?



なんてことをつらつら考えながら、寄ったり引いたりためつすがめつ、長年憧れていた作品の前で、小一時間を過ごす。
ベンチないので、たまに横の部屋の憤慨する猫ちゃんの前にあるベンチで休憩。なんて幸せな時間…。
”エイ”に描かれた憤慨してやんのかポーズになってる猫ちゃんは、牡蠣を狙っているのか戦いを挑んでいるのか、牡蠣殻を踏んで痛くて憤慨してるのか、なんなのでしょうねぇ。大好きな愛おしい猫ちゃんは、シャルダンの飼い猫だったのかしら?シャルダンの専門家に聞きたい質問。
この作品が高く評価されてアカデミー入りし、その記念に、猫ちゃん(というか”エイ”)と似た構造でよりラグジュアリーな作品を描いたシャルダン。こちらには犬が描かれてるけど、もちろんお利口な犬はテーブルに乗らない。猫ちゃんはテーブルに乗って牡蠣を踏んづけてる。猫大好き。

悪い子な猫ちゃん

いい子な犬
17時45分になり、見学者の追い出しが始まる。最後にもう一度いちごの前に立つ。惜しむらくは、この作品を覆うガラスが汚れていること。正面からみると、皮脂みたいなのや水滴の痕が数ヶ所に。問題山積みルーヴル美術館。作品のメンテナンスにも手が回らないのかしらね。
今度来る時はピカピカのガラス越しでありますように。なんなら、猫ちゃん(エイ)みたいに、保護ガラスつけないで展示してほしい。

別れがたい……
出口に向かいながら、他のシャルダン、フラゴナールやアングル、ドラクロワたちもちらっと。

シャルダンは、静物画もよいけど風俗画もみごと

ルイ15世に献上した作品の一つ

サルの擬人化もシャルダンの得意分野

でもやっぱり、静物画、最高〜
左の巨大ブリオッシュ、みるたびに食べたくて仕方ない

フラゴナールもシャルダンの同時代

フラゴナールの”鍵”、バレエ好きにはお馴染み
キリアンはまさにこのポーズを振り付けに取り入れたね

こういうのみると、フラゴナールとシャルダンが同時代ってなんとなくわかる

ボンジュー、アングル

そしてドラクロワ
ドノン翼にある巨大作品群は最高だけど、私はこのルーヴルの奥の奥に飾られてるドラクロワの作品群もとても好き
自画像と友人だったショパンの肖像画が対になってるのもいい。平野啓一郎の「葬送」を読み直したくなる。



このドラクロワも、らしくなくて大好き

奥地から10分歩いてようやくピラミッドに戻る
あー素敵で気持ちよい時間だった
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々6」2026年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々6」をご覧ください。







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